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二十一話

イケメンは呆けた顔をしてもイケメンなのだなぁ、と思った。社長のこんな顔をただの平社員である自分が見る日が来るとも思わなかった。明らかにこれは知ってはいけない事案なのだろう、どんどん一樹の顔が不機嫌そのものになっていく。だがそんなことはまるで気にする事なく、道庭は怒りを露わにする。


「ふざけんなよ、何でこんなことになってるわけ?兄貴たちが任せろって言うからちょっかい出すだけにしてたんだけど。近いうちにこうなるって、ちゃんと俺警告しただろ?」

「一也、俺たちにもすぐに出来ることと出来ないことがあるってのは理解できるだろ?ていうか和也はさっきから俺も探してんだよ、見てないのか?」

「はあ?前にゴタゴタしたときに切らずにおいて良くそんな事言えるよなぁ?次にこうなったときにどうするかぐらい、決めてあったんだろ?」


二人が言い合いをしている間に鈴はソファから体を起こすと、所為無く隅の方へ移動した。その間にも繰り広げられた言い合いが一旦途切れる。お互いに睨み合うが、どうにも一樹の方が部が悪そうであった。少し考えるようにして鈴を見やる。いつもフランクな雰囲気をまとっている一樹からは考えられないぐらいに苛立ちを隠すことなく出していた。足は規則的にタンタンと床を叩いている。


「知らんとは思うが日和、和也見なかったか?」

「いえ、見てないです。今朝は社長に会っただけです」

「・・俺に?いつだ?」


朝イチで会っているはずの一樹は怪訝な顔をしている。鈴もキョトンとしていると、何かに気づいたのか頭を掻きむしって力任せにソファに座った。ギシリと音をたてるものの、柔らかそうなクッションがそれを受け止めた。怒りを抑えるように「ハァー」と大きなため息をついてからすぐにケータイを取り出してどこかへ連絡をする。


「おう俺だ、ああ、あの件についてだが」


すぐに電話を終えると鈴に向き直る。困ったような顔をしながらも、先程よりは苛立っていないようであった。


「日和が朝会ったのは俺じゃない、和也だ」

「え?いや、でも和也さんって感じはしなかったです、けど」

「まあ、俺たちにも事情があるんでね。詳しいことは言えないが、あいつはたまに俺と入れ替わるときがある」


突然の一樹の言葉に目玉が飛んで行った気がした。ただ心のどこかで、何かがカチリとはまった音もしていた。


「あいつは見ての通り外交が下手だからな。俺がそっち、あいつは内務で、たまに入れ替わって全体の様子をお互いが把握してた。その方が上手く立ちまわれるからな。日和も俺と何回か外で会っただろう?訝しんでたけどな」

「・・はい、やっぱり社長だったんですね」

「でも普通は入れ替わるなんて発想は誰もしない。だから都合がよかったんだ、今までは、な」


そこで再びため息をつく。鈴の隣に道庭が寄って、足を組んで腕を大きく広げて座る。とても傲慢な恰好にしか見えないが、妙にしっくりくる部分はあった。いつだったか、どこかで見たことのある顔だと思ったわけだ。兄弟ならば似ていて当然だ。


「和也兄と鈴って付き合ってんだろ?」

「なっ、えっ、あ、はいっ、そうです・・」

「俺たちは別にそれを邪魔しようとか、そういうのは全然思ってないんだよね。むしろあの女っ気のなさすぎる兄貴にようやく!ってめっちゃ家中で喜んでたわけなんだけど」


あ、家中ってことはご両親も知ってるわけですか、ハハハ。などという心の声がそのまま口に出せるような空気でなくて良かったと思った。二人が真剣な顔をしている中で顔を赤くしてしまうことだけは許してほしい。


「そりゃもうすげー言ってくるんだわ、入社した時から日和さん日和さん。付き合い始めたら鈴ちゃん鈴ちゃん・・もううるせーの。だから強引かなーって思ったけど、ちょいちょい会いに行ってたわけ」

「あぁ、なるほど・・だからお人よしって言葉になるわけなのね」

「そそ。普通疑うだろ?鈴ってば無防備すぎてすっげーイジリ甲斐あったわー。とにかく鈴には重すぎるかもしれねーけど、和也兄は心配で仕方なかったんだよ。で、いじめだろ?もう居ても経っても居られなくなっちゃったんだよねー」


鈴はガツンと頭を殴られた気がした。ああ、経営者の一員ということは、知っていて当然なんだ、と。内部でよく働いていたということは、噂の1つや2つ耳に入っていてもおかしくないはずだ。それなのに和也は、知っていて知らないふりをしていた。鈴が言い出すのを待っていたのだ。

それはショックだった。心の内側を抉られているような気分だ。


「・・いちおーフォローしとくと、それとなく改善するように手は入れてたんだけどね。全部神木が握りつぶしてくれたおかげで、逆にすっげーややこしいことになっちゃったけど。それでも事務室には信頼できる奴らがいるから」

「そう、ですか・・」


力なく肩を落とす鈴に、一樹は更に追い打ちをかける。


「日和には悪いけど、お前は付き合った相手が悪かったんだよ。和也と付き合ってなけりゃまだマシだったかもしれねーのに」

「それは・・どういうことですか?」


顔を上げると、追い打ちのような発言をしながらも悲しそうな顔をした一樹がいた。詳しく聞こうとしたその時、ドアが開く音と共に応接室に人影が現れた。


「和也兄、昨日俺が警告したの、忘れたわけ?」

「いや・・それは・・」

「落ち着け一也、とりあえず座れ二人とも」


鈴、一也が同じソファへ。和也、一樹が同じソファへ腰を下ろす。和也の顔は青白く、目が少し充血しているようだった。鈴と目を合わせようとせずに少し俯き加減でいる。


「結果から言うと、和也は経営者失格ってことだな。なぜ俺が言ったことを考えなかったんだ、お前」

「・・すまなかった」

「すまなかったじゃすまねぇから、俺と鈴がここにいるんだろ?!ふざけんなよ、謝られても許せるわけがねぇじゃん」

「本当に、軽率だった、と思う」


あまりに覇気のない声を聴いて一也は舌打ちをした。一樹はじっと和也を見据えて「何があったのか、話せ」と促した。一瞬鈴の顔を見るが、心配そうに見られていることに気付くとすぐに目を逸らす。それからポツリポツリと話し始めた。


「神木さんは・・一樹に、特別な感情を持っている、って知ってた。だから、そこを突けば或いは・・少しでも手を引いてほしかっただけなんだ」




1か月前のことだ。どうにか本格的なものに発展する前に抑止出来ないか考えた末に、和也は単独で行動することを決める。この計画を一樹に相談すれば、即刻却下されるに決まっているからだ。自分の仕事を切り上げて駅で待っていると、二人がやってくる。鈴と別れたのを確認してから、神木へ声をかけた。


「やあ、こんな遅くまで仕事お疲れ様」

「っ社長!わざわざそれを言いに・・?」


意味深に微笑むと神木の顔は見る間にピンクに染まっていった。頬に手を添えながら照れている仕草は、女性らしく可愛らしかった。


「今、事務室で変な噂が流れてるって聞いてね。そのことも話したいんだ、これから夕飯でもどうだい?遅くなってしまって悪いんだけど」

「そんな!とんでもないです、とても嬉しいです!」

「そう、それはよかった。じゃあ行こうか」


あらかじめ予約しておいた店へ移動すると、神木をきちんとエスコートする。その1つ1つにとても初々しい反応を見せているところからしても、やはり神木は一樹の事をとても好いているようであった。噂が本当であったことに一安心する。


「好きなものはあるかい?」

「私は・・ええと、ワインが好きです」

「そうか、僕も好きだよ」

「えっ?あ・・ワインが、ですよね!わ、私もワイン、好きです」


少し酔わせると、素直にいろいろ話してくる。饒舌になっていくに従ってあからさまな上目使いなどをし始めた。下準備が整ったところで本題へ入る。


「ところで最近・・事務室に変な噂があるみたいだね」

「そうなんです、実は・・本当に困っているんですけど、日和さんが変な文章をデスクに入れてくるんです」

「・・日和さんが?どんな内容なのか教えてもらえるかな」

「もちろんですぅ。本人の直筆で、会社のこういうところが嫌だとか、他の社員の悪口が書いてあったり・・。あと、本当に悲しかったんですけど、社長の事も書いてありました・・」


目を潤ませながら唇をかんでいる。芝居がかった調子に思わず吹き出しそうになるが、わざとらしく「ふむ」と眉を寄せると神木は更に饒舌になる。


「私、直接本人に聞いてみたんですよ。こういうことはしてはいけないよ、って・・でも彼女「神木さんさえ黙っていてくれれば、それで済む話です・・でしょ?」って逆に私を脅してきて・・。本当に、怖くて・・それからはそれがデスクに入っていても、しばらくは知らないふりをしてたんです」

「そうだったのか・・辛かったね」

「はいっ・・」


報告と180度違う話の内容に、和也の腸が煮えくり返るかと思った。嘘ばかりを並べ、わざとらしくしなを作って、涙を1つ2つこぼせば信じてもらえると思い込んでいる。必死で訝しんでいる事が顔に出ないように悲しそうな顔を作った。

そこでもう少し酒を勧めると、喜んで飲み干してそのままコトンと眠るように倒れてしまった。タクシーを呼ぶと先払いで家まで帰らせる。あとは運転手がどうにかしてくれるだろう、とすべて任せることにした。



「その後も何度か「相談に乗ってほしい」と話を持ちかけられて、同じように「鈴ちゃんが自主的に神木を脅す」という内容を何度も話されたんだ。僕は頭がおかしくなるかと思った。でもどうにか出来るのならどうにかしたいと思ったんだ。だから、仕方ないと思って最後まで話を聞いた・・けれどある日相談を受けた日に言われたんだ」




その日はいつもよりも緊張した面持ちで呼び止められる。いつものお店へ案内すると、席に座るなり言い募る。


「社長・・日和さんと付き合ってる・・んですか?」

「えっ、何の話だい?」

「・・その、気分を害されたら申し訳ないんですが、この前見たんです。休日に二人が出かけてる姿を」


しまった、と和也は後悔した。最近鈴とデートした際に、確かにこの最寄駅を使ったのだ。だがそれをまさか見られているとは思わなかった。もちろん『和也』の姿でデートをしているのだが『和也』を知らない神木にとって、それは『一樹』にしか見えなかったことだろう。


「手をつないで、とても・・とても楽しそうでした。親密な様子が遠目でもわかりました。本当の事を教えてください、社長は日和さんと・・?」

「そんなことは無いよ。似た人と間違えたんじゃないかな」

「間違えるはずありません!だって私は社長をずっと見てきたんです!」


神木の言葉に思わず笑ってしまいそうになった。『社長』をずっと見てきた?『一樹』と『和也』が一緒になっている『社長』を、だ。普通は同一人物だと考えるだろう。だがよく見てみたら違うのだ、実際鈴は何度か入れ替わっていることに気付いていた。口には出すことが無い分確かめようがないが、勝手にデートされた時などは和也が行くとほっとした顔をするのだ。

そんな違いすら分からないのに「間違えるはずはない」と断言できるなんて、なんて幸せな人間なんだろうかと思った。


「社長・・。私、社長が好きです・・」

「・・・」

「こんなに親切に相談に乗ってくれて、私は・・心の底から社長の事が好きになってしまったんです・・。どうか、拒絶しないで」


そっと手を伸ばしてくるが、拒絶することはしなかった。もちろん手を伸ばすこともしなかったが。空に漂う手をじっと眺めていると、鈴の手の方がもっと小さ目で爪もシンプルにしてあることに気付いた。ゴテゴテとデコレーションされている指は、自分を偽ることに貪欲なように見えた。

鈴の事を思い出し始めると自然と口元が緩んでしまった。それを見てホッとした顔をしたのが分かったが、気付いたら思っていたことが口から出てしまっていた。


「僕はね、君のことが大嫌いだよ」

「・・え」

「人の悪口を延々としゃべる、君のことが大嫌いだ。嘘を塗り重ねてきた君の人生に興味はない」


言い切ってから「しまった」と思って顔を上げると、すでにそこに神木の姿はなかった。慌てて店の外へ出るが、タクシーでも使ったのだろう。すでに居なくなっていた。追いかけることをしようとは思わなかったが、和也もタクシーを拾ってある場所へ向かった。

少し離れたところで待ってもらい100mほど歩くと見えてくる、見慣れたアパート。真っ直ぐに鈴の部屋へ向かうと中から声がしていた。聞くつもりはなかったが、インターホンを押すタイミングを見計らっているが中々話に花が咲いているらしく話が切れる様子がなかった。

靖春でも来ていたのだろうか、とてもこのタイミングでインターホンを押しては気の毒のように思えた。それに声を聞いただけでさっきまでの荒んだ気持ちが幾分も落ち着いた。今日はこのまま家に帰ろうと思い、そのまま引き返していったのだった。



「そうして1週間は何も音沙汰が無かった。だけど僕は気付いていた、一樹でいるときも、和也でいるときも神木が『社長』に目を向けていることに、ね。初めて人を恐ろしく思った。あそこまで言われても周りに何を言っている様子も無く、未だに虎視眈々と狙われ続けるのが恐かった」


そうしているうちに、再び「相談がある」と言われた。仕事があるからと断ろうとすると、最後だからと食い下がるため渋々了解すると頬を染めて喜んだ。それを見た和也は背筋が恐ろしくなってしまったが、最後だからと自身を鼓舞した。


「社長・・私、もう我慢できないです」

「何かあったのかい」

「あんなひどい事言われても、やっぱり、社長が好きなんです・・。日和さんがいるから駄目だ、ダメだって、思えば思うほどに惹かれてしまうんです・・!」


辛そうに言っているようだったが、和也には自分に酔っているようにしか見えなかった。そして今日この場に来たことを後悔した。どのように話を切り上げようかと頭を巡らせていると、ふいに神木が立ち上がる。そして和也のそばへすり寄ってきた。

思ったより顔に感情が出たようで、ひどく傷ついた顔をしながらも和也の手を握った。


「2番目だって、いいんです・・。1番じゃなくていいですから・・都合のいい女にだってなれます、仕事だって今よりももっと頑張ります!私じゃ・・ダメですか・・?」

「何度も言うようだが、僕は君に興味が無いんだ。君はただ僕の会社で働いている、いち社員でしかない。話はそれだけか、帰らせてもらう」


立ち上がって荷物を持つと和也の後姿に神木はつぶやいた。


「・・明日、どうなっても、知りませんから」


そして今日。ついに神木が行動を起こしたのだった。

朝一に鈴が会社に来ることは知っていたため、それよりも早く来ればいい。そうすれば今の発言を聞いた『社長』が何かしらアクションを起こすと踏んでいた。そしてそれは的中したのだ。


「一樹社長・・!来てくれるって、信じてました」

「君はどうしたいんだ」


神木は頬を赤くしながら、一枚ずつ服を脱いで行った。そして過激な下着姿一枚になると和也を誘惑する。


「一度で、いいんです・・」


それを見てため息をつくと、ずんずんと神木へ近寄る。期待で胸を膨らませながら待つのが分かったが、その手を握ると自身の足の間へ導く。


「君じゃ、役不足だ」


余程自信があったのだろう。可愛らしく染まった頬は血の気が引いていき、唇はわなわなと震えだした。和也は誰にも見られないようにすぐに事務室を出ると、正門へ向かった。




「・・僕は、とんでもないことを、してしまったんだ」


全てを話し終えたらしく頭を抱えて完璧に俯いてしまった。一樹はため息をついてそっぽを向き、一也は天を仰いで目元を隠している。完全にお手上げ状態な中、鈴はじっと和也を見つめる。視線に気づかない和也に痺れを切らして、足元へ近づいた。床にひざをつけ覗き込むようにして和也の顔を見つめた。


「私の顔、見えますか?」

「・・今の僕には鈴ちゃんを見る資格なんて、無い・・ごめん・・」


ギュッと目を閉じたまま鈴を見ようともしない。


「私は、今の話を聞いてとても嬉しく思いました」

「・・ウソだろ鈴、今の聞いてどこが嬉しいんだ・・?」

「全部、です」


当然のようにそう答えると再び和也の顔を覗き込む。少しでも目を開けてくれたらと思ったのだが、未だ目は固く閉じられていた。


「ハァー、こいつはほんっとに手が焼けるな」


一樹は腕組みをすると靴を履いたまま足で和也を小突く。「おい」と言いながら徐々に激しく揺さぶられるのに目だけは開けようとしなかった。


「おい、マジでお前話すなら今しかねーだろうが。日和がここにいる間に話せること全部話しとけって」

「和也兄、一樹の言う通りだってマジで。鈴が嬉しいって言う意味、知りたくねーのかよ」

「・・し、知りたくない。僕は鈴ちゃんを余計に傷つける結果しか残せなかったんだ、こんなの・・こんなの僕は望んでいなかったのに・・!」


そこで一度区切ると目を開く。目から大粒の涙がぽろぽろとこぼれた。鈴は「ああ、泣くのを我慢してたんだな」と妙に納得する。和也は鈴とのデート中でも、機嫌を損ねることや無意識に傷つけていないかを極度に恐れていた。毎回大丈夫だと言っていたものの、きっと今回も不安になっているのだ。


「・・私は、本当に嬉しいんです。和也さんに秘密があったのは、ちょっと驚きましたけど。神木さんの事も、私を思ってしてくれたんですよね?しかも社長が反対するのを知っていて、それでも何か出来ることが無いかを探してくれて」


ようやく和也が鈴を見ると、鈴の顔は笑顔であった。両頬が腫れているのが痛々しいが、いつもの笑顔であった。


「あ、やっと見てくれましたね?和也さんのおかげで、神木さんには両頬叩かれちゃいましたけど・・今の和也さんの方が、きっと痛いです。ずっと胸の奥が痛いはずです。これぐらい、なんともないですよ?へっちゃらですから」

「・・うっ、ごめんね、鈴ちゃん・・ごめん、こんなことになるとは思わなかったんだ」

「大丈夫です。和也さんが思ってるより、私は逞しいですから!」


軽く胸を叩くと、和也は余計に泣いてしまった。どうしていいか分からずに一也と一樹を見るが、二人とも「あーあ」という顔をしているだけで助けてくれそうになかった。仕方がないので背中をさするために立ち上がると、パッと手をつかまれた。


「い、行かないで・・」

「大丈夫です、和也さん。私はどこにも行かないです」


一樹がソファから移動して鈴に座るように促した。軽く頭を下げてそこへ座ると、背中をさする。まるで幼子のように鈴の手を両手で握りしめたままそれを受け入れるのだった。


「・・はぁ、まだ引きずってんのかねぇ」

「そりゃそうでしょ。10年だよ?10年。俺なら軽く20人ぐらい遊んじゃうけどねー」

「俺もだ」


二人の背後で兄弟が話していることを知る人はいなかった。


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