一文一答 あなたの悩みをバサッと解決大作戦 <7>
『一文一答 あなたの悩みをバサッと解決大作戦』第七弾です。
本日も校内中庭に設置している質問投稿ボックスに一通の手紙が入っていた。茶封筒にきっちりと糊付けした上にセロハンテープで留められている。
私はその封を開けて中身に目を通す。
『はじめまして、坂本雄一と申します。高校一年です。
この箱に手紙を入れると前向きな返事がもらえるという噂を聞きつけましたので投函させていただきました。
僕はいつもネガティブに物事を考えてしまい、ちょっとの失敗ですごく落ち込んでしまいます。今では失敗を恐れてあまり積極的に何かをやろうという気にもなれず、クラスでも一人で静かに読書に勤しんでいる始末です。変わりたいと思うのですが、失敗することを考えるとどうしても足を踏み出せません。
どうしたらこんな僕が前向きに、ポジティブになれるのでしょうか。
返事は一年三組、学級文庫『アメニモマケズ』に挟んで置いてもらえたら幸いです。よろしくお願いいたします』
達筆で、言葉遣いも丁寧であった。非常に読みやすい。
私はポケットに入れている無地のメモ帳を取り出して、返事を書く。
「ネガティブ思考でポジティブに。
物事をすべて消極的に考えます。つまり、最悪な事態を想定しましょう。そうすれば、少しの失敗はその想定よりも遥かに良い結果と思えると思います。でも、その想定をあまり下げ過ぎるのもよくありません。あくまで、三割ほどの確率で起こりうる最悪な事態を想定してください。そうすれば、どんな些細なミスでも、少し大きな失敗でも、鼻で笑って流せると思います。
実際、私もそうした思考をしており、毎日失敗の繰り返しですが笑顔の絶えない日々を送れております」
私は書いた手紙を一年三組の学級文庫に挟んだ。
翌日、窓際で一人の少年が本に挟まっている小さな紙切れを見て、笑みを浮かべていたそうです。
シリーズ化しているので、良ければ他の作品もどうぞ。