表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
葬儀屋トシと送り屋ユリ(仮)  作者: 村川未幸
1章目
10/28

夢?現実?4

葬儀社に戻った2人は、早速、式の手配をする。


阪口は、供養品や通夜菓子などの準備、中井はまず、祭壇花の手配に、隣の花屋へ行く。


『フラワー山田』の店主、山田貴子やまだたかこは、本田社長の親戚にあたる。


確か、従姉妹だとか。


白髪メッシュのソバージュヘアのセミロングで、社長はいつも、その風貌から『ラーメンババア』と呼んでいる。


「店長こんにちは」

「あらトシ君、今日も仕事が入ったのね?」

「はい。今日は花祭壇でお願いします。あ、これ、注文書です」

「はい、分かったわ。ありがとう」

「いえ、こちらこそ。お世話になります」


本田葬儀社の生花は、全てここの花屋を使っている。


社長の親戚ということもあるが、他の式場より、花を多く盛ってくれる。おかげで、「本田さんのところの花は、他より多くて、とても綺麗なのよね。値段は張るけど……」と周りからの評判がいい。


花の手配を済ませ、棺と骨壷、会葬名簿を準備し、会葬礼状を印刷する。刷った礼状は、供養品の中に入れていく。


死亡届を出すために、死亡診断書を持って役所に行く。


役所から戻り、そうこうしているうちに事務所で昼食を取る。


時刻は15時。今日のご飯はコンビニのおにぎり、梅味だ。


疲れた体には梅。酸っぱくて顔が歪む。


目、鼻、口が顔の中心に寄っていく。ベタなことだけど。


それを見た石田は笑う。その笑顔を見た中井も、照れくさそうに笑う。その一部始終を見た阪口が、ニヤニヤ笑う。


つかの間の時間は過ぎていき、中井は棺と死装束を積んで、寝台車で山本宅へ向かう。


「お迎えに参りました」と座敷にあがった。するとやっぱりお体の頭の横に、故人の幽霊がいる。


「あ、さっきの。どうもすみませんねぇ、お世話になります」


と、幽霊は頭を下げる。


中井は見て見ぬふりをした。


男の人に手伝ってもらって、棺にお体を入れる。死装束は、棺の中に入れる。遺体の骨が脆いようで、むやみらやたらに動かせば折れる可能性がある。それを遺族に伝えたら、服はこのままで、あの世にいったときに死装束に着替えてもらうということにした。


本当に着替えるかはわからない。物理的に言えば、最後は燃やしてしまうから。


遺族から小銭を少しいただき、死装束にある袋に入れて、棺に収める。


三途の川を渡る、渡り賃である。あの世で困らないようにするため。


本当に使うかわからない。物理的に言えば、やっぱり燃やすから。


棺を寝台車にのせ、式場に出発する。


幽霊は、お体を離れることはない。


その車中、「お兄さん、お名前は?」と何度も言われるので、中井は答えた。

「あ、中井と申します」

「あ、あんた、わしが見えるのか?」

「はい、まぁ……」

「そうかそうか。だからわし、見られてる気がしたんだよ」

「はは…私も見えるなんて、思いもしませんでした」

「あっははは。中井さん、あんたとは仲良くできそうだ」


中井は顔が引きつっている。


さて、式場に着き、お体と遺族は控室で休んでいただき、中井らスタッフは通夜の準備を続ける。


阪口、松下らは遺族のそばについて、お茶出し等を行う。


中井、田中、中村は、祭壇のライトアップ、ろうそくに火を付け、焼香台の準備を行う。



故 山本 敬三様 89才

通夜 10月15日 19時

葬儀 10月16日 12時

出棺 10月16日 13時

寺院 浄土真宗本願寺派 小法寺

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ