表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

何故通う美容室

作者: 猫まるまり

その美容室に入るのは初めてだった。

若い美容師が担当と名乗り、奈々子の腰まである髪を触る。

「ちょっと揃えるだけであまり切らないで」

「かしこまりました」

若い美容師は奈々子を笑わせながらあっという間に髪を揃え、トリートメントを施した。

「綺麗な髪ですね」

「まぁ、ね」

奈々子は会計をし、担当の名刺を受け取った。

皆藤義人とかいてあった。

奈々子はとてもこの美容室が気に入った。

また皆藤を指名しよう。


帰宅した夫に髪を揃えた事を言う。

反応がなかった。

黙々と奈々子が作った食事を食べながらテレビを見ている。

奈々子を見向きもしない。

この長い髪だって夫が好きだから伸ばしてるのに。

奈々子は歯ぎしりしたい気持ちだった。


子供達はもう手がかからない。

奈々子は今日も美容室に行く。

5センチずつ髪を切っているのだ。

夫が気付くまで。

皆藤はいつも笑わせてくれる。

気味悪がっているだろうが顔には出さないプロだ。

しかし今日も夫は気付かなかった。


とうとうショートカットになった時、奈々子は離婚の事を考えていた。

財産はある。孤独はいつだって側にいた。子供達は反対しないだろう。

「離婚するか、、、」

そのときチャイムが鳴った。

奈々子が玄関までいきドアを開けるとバラが50本以上かぶさってきた。

夫が立っている。

奈々子は尻餅をついた格好で聞いた。

「このバラ何?」

「お前が切った俺への愛」

ああ、ダメだ。この人は私をみてなかったんじゃない。

みていられなかったんだ。

奈々子は瞬間的に悟った。

揃えるだけで嫌になる。

それだけの事だったのだ。

こんな人とは暮らしていけない。

「離婚よ」

奈々子ははっきりそういうと、バラを投げつけた。

「ああ、離婚だ」

バラを大事に抱え、夫は言った。

「俺の愛を受け入れないお前なんか嫌いだ」

そういって外へでていった。

捨て台詞なのだろう。

奈々子は子供達を呼び寄せる準備をして、出て行く用意をした。

「しかし髪の毛の長さで愛を計る男はダメね」

クククと笑いがこみ上げる。

結婚した時はそれが愛だと思っていたのだ。

「あーあ」

奈々子は開放の息を吐いた。

皆藤の所にはもういかないだろう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 男の身勝手さとそれに気づいてからの女のあっけらかんとした態度が現実的だと思いました。 [一言] 長い髪にやたらとこだわる男っているんですよねえ。 お互い幻想を抱いて誤魔化してきたものに、年…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ