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北方の魔王  作者: 冬空さんぽ
第二章 昏き深緑の迷宮編
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第四話 ワールドクエスト

「あなたは冒険者ですか?もしよろしければ私の話を聞いていただけないでしょうか?」


 銀髪少女の頭の上に電球マークが浮かびクエストの開始を告げる。

 今ならまだ放棄して逃げる事も可能だ、しかしその愁いを帯びた瞳に見つめられた瞬間ここから逃げ出す事は躊躇われた。


 ━━美しい少女に頼み事をされたら見事に解決するのが当然だろう。


 俺は意を決し彼女に「YES」と返答する。

 すると周囲の景色が瞬く間に変貌し俺の身長は縮んでいく。

 何が起こったかまるで分からない、気がつけば世界はセピア色に包まれ砦の血痕は払拭され崩れていた壁は修繕されていた。


「お兄様、本当に出陣なさるのですか?」


 目の前の少女も先程見た時より背が縮みどこか幼さが増している気がする。

 そこでアンブラは察した、これは過去の光景で銀髪少女の兄の視点で物語を見ているのだ。

 彼女の兄は渋い声色ながら告げる。


「もはや獣人の進行は留まる事を知らぬ、ここで打って出ねば結界を張る猶予すらないだろう」


「・・・・・・人間の為にそこまでする必要があるのですか?お兄様が死んでしまったら私は・・・・・・」


「軍神の娘として生まれたにも拘らず戦地に赴く兄を見て泣くとは何事か!!お前も神の一柱なら自覚を持て!!」


「・・・・・・」


 愚妹に厳しい叱責をした後部屋を出る。不思議な事に彼の感情が俺に伝わってくる。


 (少し言い過ぎてしまっただろうか・・・・・・?だがしかし俺が彼女に何かを伝える機会はもう一生訪れないだろう。アレで良かったのだ。)


 彼はどうやら今回の出陣で死ぬつもりのようだ。並々ならぬ決意と相手に対する憎悪を肌で感じる。

 これはきっとかつて行われた人間と魔物の戦の最終局面、人間が神から贈られた神器によって結界を貼り終わるまでの決死行を描いた物語なのだろう。

 人間と魔物の両陣営に神々も分かれ争ったとされるこの戦争で、彼は人間側についた一柱なのだろう。


 場面は急に変わり既に戦闘が始まっている。

 降りしきる矢の雨と大型魔法による雷霆の矢が戦場を洗い両陣営に多大な被害をもたらしていた。

 槍を突き刺されようが怯まず剣を突き出す人間の戦士達、彼らはもうこれ以上引けないのだ。

 すぐ後ろには守るべき家族と友人達が逃げ延びた小さな世界、せめてそこを守る結界が貼られ切るまでは命を賭してでもこの蛮族共を引き止めねばならない。


「この畜生共が!!俺達の呪いを食らえ!!」


 戦士達の後方の魔力が膨れ上がり魔物達の上空に真っ赤な魔法陣が浮かび上がり、次の瞬間目も眩む様な閃光と共に莫大な熱量が彼らを襲った。大地はすり鉢状に抉れ骨すらも燃え尽きた。


 憎悪が憎悪を呼び血で血を洗う争いが続く。

 銀髪少女の兄は単身敵陣を突破し魔物達の軍勢の裏手から回り込むように右翼を殲滅していく。

 その手に握られた直剣は一薙ぎで十の魔物を八つ裂きにし四方八方から振るわれる凶刃を羽虫でも跳ね除けるかのような動作で弾き飛ばす。

 

 しかしその奮闘も永久には続かなかった、まずは敵の猛攻に馬がやられ足を断たれた。

 次に無数の矢が射られほとんどを弾き落とすも毒矢が何本も防御の網から抜けその身に突き刺さる。

 そして最後に巨人に叩き伏せられ地面に横たわった。


 しかし彼に後悔は無かった。

 敗戦というのが心残りだが戦神としての本分を全うした末に戦場で死ねるのだ。

 これ以上無い死に様だと・・・・・・そう彼はこの時まで考えていた・・・・・・。


 彼はとある一室で目を覚ます、薄暗く気持ち悪い雰囲気の部屋だ。

 立ち上がり辺りを見回そうとしたが両手両足を拘束されている事に気付く。

 どういう事だと混乱していると奥の扉から一人の女性が現れる。


「お前は・・・・・・」


 艶やかな肉体美を全く隠そうとしない美人・・・・・・いや美神がそこにいた。

 黄金色の薄い毛で覆われた狐の獣神だ。

 

「何をするんだやめろ!!」


「ふふっ・・・・・・可愛らしいな・・・・・・これは楽しめそうね・・・・・・」


 獣神の手が俺の腰に伸びてきた、俺は必死で跳ね除けようとするが戒めがきつく思う様に動けない。

 狐はだらしなく口角を上げ頬を赤く染める。

 俺はこの後狐神にどのように蹂躙されるかを想像し恐ろしい寒気に襲われた。

 軍神としての矜持を踏み躙りこのような辱めを与える女を強く睨みつけるが抵抗も空しく・・・・・・。


 ここに来て再び場面は戻り、目の前には悲しげな銀髪少女がこちらを見つめている。


「戻られましたか?今見ていただいた光景は私の兄フォボスの━━」


「 も ど し て 」


「え?」


「いや、何でもない・・・・・・」


 つい戻してとか言ってしまった、でもしょうがないじゃないか!あんな気になる所で止められたら誰だって続きが気になる。男として。

 心なしか銀髪少女が醒めた目でこちらを見つめている気がしたがこのままでは埒が明かないと判断したのか話を続ける。


「こほん・・・・・・先程の幻影は私の兄フォボスが憎たらしい仙狐に誘拐された場面ですね、この地で行われた血戦の後どさくさに紛れて迷宮の奥深くに連れ込んだようです。当然私はこの事態が発覚してすぐあの女狐を八つ裂きにする為あらゆる神具を持ち込み乗り込んだのですが戦神の娘でありながら戦神としての力を持たない私では太刀打ち出来ずこうして力ある者をずっと待っていたのです、どうか我が兄を救ってはいただけないでしょうか?」


 答えは既に決まっていた。


「はい、是非協力させてください」


 間を置かず了承のテンプレートで返しクエストが更新される。


 クエスト名【ワールドクエスト:北方】

 詳細:仙狐に誘拐された軍神の息子フォボスの捜索

 クリア条件:軍神の息子フォボスの奪還

       ???

       ???

       ???

 EXクリア条件:???

        ???

        ???

        ???

 クリア報酬:達成したクリア条件に拠る


 ※注意※このクエストは【ワールド・クエスト】です、来年某日のワールドリセットまでの一年間限定のクエストとなります。新たなワールドが生成された場合このクエストは破棄されます。


 ん・・・・・・?クエストの更新内容の至る所に突っ込み所があるが一番の問題は『新たなワールドが生成された場合このクエストは破棄されます』の部分だ。

 この世界は一年経ったら破棄される?どういう事だ?

 これについては運営に問い合わせる事にしよう、添付する画像用にスクリーンショットを撮影する。


 突然俺の手に柔らかいものが触れ慌ててクエスト欄から目を離すと少女が俺の手を握り締めていた。

 手甲の上からでも分かるほど熱く強く握り締められている。


「どうか・・・・・・どうかよろしくお願いします。私にお手伝いできる事なら何でもお手伝いさせていただきますので必ずや兄を・・・・・・」


 蒼く潤んだ瞳で強く見つめられ先程までのすこし不真面目な対応を改める。

 この少女にとってはこの世界が全てで兄の救済は人生を賭してでもやり遂げなければいけない課題なのだろう。


「当然です、どんな理不尽な困難でもあなたの為ならあっと言う間に解決してみせましょう」

 

「ありがとうございます・・・・・・あっそうだ。話に夢中で申し遅れました私の名はハルモニアと申します、いつでもここに居りますので何らかの助けが必要な時はここにいらっしゃってください」 


 力無く微笑んだ彼女の顔を見てると何故か心が締め付けられ胸がどきどきする。

 これはただのゲームで彼女はただのNPCなのに・・・・・・。


 俺は彼女から逃げるように部屋を後にした。

 クエストマーカーによる指示のまま俺は彼女の兄が待つと思われる迷宮へ足を向ける。 


構想では上手く行っていたんですがいざ書き始めた後に「あれ?これってR-18に引っかかるのでは?」と思って調べたらどうやらアウトのようで・・・・・・。


慌てて修正した結果ただのちょいエロなだけになってしまいましたがこの後上手く帳尻を合わせていければと思います。


最後まで読んで頂きありがとうございました!

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