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第112話:セイレル鉱山──激突その4

 

 17日目:セイレル鉱山



 斬りかかってきたリチャードの剣を、()()()()()()()()()()()


 一瞬の拮抗。


 更に押し込んできた剣を、脱力で往なし、反撃。

 防がれるも蹴りを追加。魔術もてんこ盛り。


 リチャードはすぐさま危険域から脱し、避けられる。


 良いじゃねぇの、イフ。


『はい。旦那様のお力で、イフは新たな力を得ることが出来ました。

 存分に振るってください』


 俺の持つスキル群を流し込まれたイフは、昇華した。

 見た方が早いだろう。



<畏怖齎ス殺業ノ紅刃(ナイフ)


 ランク:ハイエスト

 スキル:<痛撃膨激><人豚殺行><殺シノ形>new<精神白失><畏怖恫導>new



<畏怖恫導>は精神に干渉するスキル。

 畏怖させ恫喝する、今はあまり関係の無いスキルだ。


 今重要なのは<殺シノ形>の方だ。

 率直に言えば、イフの形状を変えられるというもの。


 今の練度では、元々の、自害しやすく首を落としやすい短剣の形状と。

 ある程度の長さを持つ中型の剣の形状に限られる。


 だが今欲しい形状には充分。


 ()()()()()()()()()()()()()()


 これで、リチャードから見取り奪った剣術が十全に働く。


<氣力活性>とエンチャントで、身体能力を更に跳ね上げる。


 さっきまでの防戦一方じゃない。



 ここからは、真っ向からの斬り合いだ!



 ──────────



 視点:アウト



 アニキがテンション上げ上げっスね。


 あんなにテンション高いの見るの珍しいっス。

 珍しいと言っても、実時間はそんなでもないんスけどね。


 ヤードのおっちゃんの頭上にヒヨコがくるくるしてたっス。

 これで、オイラ達も更にテンション上げ上げっス。


 というかアニキがあんなに大怪我してるの初めて見たっスよ。

 あれが想定内だと聞いてなかったら、暴走してたでしょうね。


 ……みんなが。


 オイラっスか? 大体アニキが考えてることは読めるんで、そんなでもないっス。


「ガッ! 貴様ゴブリンノ癖二!」


 おっと力が入りすぎたっスね。


「食ラエ!」


『殴って弾けグーパンチ!』


「何故呪ヲ殴レル!?」


 それがオイラのグーパンチっスから。


 前衛は防御に長けたキシさん、センシさん。

 ソウシさんが槍で牽制し、オイラとフォルトゥーナさんが遊撃。


 シレイさんは待機要員兼指揮。

 アナさんと一緒に、ランク差の有る相手の先をエル様と読んでいるっス。


 マホさんは魔術の効きが悪い相手なので、エンチャントと妨害に徹し。


『<癒しの解呪(ホーリー・ディスペル)>!』


 ホリィさんは呪術に対してと、回復要員っス。

 一番忙しいっスね。


 そして、オイラが一番リッチに対して相性が良いらしいっス。

 グーパンチにイメージを込めれば、浄化も出来るっス。


 魔術だって殴れば弾けるっス。

 敵としてならアニキの方が悪辣っスよ。


 こちらが危惧してた、<死霊魔術>による仲間呼びはない。


 これはアニキ、エル様と考えが一致したっスけど、リソース不足だと思われるっス。


 リチャードという戦力を、待機ではなく戦闘に用いた場合、枠を食い潰し、他の下っ端を呼べなくなる。


 そのリチャードでケリが付くと考えていたようっスけど、あのアニキがそんな簡単に殺られる筈ないし、そもそもアニキは殺られそうなら逃げるコマンドを使うっス。


 アニキの逃げ足、半端無いっスから。


『良いかアウト。一番重要なのは生き残ること。

 その中で、逃げ足は重要だ。

 恥も外聞も殴り殺せ、目的を達するためなら形振り構うな』


『オイラ達逃げていいんスか? 命令されてるんスけど』


『だめだよ?』


『ですよねー』


 まあオイラ達の役割の1つは捨て駒っスからね。

 アニキが単に捨て駒にすることはないと信じているし、確信までしてるっスけど。


「アア! 邪魔クサイ! 何故死ナヌ!

 何故<精神魔術>が効カナインダ!」


 あー、こいつオイラ達が人語を解せると思ってないんスかね?


 オイラ達に<精神魔術>はそうそう効かないっスよ。

 そもそも耐性有るし、紅血の間の方がきついっスから。

 SAN値がピンチになるっス。


 そして、オイラ達はエル様による保護が有るんで大抵の精神干渉は弾けるっス。


 だからこそ、警戒するのは呪術。


 大抵の呪術はホリィさんが治せるし、オイラは殴り飛ばせる。

 フォルトゥーナさんは、<幸運>による加護でそもそも効かないんス。


 そのフォルトゥーナさんなら、<ツェール>でチクチク不幸の付与。


 1発当たれば不幸値が蓄積し、回避や耐性が減少、当たりやすくなる。

 そして当たればさらに減っていく悪循環。


『キュー(あんまり効かない)』


 ランク6の相手はきついっスね。

 呪術を用いるだけあって、生半可な不幸では呪術で対抗されてしまうようなんス。


 決定力に欠けるっス。

 相手の手をある程度封殺出来ているからこその、均衡。


「エエイ! 好ミデハナイガ食ラウガイイ!

魔力弾(マジック・ショット)>!」


 無属性!

 使えるだろうとは思ってたんスけど、ここで使ってくるっスか。

 呪術と違って、攻撃性そのものが全面に出てるんで、パリィ出来ないんスよねぇ。



 !



 あれは、……イフさん?

 相手の呪術を解析して、<呪術>スキルを組み込み解放された<呪之真髄>。


 色々ぶちこんだんスかねー。


 アニキは、シリアスとコミカル、合わせてシリアルキャラなんで、あまり表には出てないんスけど。


 人間を嫌い、呪うその精神性は正しく異常。


 その質と量も、凄まじいものが有るっス。

 前世からの引き継ぎで、<精神耐性>が有ったのは伊達ではないんス。


 あれは、外界=人間世界に感じるストレスだけでなく。

 それを抑え込むストレスすらも呑み込んで居た。


 そうっスね。


 蛇嫌いな人が、蛇の身体で周り蛇しかいない世界で暮らすのを想像……しない方が良いっス。

 ぞわわっと来るっス。


 オイラが言いたいのは、アニキの精神はパないってことっスから。


 それであのリチャードというアンデッドを気に入ってるんでしょうねー。


 その剣の腕や才能をラーニングするだけでなく、相対せずとも感じる人間というものに対する憎悪を好んでいるようっス。


 人間ではないのも、ポイント高いんスかね?

 アニキの人間判定ラインは複雑すぎて分かんないんスけど。


 あっ、リッチはダメぽいっスね。俗物だし、人間くさいにも程があるっス。

 アニキの好みじゃないっスよあれ。



 さて、あっちも終わってしまいそう。

 最後まできっちり、オイラの仕事を全うするっスよ。


 身体がどれだけ呪いまみれになろうとも、殴れば治るんスから。









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