あいつとの再開は、過激だった。2
事務所には、2ヶ所の出入口がある。北側に1ヶ所、西側に1ヶ所だ。
北側は、遺族の控え室があり、通夜の一晩や本葬までの間、故人と一緒に休んで頂く。
西側はロビーへと繋がっており、事務所を出て左側には、お客様用の玄関がある。
ロビーの奥には、中ホールと大ホールの2部屋がある。
ちなみに、北側の出入口から右手に行けば、従業員用の玄関がある。
話は戻って、中井たちがロビーに出たとき、中井は歩きながら幽霊に聞いた。
「あんた名前は?」
幽霊は肩で笑いながら「名前?ナニソレ?」と茶化して言った。
「僕の名前はね、忘れた」
「忘れた?」
「えぇ」
「なんで?」
「さぁ」
「さぁ?」
「そんなに言うなら、僕に名前つけてよ。」
「……」
ロビーには、中井の足音だけが響いている。さっきからずっと空気が冷たい。
秋とはいえ、まだ残暑の厳しい気候で、夜も暑苦しいのだが、今のこの式場は少し肌寒く感じる。
大ホールについた。
中井と幽霊は、大きな祭壇の前で止まり、沈黙している。
中井は、幽霊の5歩ほど後ろで、祭壇の前で立っている幽霊の後ろ姿を見つめている。
「何があるんだよ?」と中井が痺れをきらして言ったその時、中井は後ろから笑い声が聞こえてきた。
その声は、少女のような声で、澄んだ声というか、無垢といった感じで、その笑い声は、だんだん大きく聞こえてくる。
とその時、幽霊は振り返り、右手に持っている白刃を大きく上へ持ち上げ、中井に近づいて凶器を左から右へ『ブンッ』という音とともに振った。
その白刃は、中井の頭上をかすめた。それに驚いた中井は思わず腰を落とした。軽く腰が抜けてしまった。
「何しやがる」と中井は怒った。
「もう聞こえないでしょ?」
幽霊が白刃を振った直後、笑い声はピタリと止まっていた。
幽霊は言う。
「あんたの後ろにずっといたんだよ、女の子が」
そこで、冒頭のセリフを叫んだのだ。