第104話:都市セイレルからの出撃──目的地セイレル鉱山
17日目:都市セイレル、冒険者ギルド前
昨日は暴走しつつ、対アンデッド用の装備や、使い捨てアイテムを作っていった。
もう生産のターンでは暴走して気絶するのがお約束になってしまうのだろうか?
ユニのサンドイッチ枕は気持ちいいけれど、別に気絶時限定という訳でもないからなぁ。
一夜明けて、しっかりと睡眠を取り、睡眠時トライアルをこなし、色々リフレッシュして。
ご飯を食べて、今ココ。
『今日のお天気はあまり良くないですね、レッド様』
『そうだな。出来れば晴れて欲しかったが』
アンデッドが太陽の光に弱い、そういうルールはきちんと有ります。
鉱山内部に現れるリッチ軍はともかく、鉱山迄の道でもレイスが出るらしい。
曇りでは、日光下ペナルティーは望めないな。
そういや雨降ってないな。
時折小雨が降ったり、夜間に降ることはあったけど、ガッツリな雨に遭遇してない。
<幸運>だろうか?
まぁ、地形効果:雨、は結構面倒だ。
俺のいる地点で降らないに越したことはないな。
「よぉ! 馬車持ってるって言ってたけど、良い馬車と馬じゃねぇか!
バトル・ホースの仲間か?
良い装備着けてるけど、旅に邪魔にならないか? これ」
ヤードが現れた!
どうする?
→観察する。
背中に、デカイハンマーを2つ挿している。
あれがメインの金槌か。
腰にはマトック? つるはし?
を着けている。これで鉱石を掘るのだろうか?
「おはようございます。
この子達の装備は、旅ようではなく、戦闘用です。
道中、戦闘が想定されますから」
「そうか。俺は準備出来てる。
レッド達はどうだ?
そっちのお嬢ちゃんも、戦えるのか?」
「準備は出来てますよ。
ユニもきちんと戦えます。単独でランク5を倒したことが有るくらいですから」
「ほう。そいつはすげぇな。
……そうだ。レッド、お前さんの口調、対外用だろ?
俺は気にしねぇから、普通に喋ってもいいぜ?」
「そうですか? なら。
改めて宜しく頼むよ、ヤード。
これを装備できるかな?」
口調を通常のものに変え、アクセサリーを渡す。
「……ほう。<呪詛耐性>と位置送信か。
ネックレスなら着ける余裕がある。
助かるぜ。アンデッド用の武器や防具は調達できたが、<呪詛耐性>はレアだからな。
レッドの装備も変えてるな。
あれが有ると便利だな。
今回鉱石採れたら、もって貰う余裕は有るか?
なければ、この馬車に載せようと思うんだが」
「ある程度なら大丈夫だ。
そろそろ出発しよう。馬車に乗ってくれ」
「あいよ……って、内装も凝ってるな。
シンプルだが良い作りだ。仕組みも、うーん、これは」
内部の機構を見て黙ってしまったおっさんをよそに、都市セイレルの、鉱山向けの門から出発する。
「これ作ったやつは凄いな!
馬車の勇者の知識も使われてるみたいだし、揺れもすくねぇ。
これも<錬金術>の当てって奴の品か?」
「ああそうだ。多才なようで、色々作っているんだ」
俺が、ね。
嘘ではない。
「そろそろ俺は上に上がる。ヤードはどうする?」
「上? 屋根に乗れるのか。
俺も行くぞ。遠距離攻撃は乏しいが、確認はしたい。
御者は嬢ちゃんに?」
「ああ。ユニに任せるよ、頼んだよ?」
『ライトとダークは頭が良いから、綱を軽く持つだけで良いからな』
「はい」『頑張ります!』
馬車内部から、屋根に上がれるはしごを取り付けているので、上がるのは簡単だ。
「うお!? つのうさぎ!?
レッドの従魔か!
ん? つのうさぎにしちゃ風格有るな。
上位種か」
「つのうさぎから育てている、自慢の子です。
それと」
空から、魔鳥編隊が降りてくる。
「属性鳥!?
なんで別種が固まって飛んでやがる!
……もしかしてあれもか?」
「良かった。ヤードの勘が良くて。
あの子達は、先行して空を見てもらってたんだ。
他にも、色々従魔は居るぞ」
「それがレッドの手札か。
テイマーってのは、打てる手が多いな。
そして本人も強いんじゃ、味方としては上々だ。
って、走るの速いのに、本当に揺れ少ないな。
馬たちの走り方も上手いんだな。
よく教え込めたものだ」
「それはあの子達が上手いからだよ。
! あれは」
「レイスだ!」
空中に、魔力反応。
生命反応がおかしい、というよりはこれが正常なのか?
死霊系統の反応はこうなるのか。
「ライト、ダーク」『<ライト・アロー>系だ。走りを重視で、牽制程度で良い』
「ヒン!」「ヒヒン!」
ツイン・ホース達から、光の矢が飛んでいく。
やっぱりライトの光矢の方が若干強いな。
そして<二体二心>スキルは凄いな。
ダークも光が使えるんだから。
「どう対応す……はぁ!? あの馬達魔術使えんのかよ!
しかも光か!」
「ヤード、ここは俺と馬たちで対処する。
まずは実力の片鱗程度だが、見ておいてくれ」
「おっ、おう。わかった。
一応構えておくぞ」
ヤードの2つ有るハンマーのうち、白い方のハンマーを手に取る。
<白の退散ハンマー>
対アンデッド用の武器か。
特攻が付く代わりに、純粋な攻撃力はそこそこのもの。
もう一方は。
<大地隆起せし豪炎鎚>
地・火属性の鎚。
メイン武器って所か。
ランクはハイエスト。
文字通り、心血注いで作り上げた逸品か。
自分で作ったのだから、よく手に馴染むだろうな。
後で実際に<鎚術>見て、スキル盗もう。
10体近く居るレイス。
どんどん距離が近付いてくる。
光の矢により、動きは鈍っているし、外れた矢も行動を制限している。
両の手のひらに、氣力を集中。更にイメージを込めていく。
加えて、周囲に張っている風魔術の防壁を一部変更。
レイスを見据え、放つは──
『<特殊武技>が1つ。
<ねこだまし>!』
パァァァンンンン!!!
『『『──────!!!!!』』』
レイス達は声にならぬ絶叫を上げて、消えさった。
レイスの居た場所に魔石が発生し、落ちていく。
のを、<念動力>でキャッチ。
「おお!? アンデッド退散か?
すげぇな」
いいえ、<ねこだまし>です。
「ふぅ。レイス相手ならこれで倒せるようだ。
これは消費も少ないし、レイスが来たらこれで行こうと思う」
<ねこだまし>
唐突に柏手を打つ。相手は魂消る。
これが<ねこだまし>の説明文だ。
そう、魂消る。
相手を魂消させることで、動きを止めるのが主目的なのだが、魂消るというこの漢字。
うん、文学的アプローチだ。
魂系の魔物、つまりはレイスのような魔物に対し、特攻のスキルなのだよ。
ネタ技なのに、めっちゃ使えるスキル技だ。
ちなみに、相手が猫系なら、高確率の行動阻害になる。
あと話術で騙せるようになる。
今回は、イメージを強く込めて対レイス用に。
風魔術で、音を集音させてより効果を高めてみた。
追加で来るレイス達にも、パンパン柏手を打って退散させる。
ちなみに、柏手には邪気を祓うという意味合いも有るんだよ?
加えて言えば、柏手はかしわで、だけど、これ誤用だよ?
みんな使ってるから、定着しちゃった漢字シリーズの1つだね。
独壇場と独擅場が有名な漢字シリーズだ。
レイス以外には、普通に野生の魔物が居たので、魔術と弓矢で撃退。
「俺の出番はねぇか。本当に手数が多いな。
まさかそのつのうさぎの角が飛んでいくとは思わなかったぜ」
ヤードはただ見ているだけで、およそ二時間ほど。
かなりの速度で進んでいった。
「見えたぞ。あれが鉱山前の施設だ。
今は閉鎖中だがな」
「なんか、イヤーな気を感じるな。
アンデッドの気配か?」
「ゾンビが居るからかもしれねぇな。
警戒していこうぜ」
「ああ」
実はアンデッドより人間の方が嫌な気がするのは内緒である。
誰が決めた訳ではないが、毎日投稿を続けていく。
ルールが有るわけでも、義務でもない。
ただ書きたいから書くのである。
そして毎日書き続けないと、それだけでモチベーションが切れてしまうこともある。
何が言いたいのか。
もし遅れたり止まったりしたらごめんなさいm(_ _)m
(3/10 IPPON面白すぎるわー。投稿危なかったぜ)




