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徒然、気儘に

1、ひととき

作者: 桜月雪兎

1、ひととき


歩き続けた足を止め、暫しの小休憩。

親しい者と二人、ここまで来たが今は私一人。

私はこんな時間が嫌いではない。

なにもしなくて良い日は貴重だがそれは本当に少ない。

人との付き合いは必要なのだろう。

それでも人は時に一人になりたがる。

だが、独りになることを恐れる。

そう思うと人は何て面倒臭い生き物だろう。

だが、恐れがあるから怒り、悲しみを知るから人は優しくなれると聞いた。

本当かは分からないが確かなことはある。

親しいものは気付いてくれるから独りにしてくれない。

一人にもしてくれないのだが。


「何をしてるんだ?」

「何も」

「また、難しいことを考えてたな」

「…………」

「考えすぎなんだよ、お前は」

「お前は考え無しだ」

「そんなことないさ、お前が思う以上にこの世界はシンプルだぞ」

「そんなわけ……」


私たちの間を風が吹き抜けた。

親しく知っているはずの目の前の人物が違って見えた。

光が反射した、髪をかきあげた、ただそれだけの事だ。

それだけの事にこんなにも動揺するのは何故だ。

もしかしたらこの者の言うように世界は、人の気持ちは単純なのかもしれない。

そう思うと悔しくなった。

私より物知顔をしている親しい者。


「さぁ、行こう」

「ああ」


悔しいが私の知らない世界を知っている。

知らないことを知るのは楽しい。

今は何も言わずこの者と歩もう。

私の知らない世界を教えてくれる、今はそれだけで良い。

あの動揺も悔しさも隠したまま。


そういえば、あの暗い想いがいつの間にか消えていた。

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