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北方の魔王  作者: 冬空さんぽ
第一章 βテスト
8/20

第七話 王軍召還

 カルデラダンジョンはその名の通りセントラルタウン北北西にあるカルデラの中にあるダンジョンだ。

 飛龍や地龍などのドラゴンを中心に様々な魔物の巣窟となっており歴戦のβテスターも未だにこのダンジョンが何階層まであるのかすら調査出来ていない。


 今現在発見されている北部のダンジョンの中では恐らく最難関だと言われており特に取り巻きを従え階層内を徘徊するパープルチェーンドラゴンに出会った場合は10人規模のパーティーですら全滅したという報告が相次いでいる。

 現在攻略サイトやwiki等では二階層以下の情報は全く出ていない、というのも二階層のボスがギミックを解いてなお理不尽な強さである為踏破するのが実質不可能に近いためだ。


 そんな難関ダンジョン、誰も踏破出来ず無人の未開地を俺は進む。

 隠密スキルを使い音も姿も気配すらも消し六層を徘徊する。まだ誰も手を付けれないこのダンジョンの恩恵を全て貪る為に。


 このゲームの売りは多彩なユニークスキルとユニーク武器だ、ユニークジョブなんていう変り種もあったりする。俺が就いているジョブもそんなジョブの中のひとつだ。

 そしてそういったレア物を手に入れる一番手っ取り早い方法の一つが未開地の探索だ。

 誰も入った事の無いダンジョン、誰も倒した事の無いボス、誰も成し遂げた事が無いクエスト。

 そういった未知に挑み冒険に勝った者にこの世界は恩恵を与えてくれる。

 ある意味シンプルでそれでいてちょっと理不尽なゲーム、それが俺が今感じているこのゲームに対しての評価だ。一度出遅れれば未開へ挑む力とタイミングを失い強さを得る機会を逸してしまうのだ。


 第六層も粗方荒らし終え見慣れた大扉の前に立つ。

 六層は俺の隠密を易々と看破する大型龍種が居なかったのでかなり安全な探索になった。

 問題はここからだ・・・・・・斧を握り直し呼吸を整え扉に手をかける。

 やはり何度体験しても未知のボスとの邂逅は緊張するけど変に慣れて油断するよりは何倍もマシだ。

 意を決し扉を勢い良く開け放つと腕を組みこちらを見据える二組の石龍と目が合う。

 その鱗ひとつひとつが重盾のような巨大さで高さだけでも3mを越える立派な巨龍だ。

 目は白く濁りパープルチェーンドラゴン程度なら一噛みで絶命させられそうな凶悪な牙と爪を供えている。

 

 そのまま巨龍を眺めてしまいそうになるが部屋に完全に足を踏み入れる前に室内の床へ壁面そして天井を見回す。これはカルデラダンジョンのボスはボス部屋のギミックを作動させた後に倒す趣向の部屋が続いていた為だ。

 しばらく部屋を眺め続けたが成果は得られない、室内に仕掛けらしきものは存在しない。

 あるのは静寂だけだ。

 

 「二匹の石龍か・・・・・・同時に倒すか片方を倒した後にギミックが露見するパターンかな」


 別に誰に語るでもなくそう呟く。

 元々面倒は嫌いな性質だ、ギミックが無いに越した事は無いしあったらあったで見抜き解き明かせば良い。

 どちらにせよこれ以上この部屋を眺めていても得られる物は何も無い、そう判断し室内に思いっきり踏み込む。


 俺が部屋に入り込んだ瞬間二匹の石龍の咆哮が室内に響き大扉が退路を塞ぐ。

 まずは数的不利を解決するか、そう考え最適な人数と最適な編成を思い浮かべながらいつもの魔法を使う。

 

 「王軍召還」

 

 左手を天にかざし短く念じる。

 すると俺の後ろの空間が歪み俺の召還に応じた軍勢が姿を現す。

 分厚い重鎧と大盾に飾り気の無い鈍く光る槍を携えた鎧騎士三名にくすんだ朱色のローブを身に纏い呪術用の短剣を握り締めた魔導師二名、そしてこの小隊を束ねる黒い鎧に不気味な緑色の鎌を持った大男だ。

 いずれも首から上が無い、何故なら考える頭も口答えする口も不要だからだ。

 与えられた命令のみを成し遂げる六体の人形に命令を下す。


 「左の奴を殺せ」


 それ以上の言葉は不要、何の疑問を感じる事も無く首無し兵は左手の石龍に向かっていく。

 数的問題は解決したので後は右の石龍を狩るだけだ。大斧を握り締めなおし俺も石龍へ向かう。


 石龍の濁った目が見開かれた瞬間軽い衝撃が身体を襲う、自分のステータスを瞬時に確認するとこちらのステータスを一時的に下げる俗に言うデバフと呼ばれる症状だ。

 厄介な状態異常ではあるが致命的ではない、気にせず斧を肩に乗せ風を斬り一気に距離を詰める。

 このゲームを始めた初日には有り得なかった超人的な加速だ、もはや瞬間移動に近い。

 AGI特化型の盗賊でもまだこの早さについて来られるプレイヤーは数少ないだろうという速度で石龍に詰め寄りすれ違いざまにその左足を切り裂く。

 石龍はその鈍重な見た目の通り全く俺の動きに対応も出来ずに一方的に切り裂かれていく。

 その生半可な剣では太刀打ち出来ないであろう硬質な翼、全てを切り裂き握り潰す豪腕、あらゆる包囲網もなぎ払い打ち破れる尾、そして首を全て断ち切られ崩れ落ちていった。


 圧倒的な実力差で石龍を八つ裂きにした俺だがもう一匹の石龍を見て軽く舌打ちをする。


 「また負けたか」


 俺が召還した兵達は俺が石龍を倒すより早く石龍を瞬殺していたようだ。

 彼らは何も語らないし俺の命令に絶対服従してくれるのだが何となく勝ち誇ってる気がするのが気になるしいらっとした。


 「ちゃんと仕事した部下に怒るのは理不尽だしおかしいよな・・・」

 

 言葉に出し自分に言い聞かせた後帰還の命を下し彼らを帰らせる。

 彼らは無い首を下げる代わりに身体を折ってこちらに挨拶をした後召喚した時と同じ様に闇へと消えていった。


 配下を見送った後にそう言えばあの二体は何のドロップも落とさなかった事に今更ながら気付き一瞬鋭く視線を辺りに巡らせた。もしかしてまだボス戦は終わってないのではないかと警戒したのだ。


 しかしそんな俺の気の張りようを嘲笑うかのように、ワンテンポ遅れて下り階段の一歩手前の位置に大きな宝箱が現れた。

 

 俺は未だに少し警戒しつつも宝箱に近付く、そして宝箱にトラップがないか探ろうとした瞬間。


 「ボスの撃破報酬をこちらから三つお選びください」


 案内の音声が突然流れる。

 不意を突かれた俺はひっと短い悲鳴を上げながら飛び上がる。

 今までダンジョン内でこのようなアナウンスは一度も無かったしこれから宝箱にトラップが無いか慎重に調べようと集中していた所だったのだ。俺は悪くない。


 「報酬を選択できるタイプの宝箱か、このゲームにしては珍しいな」


 他のゲームだとそんなに珍しく無い方式だ、パーティーのメンバーと相談してそれぞれ希望のアイテムを取る為にたまに揉めたりもするが中々楽しいシステムだと思う。

 それにしても三つか・・・・・・中々太っ腹だけど一体どんな中身かな?


 個人的には大斧とか片手斧が欲しいなあとぼんやり考えながら俺は宝箱の中身の吟味を開始する。

 

 

 

 

 

 

読んで頂きありがとうございます!

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