ネオ・ワールド②
目を覚ますとそこはどこかの村だった。
これは夢・・・?ここはどこだ・・・?多分夢だ。
しかし夢にしては鮮明な光景、もうそのまま起きてる感じだ。
というかうん、起きてる。となるとまずは状況整理からだ。
俺は確かゲームセンターに来て、変なゲームに座ってお金を入れて・・・
その後が思い出せない。となると、それが何かこの状態と関わっているのだろう。
アニメやゲームではよくある展開。この世界を救ってくださいみたいなそういう感じなのだろうか
だとすれば俺は勇者的な何かなのかもしれない。
座る直前に見た少女も消えていたし、もしかしたらこのゲームに吸い込まれたのかもしれない。
その他のかもしれないが頭の中をたくさんよぎる。
こういう時はまず人を探してここがどこか聞くのが一番てっとり早いってもんだ。
俺は人を探した。お店っぽい建物があったのでまずはそこに駆け込む。
「いらっしゃいませ~。」
女性の店員がいた。安堵するとともにとりあえず俺は尋ねてみた。
「あの、ここってどこなんですか?例えば地名とか、国とか、」
店員は答える。
「ここはネオワールド、始まりの地リースです。というかお客様、何故そんな事を?」
そりゃ不思議だろう。自らこの地に入ってきたであろう人間がそんな事を聞く道理が見当たらないのだから。
それにここはどう見ても武器屋だ。ゲームの中の世界なんだろうし、魔物とか出るのかな。
というか奥にある甲冑と剣の豪華さが凄い。最終装備にしか見えないようなものが何故始まりの地に売っているのか、まぁゲームだと終盤でしか買えない額でそういう装備よくあるよな。
なんて思いつつ話を進める。
「いやぁ、わからないんですよ。自分がなんでここにいるのかすら。何か知ってそうな人物とか、心当たりあります?」
と聞いてみたがよくわかりません。と濁されてしまう。
そりゃそうだ。自分にだってわからないのだから。
物を買うお金もないしとりあえずお礼を言って店を後にする
結局ほとんど何もわかっちゃいないが何もわからないよりはマシだっただろう。
聞き込みをして、西に行けば王都があるのでそこに行けば何かわかるかもしれないとの事だったのでそこへ向かうことにしたのだが、お金も無い食料も水も無い、この状況では色々制限がありすぎる。
そんなこんなで一歩を踏み出せず、腹をすかせて困っていた時一人の少女が現れた。
「大丈夫ですか?」
少女は言う、この時の俺には彼女が女神に見えたであろう。
俺は事情を話し西にある王都へ行きたい旨を伝えた。すると
「それなら、私もこれから寄る予定だったので、ご一緒にどうでしょう。」
と。更に女神度が増して見えた。その少女の名前はキャロと言うらしい。
薄くピンクがかった長い髪に赤い眼で小柄の可愛らしい女の子だ。
ありがたく連れて行ってもらうことにした俺はキャロとともに王都行きの馬車へ乗り込む。
「本当に助かったよ。ありがとう。」
俺には感謝の言葉しか出なかった
「いえ、困ってるように見えました。困っている助けるのも騎士の務めですので。」
キャロは言う。この身なりで騎士だとは驚いた。鎧も着ていないし剣も持っていない為だろうか。
騎士には見えないななんて言ったら失礼だろうし言葉には出さないが。
「キャロは何のためにここに?」
単純な疑問だ。普通騎士様なら王都なりなんなりで警護やら訓練やら色々やることがあるだろう。
それがこんな始まりの地なんて場所にいるのかってことをだ。
「征服者が来てからという物、この世界は荒れつつあります。民も騎士団のものが装備状態で徘徊していると、何かあるのではと怖がってしまいます。今日は休日ですし、気分転換も兼ねて来ていたんです。」
征服者?なんだそいつは。魔王みたいなもんなのか。
やっぱり魔王的なその征服者とやらを倒す事がこのゲームのクリアの条件なのかと。
不安と同時にワクワクが芽生えたような感覚が生まれた。
「なぁキャロ...」
俺がキャロに話しかけようとした瞬間、馬車が揺れた。
「何事だ!?」
馬車のおっちゃんが慌てる。
俺とキャロは外を見回すと外には変な生き物の群れが。
「魔物です!下がってください!」
キャロは言う、やっぱり魔物的な何かがいた。
ちなみに現実の俺には戦闘能力なんてものはほぼほぼない。
喧嘩なんてものとは無縁だったし、格闘技だってやってない。
恐怖しかなかった。キャロは騎士だって言ってたから、ここはキャロに任せたいところだ。
キャロは馬車から飛び降り魔物をひきつける。
しかしこの数は異常だ。素手の女の子一人で勝てるようには思えなかった。
現実に丸腰のキャロでは対処できる術は無く、見ていられない状況になりそうな予感がした
しかし
「よし、あのお嬢ちゃんが囮になっているうちに逃げるぞ!」
おっちゃんが言う。これで無事に王都まで行ける。なんて思う事も出来たがそうはいかなかった。
だけど、色々助けてもらっといてここで見捨てたら人間じゃないだろうが。
俺は馬車から飛び降りた。
「し、知らねぇからな!!!」
とおっちゃんは言い、馬車は行ってしまった。ここには丸腰の俺とキャロ、そして魔物の群れ。
このゲームの世界に飛ばされてきたってことはきっと俺には何かしら力があるはずだ。それを信じて戦う。
それしか今は出来ない。
キャロも応戦して、魔物を倒してはいるが数が多すぎる。このままではもたないだろう。
覚悟は決めた。
「だあああああああああああ!!!」
俺は魔物に蹴りかかる。
しかしその一撃は無残にも弾かれ、攻撃をもらってしまう。
「痛てぇぇぇ・・・痛てぇよぉ・・・」
打撲した時とかに急に息苦しくなって喉が渇くアレだ。苦しい。
なんだこれ、もうここで俺は死ぬのかよ。コンティニューとかあんのかな・・・
無かったらどうなるんだろ・・・
そんな事を考えている間にも魔物は襲い来る、見かねたキャロが俺を庇いにこちらへやって来る
魔物の攻撃は俺を庇ったキャロに命中した。キャロは耐えてはいるが長く持つかもわからない。
やばい・・・終わりだ・・・苦しい・・・水・・・水をくれ
そんな事を思った瞬間だった。
突然俺の前に見慣れたペットボトルの水が現れた。
深くは考えず、そのまま水を一気に飲んだ。
キャロが魔物の攻撃を交わしこちらへ来る。
「ごめんなさい・・・私のせいであなたまで巻き込んでしまった・・・あなただけでも逃げて・・・」
負傷したキャロは言う。
「そ、そんなこと出来る訳無いだろ・・・」
と言ったはいいが俺の声は震えていた。目の前にある光景。状況。全てが絶望を示していたからだ。
「とりあえずこれ飲んで、少しは体力も回復すると思うから」
俺はペットボトルの水をキャロに差し出しキャロは受け取りそれを飲んだ。
「ありがとう、生き返えりました・・・ところでこの水はどこから?」
キャロ出会ってから馬車に乗っている最中も俺は水なんて持っていなかった。
そもそもこの世界でペットボトルなんて物は存在していないはず。
そうだ、この水、急に俺の目の前に現れたんだ。
俺が苦しくて水が欲しいと願ったら現れた。
欲しいと願ったら現れた。
これは偶然か否か。
試してみる価値はある。
「なぁ、キャロ、この魔物達、騎士の装備があれば倒せるか?」
俺はキャロに問う。
「ええ、この程度の魔物なら。」
キャロは答え、俺は叫ぶ、
「「一番いい剣と甲冑を頼む!」」
目の前に町の武器屋で見た、凄そうな剣と甲冑が現れた。
「!?!?」
キャロは驚く。俺も驚く。
俺は賭けに勝った。俺の能力は欲しいと思ったものを召喚出来る能力なんだ。多分。
「キャロ、頼んだ!」
俺は咄嗟にキャロに剣を渡す。甲冑を着ているような時間は無いだろうし剣だけを渡した。
「任せてくれ!」
キャロは勇み、先ほどまでとは別の表情を見せる。
その姿はまさに無双、先ほどまであれほど手こずっていた魔物達を切り倒していく。
その様子を見た魔物達は数が減り、戦況が不利になったことを理解したのか去っていく。
「助かった・・・」
俺は極度の安心感と疲れからか気を失ってしまった。