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SCARLET  作者: Knight Circle
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#:4

・・・きっと、その少年は誰も愛していなかったのかもしれない。だって、彼には友達がいなかった。

・・・きっと、その少年は何も愛していなかったのかもしれない。だって、彼には好きなモノがなかった。

・・・その少年は、誰も、何も愛していなかった。・・・きっと、彼は誰からも愛されていなかったからだろう。



   *



俺は目を瞑る。腕が軋む。これ以上はもう無理だ、諦めろ、と自分の内側から自分が話しかけてくる。いやいや、諦めるわけにはいかない。なぜなら、

「だーッ! ・・・なんでそこで逸れるんだよぉっ?!」

ゴトリと重い音がして、ボールはガーターレーンに落ち込む。・・・この人、今ので3回目だ。

「さて、第8フレームが終わってボウルチームの得点はまだ46点! それに対して芸能人チームの得点は112点、これはひどい! この調子で再び芸能人チームに賞品はいってしまうのか! さぁ、第9フレーム、投球するのは盛邦さんです」

えぇい、覚悟を決めろ、盛邦篤史! スパッと終わらせちまえ!! 賞品なんてドンと来い!!

「・・・行きますッ!!」

そして、後ろに球を振りかぶり、・・・思いっきり放った。・・・左へ、・・・ガーターレーンへ、・・・落ちる寸での所で再び回転がかかり右へ、・・・その球はピンを全てなぎ倒した。

「ストラーイクっ!! これはひどい!! さぁ、ボウルチームはウォータープルーフ伊藤さんです」

「おっしゃこーい!」

「おいおいおいおい、待て待て待て待てっ! お前に任せたらまた落ちる!」

「今度は平気ですんで、ほんと、しっかりやりますんで」

・・・そして、彼の球はガーターレーンに吸い込まれていった。


・・・・・・それから先は全く覚えていない。いつの間にか、仕事は終わっていた。他の人との受け答えもしっかりやっていたらしい。今度テレビで確かめてみようか。・・・この番組も、少し前にメンバーが一斉に入れ替わったせいで、視聴率はどん底に下がった。やはり、こういうのは正月特番の方がいいと思う。新春ストライク対決とか。・・・ま、俺は口出しできる立場じゃないけど。

「じゃ、お疲れ様でしたー」

「お疲れ様でーす」

俺はいそいそと会場を後にする。・・・きっと、次に俺がここに来ることはもうないだろう。・・・そうだ、あいつはまだ家にいるかな・・・?



   ▽



「ん、・・・あ、もう朝か」

久しぶりによく寝たような気がする。最近は侵略活動だの自己鍛錬だので全く眠れてなかったし。・・・そして、机の上のメモに気付く。

【飯は冷蔵庫の中。レンジであたため】

・・・途中でメモは終わっていた。急いでいたのだろうか? どちらにしろ分かるからいいや。

「・・・チャーハン・・・」

・・・そういえば、よく冷凍チャーハンを1人でチンして食ってたっけな・・・。

俺はそれをレンジの中に入れて、スイッチを押す。少し前のレンジは回ってたのに、・・・もう回らないと分かると少し残念だ。このちょっとした切なさってなんだろう・・・。

・・・電子音が鳴る。俺はチャーハンを取り出して、ラップを外す。いい匂いがした。あの人、料理上手だなぁ。お、スプーンも置いてある。準備がいいのか、何なんだろうな?


「い、いただきまーす・・・」

そして、久しぶりすぎるチャーハンの味に舌鼓をうつ。少し前まではマトモな食事は食っちゃいなかったからな。

「・・・ま、あの味には比べ物にならねぇや」

そういいながら、食べ進める。海老のぷりぷり感がたまらない。こんなに味のある食事をしたのは、久しぶりすぎる。・・・気付けば、完食していた。基本的に食べるのは結構遅い方なんだが、ここまでぺろりと平らげたのはいつ以来だったか。

「ふぅ、ごちそうさん」


ようやく暇になったから、何をしようかと、考えた。

「・・・ん? これ、テレビじゃねぇか。薄いなぁ・・・どこにブラウン管が入ってるんだ?」

とりあえず、テレビをつけようとする。だがリモコンがなぜか見つからない。

「よくあるよな、こういうこと。たいていはソファーの下とかに落ちてたりするんだ・・・けど、このソファーの下にはさすがに入らないよなぁ」

テレビがどうしても見たいから、机の上とかベッドの下とかを確認する。しかし見当たらなかった。

・・・そして、そんな時間を引き裂くように電話が鳴り響いた。・・・出るべきか、出ざるべきか。

「もちろん、出ないって」

・・・少し耳が痛くなってきた。電話は鳴り止まない。・・・切れたと思ったら、またかかって来た。

「誰からだよ、かけすぎだろ?」

電話のディスプレイを見ると、なんと表示不可の4文字。おいおい、非通知とかじゃないのかよ?!

「・・・出ちゃ駄目だぜ、俺。・・・絶対出るなよ、俺」

そうやって自分を抑える。だが、電話は鳴り止まない。・・・再び切れた。もうかかって来るなよ。そう念じたが、また電話が鳴った。

「きーッ!! 出ちまうぜ! いいよな、俺!! はい許可ぁっ!!!」

そう言って受話器をつかんだ。で、後悔。・・・出ちまったから切りづらい。今さっきと逆パターン。だが、何を話しても怪しまれるだけ。つーかここの家主の名前すら知らないってのに俺の馬鹿野郎!!

『・・・おい、もしもし? 一応聞くが、・・・篤史だよな?』

げっ、勘付かれたっ?! 予想外に速すぎ!! 相手も知らないこっちも知らない、知らない知らないだーッ!! ここは、無難に。

「あ、あの、・・・どちら様ですか?」

『あ、もしかして盛邦さんのお宅じゃない? こ、これは失礼。ほんと、すみませんでしたッ』

電話が切れた。ふぅ、なんとか切り抜けたようだ。またかかってきたら恐いから電話線を引っこ抜いた。

「で、リモコンはどこだっけっと」

そこでインターホンがなった。インターホンのディスプレイに映っているのは、ここの家主のようだ。

『よう。・・・よく寝たか? とりあえず開けてくれ。ほら、そこのでかいボタン』

「あ、えっと、・・・これか」

俺はボタンを押した。



   *



「単刀直入に聞く。お前は誰だ?」

俺は真っ先にその質問をした。彼はやはりうろたえる。目線をバッチリ逸らしているというか、あさっての方角に向いているというか。

「俺は、・・・えっと・・・」

「お前の名前を聞いているんだ。それとも、何かやばいことでもしてるのか?」

少し、いや、だいぶ反応した。こいつがやましい事をしているということは今ので分かったが、一体何をしているんだ?

「で、名前は何だよ? さっきからそれを聞いてるんだ。はやく答えろよ」

・・・静寂が訪れる。こういう空気は苦手だから、俺はテレビをつけようとする。が、見当たらないので諦めた。

「なぁ」

突然彼は口を開いた。そして、俺のほうを見て笑った。・・・目は、笑っていない。

「本当の名前を忘れたって言ったら、怒るよな?」

「は? 何言ってんだ、自分の名前ぐらい覚えてろよ」

「いつ自分の名前を捨てたのかも覚えていないし、どんな名前だったのかも覚えていない。・・・俺は誰なんだよ?」

俺に聞かれても困る。俺に名前をつけろって頼んでるわけでもなさそうだし。・・・つけるつもりは全くないが。

「じゃあ、お前は何者だよ? ・・・人じゃ、ないんだろ?」

ビクッとする。動揺というレベルじゃないな。これは・・・驚愕というか、戦慄というか・・・。

「俺からも聞かせてくれ。あんたは誰なんだよ?」

「俺か? 俺は盛邦 篤史。・・・あ、そういう意味じゃないよな。お前が言ってるのは、俺が人かどうか、・・・だろ?」

「あぁ、そうだよ。俺は人じゃない。ならあんたは何者だよ?!」

「俺が人だと思うか? 人じゃないモノを知ってる俺が、・・・人に、見えるか?」

そして、彼は俯く。部屋の気温が少し下がったような感覚。(はた)から見れば滑稽な会話。だが、知っている奴らにとっては、とても重要な会話。そして、彼が俺より先に口を開いた。

「・・・人、じゃあないん・・・だな」

「ああ。・・・じゃあ、次はお前の素性を明かせ。一体お前の人生は何なんだ?」

「聞いたら、後悔するぜ。絶対に。・・・聞きたくなければ、耳を塞げ。見たくなければ、目を閉じろ。拒絶したいなら、ここから俺を追い出せ」

そして彼は語りだす。彼の後悔と怨恨に満ちた記憶を。



   ▽



あれは、確か今から・・・何年前だろうな。あそこにいたから、時間の感覚が全部吹き飛んじまった。まぁいい。ともかく俺はいつものように、ババァ・・・母親のことだが、そいつに虐待を受けてた。父親は逃げたよ、俺が生まれてくる前に。だから顔を見たこともないし、会ってみたいと思った事だって一度もないな。何で逃げたんだろうな? 俺のことがもしかすると、嫌いだったのかもしれない。俺が『偶然』普通の人じゃなかったからかもしれない。

ちょうどあの日は兄貴の命日だった。事故に遭って死んじまったってババァは言ってたよ。でも、あの車を運転してたのは誰か? 俺はそれを『偶然』見てしまった。・・・ババァだよ。そう、兄貴を殺したの俺の母親なんだよ。だから、俺は恨んでた。でも、俺には何もできなかった。大人は誰も俺の相手なんてしてくれなかった。教師も信用できなかった。

俺が通ってた・・・小学校だっけ? そこの鶏とウサギ、あと亀だったか? 曖昧すぎて困るな・・・。そいつらが全部死んだ。俺はその日は『偶然』学校に残っていて、・・・犯人に仕立て上げられたよ。犯人は分かってたが、だぁれも信じちゃくれなかったさ。それどころか俺のことを嘘つき呼ばわり、ほんと俺ってついてないよな・・・。

話を戻すぜ。兄貴の命日の夜、俺は灰皿で殴られた。・・・灰皿って分かるよな。言っとくが鉄製の薄いあれじゃないぜ、ガラス製だ。痛かった。少し血も出た。それで、兄貴の遺影に向かって灰皿を投げつけた。

・・・それで、気付いたら俺はババァに馬乗りになって、包丁でメッタ刺しにしてた。顔がぐちゃぐちゃで、もう中身まで見えてた。でも、あのババァの醜悪な顔に比べたら、幾分かマシだったから不思議な安堵感があった。

でも、そのあと恐ろしい事をしたことに気付いて、逃げだした。通行人が血まみれの俺を『偶然』見かけたらしい、警官に追われた。家が『偶然』海の近くだったから、漁船に隠れた。それで、動かしたこともないのに逃げようと必死になって、『偶然』動いたときにやっと警官たちが気付いた。でも遅い、俺は既に港を出ていた。

・・・・・・その日は『偶然』大荒れだった。波も高くて船が揺れて気持ち悪くなった。それで、なぜか船が動かなくなったんだ。きっと燃料が切れたのかもしれない。そう思って甲板に出た瞬間、『偶然』大波で船が引っくり返った。俺も船から投げ出された。・・・俺はこれでも泳ぎには自信があったから、とりあえず呼吸をするために海面に上がろうとした。でも、『偶然』足にロープが巻きついていて、船と一緒に沈んでいった。きっと、このまま死ぬと思った。


でも、こんな不幸な俺を『偶然』救い上げてくれた。死の海から、嘆きの世界から。その時、俺は人並みの扱いを受けたよ。あの場所は、苦しみがない。嘆きも哀れみもない。不幸もない。だから、俺は『あのお方』に付き従った。あぁ、イーラ・・・まあ昔の仲間のことだが、裏切った。あいつも『あのお方』を信じればよかったのに。というか、あいつは知らなかったからな、『あのお方』のことをな。

・・・『あのお方』を信じた俺には、名前が与えられた。その日から、その名前が俺の名前になった。俺の名前は、・・・『インヴィディア』、・・・『あのお方』曰く、嫉妬らしい。他人の幸せを、存在を嫉妬し続けた俺にはお似合いだった。だから、『あのお方』は俺についてよく理解してると思った。だから、『あのお方』の言うことなら何でも聞いたよ。だけど、・・・『あのお方』は奴を通してしか話そうとしなかった。あいつの代わりに、俺がその役目につきたかったのに・・・。そんな嫉妬も俺を突き動かした。

そして、俺は今回ある1人の少年を誘拐しろとの指示が与えられた。その少年はこの世界のモノじゃないんだ。万物の調和のため、らしい。そして俺はヘマをやらかして、見事に撃退されたよ。・・・ほんとにあの男は強かった。たぶん、あんたぐらいだと思う。だからしばらく身体ともに鍛えてきたんだ。北は北海道、南は沖縄までな。それで昨日戻ってきて、早速挑むつもりでいたんだが、どうも疲れちまってベランダで休んでたら、・・・そこから先は分かるよな。




「これで俺の物語はおしまい。いや、つーびーこんてにゅーだな、まだまだ終わるらせるわけにはいかねえよ」

「・・・お前、悲しい奴だな」

悲しい? 何でだよ? 俺は救われた。助かったんだよ。それなのになんで悲しいなんて?

「気付いてないのかよ? お前、・・・人殺しだぜ」

「・・・あぁ、確かに親殺しの殺人鬼だ。それどころかいくつか世界を壊してきた。俺の心はとっくに罪の意識で潰されているはずだ」

「なら、なんでだ? 『あのお方』って奴がどんな奴かは知らないけどよっ、・・・おかしいぜ」

「俺は信じてきた。他の奴が信じられなかったからな。仲間だって信じられない。俺が信じる、いや・・・信じられるのは、・・・『あのお方』だけなんだ」

そうさ、みんな俺の目の前で消えた。たくさんの絆も、千切れていった。この俺に残された唯一の太いつながりは、『あのお方』にしかつながっていない。

「なら、俺はお前を許して、信じる。だから俺を信じろ」

「は?」

突然、彼はそう言った。信じろ? 会って少ししかたっていないのに、彼は俺に信じろと言った。

「無理だ。いきなり言われても困るぜ。・・・それに、俺は許しなんていらない」

「はっきり言うぜ。・・・お前は『あのお方』とやらとつながってると思っている、いや、あえて言わせてもらうぜ、『思い込んでいる』ようだけどよ、・・・・・・お前、独りだぜ? 誰もお前とつながってなんかいない。『あのお方』とやらはお前のことを駒としか思ってねえ、要は・・・使い捨て、だ」

「な、何言ってんだよ? 『あのお方』は俺を、俺を救ってくれた! 暗い海の底からっ、地獄の果てからッ!! そんな思いを全て壊そうってのかよ?! だから誰も信じられないんだよっ!! みんな頭ごなしに絆を否定する、嫌いだ、嫌いだぁっ!!!」

「やっぱお前って、・・・子供だな」

頭に血が上って、たくさん暴言を吐いた。でも、彼は何も言わなかった。

「あいにく、そういうことは聞きなれてるからよ。何言っても俺には通じないぜ」

「黙れっ、黙れ黙れ黙れ黙れ!! 俺のことなめきって、そんなに楽しいのかよッ?! やっぱりお前は鬼だ、俺から何もかも奪っちまうやつらと一緒だっ! 俺のこと、何も分かってないくせによ、このケダモノやらぁああああああああッ!!!!」

少し動揺しているように見えた。ケダモノと呼ばれるのには慣れてないのか、はんッ、過保護野郎が。

「誰も好きで不幸になったわけじゃないさ。・・・ケダモノに好きでなるような奴はさすがにいないよな? それと同じだ。・・・なぁ、あんた。そのケダモノであることを受け止めてるのかよ? 逃げたりは、・・・してないよな? もしも、逃げてないのなら、・・・その宿命を受け止められたのなら。・・・俺はあんたのことを信じよう」

・・・決まった。これで、あいつは俺に強要してくることはない。

・・・あれ、なんで、なんでこんなに悲しいんだろう? もう、彼は何も言わない。だけど、なぜか、いろいろと言われるよりも悲しくて。

・・・それはとても小さい時の記憶。母親に抱かれてた。少し、花の香りがして、・・・寂しくて。

・・・と、ついに彼が口を開いた。

「・・・ケダモノ、か。・・・あいつも、よくケダモノとかバケモノ呼ばわりされて俺に泣きついてきた時期もあったな。あいつ俺より少し先に生まれたくせによお。・・・でも、あいつは結局それを受け止めた。いや、・・・呼ばれ方が嫌だっただけで、ほんとは好きだったのかもしれないな、そんな宿命が。・・・さて、と。あいつが受け止めた宿命だ。俺が受け止められなくてどうするよ? ・・・俺は受け止めた。じゃあ、お前が約束を守れ」

「・・・信じて、・・・信じてっ、いいのかよ・・・? 俺、お前を裏切るぜ。きっと、いや、絶対!! 後悔する、絶対後悔するから! だからよ、信じないでくれよ!! 後生だからよ、俺のこと、・・・頼むからッ・・・!! うわぁあああああああぁああああ、あぁあああああああぁああああぁぁあああ!!」

そして、俺の目からとめどなく流れる涙、・・・久しぶりに流した涙。一体何年ぶりだろうか、こんなに泣いたのは。

子供の頃にころんで泣いた。誰も助けてくれなかったから、もっと泣いた。そのとき知ったんだ。俺は独りだって。

・・・涙の味はそのときと同じでしょっぱくて苦かった。



   *



「・・・落ち着いたか?」

彼はタオルを持ってきた。俺はそれを無言で受け取る。いや、・・・無気力というか、無感情というか。しいて言うなら、心の中を空っぽにしたような、いわゆる無心というやつだ。

「・・・お前がどんなやつでも、お前は根元はいい奴なんだろ? お前はたくさんの苦しみに心を砕かれただけだ。ちゃんと全部のカケラを拾って組みなおせたなら何もかも元に戻れる、・・・やり直せる。だからよ、まずは俺のことから、信じてくれ。・・・時々顔を出すだけでもいいし、構わねぇから泊まっていてくれてもいい。・・・だからよ、ゆっくりでもいいから、やり直そうぜ。・・・お前の人生を」

「・・・俺は、自分の名前すら思い出せねぇんだよ。そんな俺が、どうやり直せばいいんだよ?」

「そうだな、・・・お前がもう一度戦いたいって思ってた奴と戦ってきたらどうだ? ・・・だからってやりすぎはダメだぜ。同じことの繰り返しなんざごめんだろ?」

「・・・俺、たぶん、怖かったんだと思う。誰からも見放されて俺は独りだったから、あの人のいうことを聞いていないと、多分また捨てられるかと思ってよ。・・・俺、馬鹿だったぜ。今考えてみたら何もかもおかしいよな。なんで俺はたくさんの世界を壊したのか、なんで俺はたくさんの人を手にかけたのか。なんで俺はここで、・・・こうやってあんたの話を聞いてるのかさえ、おかしいぜ」

彼は、俺に向かって笑う。その笑顔の裏には、果てしない絶望の奥に見つけたひとカケラの希望が感じられた。なんだよ、まだ笑えるじゃないか。なら、やり直せるぜ、きっと。

・・・それにしても、今日は普段は1時間に1本は入る電話が鳴らない。今日って何かあったのか?

「あ、・・・それ、引っこ抜いてたんだ」

そう言って彼は電話から伸びているケーブルを見せる。・・・プツン。




「バカヤロぅあぁあああああああああああああぁああぁぁアぁああァアアアアァあああぁあアっ!!!!! お前人の信頼度どれぐらい下げてると思ってんだこんのダラズぁああっ!!!」

「わ、わっ、こ、これはその、ふ、ふふ、不可抗力だった! ほんと! イッツトゥルー!!」

「へぇ、そう。―――って信じられるかよぉおおおおおオオオぉおおおォおぉッ???!!!」

「今さっき信じるっつたろーが! 何それ、前言撤回?! 無茶苦茶すぎるわっ!!」

そしてついにブレーカーがダウン。リミッターも一斉に解除。攻撃命令回路完全解放、システムオールグリーン。脳内法廷にて第一審にて有罪判決。なお控訴上告は認めるナイッ!!

「って、ぎゃ、ぎゃあああああああああああアアアぁああああぁあああッ、あああアあああァああああああああぁぁァあああああああぁあアあっ!! ああああああぁああアあああああああぁあァぁあああァあああアアあああああああああああっ!!!!」

思考回路シャットダウン、戦闘モードに移行。記憶領域の停止まで三、二、一、零。



   ◆



「へっくし」

「ありゃ、もしかして夏風邪? 夜中にエアコンつけっぱなしにするからでしょうが」

「電気代もったいないよ。いたッ」

俺は軽く方舟の頭を小突く。・・・確かあさってギプスを外すとか。はやくこの松葉杖ともおさらばしたい。

「風邪じゃねぇよ、誰かが噂したんだろ」

「そんなのどこかの漫画やら本でよくあるパターンでしょうが。現実にあると思ってるのかしらねー」

「確か、三千重・・・母さんも、昨日くしゃみして誰か私の噂したって言ってたよ」

俺は三千重を見て少し含み笑いをする。三千重の反応が面白すぎる。これだからこいつは好きなんだ。

・・・この場はそうは言ったものの、少し寒気がする。いや、これは嫌な予感というやつだろう。とても不安になる。篤史の家に電話したが、全く知らないやつが出た。・・・どこかで聞いたことがあるような声だったが。あの時は間違えたと思ったが、確かに番号は合っていた。そのあと何度か電話したが、それっきり出てこない。―――おい、ちょっと待てよ。冷静に考えろ。知らない奴が篤史の電話をとった。・・・篤史は電話に出ない。・・・まさかッ?!

「篤史、監禁されてるのかッ?!!」



To be continued...

更新にかかった期間、一ヶ月。気付いたら経っていた。やばい、時間感覚狂ってる。受験で忙しいって言ったら嘘になりますが。・・・いや、嘘じゃないか。

他の小説を読んでいるとコメントが入っていたりして少しうらやましく感じます。べ、別にコメントがほしいわけじゃないんだからねっ! と催促する気はありませんが、なければないで悲しいですよね。(それって結局ほしいんじゃ・・・)

梅雨は蒸し暑くてまったく筆が進まない!! なのでようやく今になって投稿することができました。さて、12月までに何話投稿できるかどうか。自分との我慢比べの始まりです。

それではごきげんよう。


From Knight Circle

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