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葬儀屋トシと送り屋ユリ(仮)  作者: 村川未幸
2章目
19/28

彼女がいた理由6

次の日、今日は火葬場の都合で朝からの出棺となった。


8時半、ホールにて。


お寺の住職がお経を読む。そのあと、棺に花を入れていく。


中井は花の入った籠を持って、遺族の皆様に花を配った。遺族は花を故人の入った棺に入れていった。そして、みんなそれぞれに別れの言葉をかけた。


「今までありがとう」

「お疲れ様でした。あの世でゆっくりしてね」

「今まで辛かったね。本当にありがとう」


遺族は涙した。そして、喪主の男性が最後に白百合を故人の胸元に置き、故人の額にキスをした。


「ありがとう。ごめんね……」


男性は、擦り切れる声で言った。


「パパ」

「……悠人」

「僕ね、知ってるんだ。ママがお空に行った理由を」

「……悠人?」

「えつこ先生が前、言ってたんだ。小学校にいたうさぎちゃんが死んだ時ね、『うさぎちゃんは、この世界で、いい生き方を学ぶために生まれたんだって。喜ぶとか、怒るとか、悲しむとか、楽しむとか。』だからママは、もう全部知ってるから、長いことこの世界にいる必要がないんだよ」

「……悠人……」

「だから悲しくないよ。僕、悲しくなんかないよ」


そういう男の子の目は、涙が浮かんでいた。


男性は男の子を抱きしめた。


「悠人、泣きたいときは、泣いていいんだよ」


そう言われた男の子は、男性の胸の中で泣いた。声をあげて。


「そろそろ、お時間です」


田中と中井は棺に蓋をした。


玄関にある霊柩車まで棺を運び入れた。


棺を入れて合掌、そして、霊柩車のトランクの扉を閉めて一礼し、遺族は霊柩車の後ろについている送迎バスに誘導し、喪主と家族は霊柩車に乗った。


社長、石田、中村は外で立っている。


霊柩車は田中、バスは中井が運転する。


霊柩車のクラクションが鳴る。それに合わせて石田は合掌、一礼する。90°の最敬礼だ。


社長と中村は道路を封鎖する。


滑らかに霊柩車とバスが出ていくと、社長と中村は、霊柩車に一礼、そして通行中の車に一礼した。

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