彼女がいた理由
その後、中井は3日間の入院生活と3日間の自宅療養を終え、会社に復帰した。会社の皆は、中井を歓迎してくれた。
「トシ、見た?」田中はニヤニヤしながら中井に言い寄った。
「何が?」
「俺の差し入れ。入院してた時に持ってきたやつ」
「あぁ、あれ?処分に困ったよ」
「ナイスチョイスだったろ?あのエロ本」
そう、田中は中井にエロ本と缶コーヒーを差し入れしていた。
その素敵な雑誌の名は、田中の趣味のチョイスで過激なため発表できない。申し訳ない。
「お前のチョイスは、刺激が強すぎる」
「ははは…嫌いじゃないだろ?」
「はは…どうだか」
中井は田中の肩を、グーでパンチした。
そんなやりとりをしている中、
「田中さん、仕事です。警察署。女性だそうです」
と石田が自分の机から言ってきた。
「警察?もう行っていいの?」
「あ、いえ、検視が終わったら連絡があります」
「あぁ、分かった。じゃあトシ、今日当直だろ?宜しく」
「うん」
中井はお茶を一口、口に含む。
18時。警察から連絡がくる。その時田中はまだ帰っていなかったので、田中と一緒に警察署へ向かう。
警察署。安置所には、遺族も一緒にいる。
「この度は、大変でございました」
遺族の男性は何も言わず、一礼した。
目は赤く腫れ上がっている。男性の腕の中には赤ん坊が、男性の隣には男の子が、男性のズボンんを掴んで立っている。
今回亡くなったのは、この男性の妻である。
お体は、葬儀屋に安置することになった。
葬儀屋に戻り、控室に移動した。