第七話 なんか、恥ずかしいです。
-私は、いつも独りだった。友達はおろか、仲間すらいなかった。私はこうして独りで生きて、そして死んでいくのだろうと思っていた-
今日は束の間の休日。平日の激務を終わらせ、掴み取った休日。そんな一日をどう使うのか。これによって、平日の心の持ちようが変わる。休日だからダラダラ家にいるのか、それとも外出をして気分をリフレッシュするのか。
以前までの自分なら迷いなく前者だっただろう。でも、今は違う。
そう、今日はデパートに買い物に来ている。車など持っているはずもないので電車できた。
一人で?いや違う。メイドとだ。いや、メイドとってなんだよ。
「廻琉さん、どうしたんですか?」
そんな妄想に耽っている僕に声をかけてくれた。志保さんだ。数日前からメイドとして働いてくれている自称天使(?)だ。ちなみにいまだに天使というのは信じきれていない。だが、魔法を使うのを見てしまうと天使というのも本当なのかもと思ってきてしまう。
そんな彼女と今日はデパートに来たのだ。まぁ、着替えだとか布団だとか、あとその他諸々の用意をするために来たのだ。まぁ、大半は魔法で解決できるらしいけど。
でも、そんなことどうだっていい。気づいたかい。そう!女の子と二人でショッピング!これはもう!デートだよ!デート!
「ヒャッホゥ!」
「ご主人様が狂いました!?」
どうやら志保さんを困惑させてしまったようだ。落ち着かねば。彼女が僕のことを怪訝そうな目で見てくる。やめてくれ、悲しくなるから。
「本当によろしいのでしょうか?私なんかの生活用品を用意してもらって。」
「いいよいいよ、流石に布団とか私服とかないと困るだろうし。」
そんな会話をしつつも買い物を進めた。彼女はデパートに来たことがないらしい。終始周りをキョロキョロしていたが、途中からは買い物が楽しくなってきていたようだ。
「楽しい?」
「はい!楽しいです!すみません、色々買ってもらっちゃって。」
「いや、いいよ!こっちも楽しいしさ!」
実際彼女と一緒に買い物をするのはとても楽しかった。だって、全てが初めて見るような反応するんだもん。洋服からレジの様子まで。そんな彼女を見ていたらこっちまで楽しくなってきてしまった。
「いやー、いっぱい買ったね。」
「すみません、つい。楽しくて。」
結構買ったが、普段は働いてばっかで使う機会もないし、貯金もあったため、そんなに財布には負担はかかっていなかった。
「あ、ちょっと買いたいものがあったんだ!ちょっと待ってて!」
「あ、え!?」
「すぐ戻るから!」
そして、自分一人でとあるものを買いに行ったのだった。
こうして楽しいショッピングデート(?)も終わりに近づいてきた。
帰りも電車に乗ることにした。最初はたくさんいた乗客も数駅すぎると減り、電車の中に二人だけの状況になった。
「今日はありがとうございました。買ってもらった分、これから精一杯頑張ります!」
「うん、期待してるね。」
正直、そこまで張り切らなくてもいいとは思ったがやる気を削ぐのも違うなと思い、適当な返事をしてしまった。
「あ、そういえば渡したいものがあって。」
「はい、なんでしょうか?」
袋の中から小さな箱を取り出し、彼女に手渡した。
「開けてみて」
「これは、イヤリング?」
実は、一人で買い物をした時にプレゼントとして買ったのだ。紫のストーンが嵌め込まれたクローバーのイヤリングである。
「これを、わたしにですか!?」
「もちろんだよ!」
「そ、そんな、恐れ多いです!」
「いいから、ほら、つけてみて」
「で、でも」
「まぁ、ちょっとした記念としてね。」
頑なにつけようとしない彼女だったが、この言葉を聞くと恐る恐るつけるのだった。
「こんな感じでしょうか?」
彼女の右耳に着いたそのイヤリングは美しく輝いていた。
「うん、似合ってる。」
「なんか、恥ずかしいです。」
周りに人がいない電車内。窓から差し込む夕陽。
そんな夕陽に照らされながら頬を赤らめる彼女はとても美しかった。
少しは距離を縮めることができただろうか。
こうして、二人の休日は幕を閉じるのだった。
-つづく-
今日は恋愛チックな感じの話でした。もっと、ロマンティックに描けるようになりたいですね。




