2話:ハワイ旅行のはずだった②
(/・ω・)/言語の壁はすべて取っ払っています。なぜかって?
俺が英語できないからだよ!!!(胸を張って言うことではない)
翌朝。7時ごろに目が覚める。
普段は6時には起きているので少し疲れが出たのだろう。
昨日は長時間の移動からチンピラ討伐となれないこと尽くしだった。
なぜあんな事をしたのか。それは、あの人助けは結局とのころ自己満足だ。あの女性が無事に戻れているならそれでいい。
「せっかくハワイに来たんだ。昨日のことはいったん忘れてランニングにでも行くか」
大きく伸びをし、外出の支度を始める。
中学生の頃たまたま来店した紅華さんに“症状”のことを聞かれてしまった。それからこの生活が始まったのだが、思い出に浸るのはまた今度の機会にしよう。
今は頭を空っぽにしたい。
黒を基調とした愛用ランニングウェアに着替え、海沿いのコースを息が上がらない程度で走る。
地元の人も何人か走っていて、ランナー御用達のコースなのだろう。
視界いっぱいに広がる海はガラスが散りばめられたように輝いている。朝からこの景色を見られるのだからハワイまで来た甲斐があった。
「やべ、夢中で走ってたら結構な距離きちまった」
昨日夕食を済ませた店が中間地点になるほど走ってしまった。それでも何ら問題はないのだが。
「帰りは別の道で帰ろう」
海の見える道から1本陸側に入り走り始める。
時々スマホで道を確認しながらホテルを目指す。
途中、地図に「古代文明資料館」というランドマークが表示された。ふと気になり詳しく調べてみる。
ホームページをまとめるとこんな感じだ。
古代文明とは:
世界各地で発見されている遺跡を生み出した文明。その発見状況は様々で、地中に埋まっていたり洞窟の中にぽつんとあったり、海底に沈んでいたりと一貫性がない。また縄文時代の遺跡のように集落跡として遺っているわけではなく、どれも施設単体かある部屋を空間ごと削り取ったかのように見つかる。
この文明の研究で一番困ったことは、その古さにある。ある所で発見されたものは約1万年まえの地層から発見され、ある所で発見されたものはつい200年前に突如現れた記録が残っている。どう見ても同じ文明に属しているはずの物品や建築物が数万から数千年のタイムラグを持っている原因はわかっていないらしい。
余談だがハワイには奇跡的に全体の6割が残っていた当時の施設があったので、世界的に見ても規模の大きい資料館・研究所がある。
なぜ保管・研究しているのか:
現代の精心関連技術の確立に大きく役立ち、これからの技術発展に必要不可欠だかららしい。
2000年代頭にかの薫衣博士が精心力というエネルギーを現行の科学体系に組み込むことに成功して以来、精心力は武器から家電に至るまで活用されてきた。それでも精心力についてわからないことはまだあるし、古代文明の遺物ほど先進的な技術はない。
当時何があってこの高度文明が滅びたのかは解明できていない。しかし我々が今荒レ狂う飢餓に脅かされていることに変わりはないので、彼らの技術を糧にしていきたいということらしい。。
この手の資料館は日本にもあるが、ハワイは研究所が隣にあるため日本より規模が大きい。何となく行ってみたくなったなめ、ホテルに帰ったのち行ってみることにした。
部屋でシャワーを浴び、買ってきた朝食を食べる。日本とは違ったハンバーガーを販売している店があり、おいしそうだったので買ってしまった。
「ん!うまい。思ったよりさっぱりしてるな」
ハンバーガーの感想をつぶやけば、あっという間になくなってしまった。
食べ終わるころには10時近くになっていた。
「さて、そろそろ資料館いってみるか」
ジーンズ・白シャツ・薄手のジャケットと当たり障りのない恰好になった俺は案外近くにある資料館を目指して部屋を出た。
初めてこういう資料館に来たが思ったより奥が深いものだな。入ってすぐに古代建造物の外壁や何かわからないブロック、もともと扉であったであろう物などがショーケースに並んでいる。
それぞれに説明書きのプレートが置かれており、どれも丁寧に書かれている。
来場者に分かりやすく伝わるように、という気遣いが見て取れた。
古代文明について特別詳しいわけではなかったが十分楽しめるくらいに解説が充実していた。
順路の半ば程まで進んだとき、ふとある人物と目が合う。
「・・・」
「・・・」
深く、されども透き通ることを忘れない青色の瞳がこちらを見ている。
時が止まったかのような静寂を打ち破ったのは相手だった。
「あ、あなたは!昨日助けてくれた人!」
まさかの再会である。自己満足で助けただけにすっかり記憶から抜け落ちていた。
名前も顔も知らない男に助けられてどんな心境だったかは俺にはわからない。
ただ途中で先に帰らされたのでいろいろと思うところがあるのだろう。
心配そうな目で告げる彼女を安心させようと誇張なく伝える。
「あの後大丈夫でしたか?」
「あぁ、大丈夫でしたよ。こんななりですけど結構鍛えてるので。しかもあいつら見た目の割に貧弱でしたし」
「そ、そうですか。良かった~」
そういって胸をなでおろす彼女。
もしかしたら昨日からずっと気にかけていたのかもしれない。
白衣を着用しているのでここの職員なのだろうかと疑問に思っていると向こうから自己紹介をしてくれた。
「すいません、自己紹介もまだでしたね。私は 薫衣瑠璃。 隣の研究所で研究員をしてます。 」
「こちらこそ昨日は何も言わずに申し訳ない。改めて、方藤藍です。ついこの前高校を卒業して今は国衛隊に所属しています。」
微笑みながら言う彼女につられて自分の広角も少し上がってしまった。
「 ! 国衛隊の方でしたか。 通りで冷静な判断ができたわけですね」
「いやいや、所属といってもついこの前入ったばかりですし、あまり格好よくできませんでしたけどね…」
「そんなことありません! 十分助けてもらいましたし、とっても素敵でした。私と同い年とは思えない雰囲気でしたし」
持っていたバインダーを胸に抱き真摯に訴える姿は俺には刺激が強かった。
何が強いかって?
明るいベージュのスキニーパンツ・白のブラウスに科学者御用達の白衣を着ているかつ、出ているところが出いる美人が目の前で上目遣いをしている。
そんな状況が女性経験皆無の俺に刺激を与えない訳がない。
このままの雰囲気が続くと色々とパンクしそうなのでどうにか話の流れを変えることにした。
「女性に歳の話をするのもなんですけど、同い年なんですか?」
「はい、私もこの前高校を卒業して、今は父の手伝いでここに来てるんです。」
「手伝いで研究所に? しかもここ精心関連専門じゃないですか」
「卒業後はアルカナを活用した生活必需品を開発・研究したいと考えていたら、父の職場で研修をさせてくれる事になりまして。はるばるハワイまで来たというわけです。」
遠い異国の地でも同郷の人間に会うことはあるだろうが、まさかその人が研究員見習い的なことをしているとは。しかも精心技術という未知が多い分野で。
不思議な縁もあるものだな。
「まさか助けてもらった人が国衛隊の人だったとは驚きです。人生何があるかわかりませんね」
照明の光で黒く輝く髪をなびかせながらはにかむ姿に少しの間見とれてしまった。
どうにか鼓動を沈め、話を続ける。
どうやら向こうも同じことを考えていたらしい。
「そうですね、あそこで介入したのが俺でよかった。あのリーダー格のチンピラ一応“躰性能向上”持ちでしたから。」
「そうだったんですか!? 大丈夫だったと言っていましたけど、本当の本当に大丈夫なんですか?」
「お、落ち着いて」
「だって躰性能ですよ? 一時的とはいえ一般人を軽く超す出力ができるんですよ?」
興奮したからか思いのほか大きな声が出てしまい周囲の視線が集まる。
視線を感じて冷静さを取り戻した薫衣の顔は少し赤みを帯びていた。
「あー、一旦外出ましょうか」
「…そ、そうしましょうか」
資料館の外あるベンチに腰掛ける。
背後にある樹木が自然の日傘となっていて心地よい空間が出来上がってる。
「さっきは興奮してしまってすいませんでした」
「身を案じてもらえてうれしかったですよ。俺国衛隊でもちょっと特殊なところに配属予定なんです。高1の時点で知り合いに稽古をつけてもらっていたのでそこら中級スタヴェシアスくらいなら1人で何とかできますし。なので本当に平気です。」
「そんなに強いんですか。だったらあの物怖じしない雰囲気にも納得できます」
「はは、最初から信じてくれたのは薫衣さんが初めてだ」
冷静な分析の末、素直に信じてくれたことに少し面喰い笑いが漏れてしまう。
説明したことのある人が多いわけではないがほとんどの人間が疑いの目を向けてくる。
しかしその疑いも当たり前なのだ。
一般的に{下級・中級・上級}に分類されるスタヴェシアスはそれぞれ{1~5・20~50・200~300}人で対応するのが原則。強さは級の中でもピンキリであるが「確実に」討伐するための目安となっている。
(そんな原則を無視しているのが俺のいく部隊なんだよなぁ)
改めて自分たちの異常性を思い知り呆れている頭をリセットする。
「そ、そうですか。は初めてですか・・・あ!そうだ私のことは瑠璃と呼んでください。それと敬語もなしでお願いします!」
「なぜ急に・・・」
「せっかく同年代の友達ができたんですから。仲良くしましょう」
「…わかっりまs、わかった。よろしく瑠璃。じゃあ俺のことも藍と呼んでくれ。」
「わかりました。藍君」
「そっちは敬語直さないのかよ」
「これは癖みたいなものなので…。直せれば直します!」
そのセリフは直らないやつでは?と思いつつ言葉を飲み込む。
満面の笑みを自分に向ける彼女にそんな野暮なことは言えなかった。
そんなこんなで、その後話に花を咲かせるも彼女のタイムリミットが来てしまう。
早めの昼休憩で資料館に足を運んだところ俺に出会ったという。休憩時間はたいてい資料館を散策するほど古代文明のことが好きらしい。そちらの道も考えたらしいが祖父から続く研究家業を引き継ぐ方針に決めたんだとか。
その話をするとき微かに悲しみの色が見えたが。
瑠璃とのおしゃべりを終えて資料館を後にした。
特に予定を決めていない日だったので今は街に向けてぶらぶら歩いているところだ。
しばらく歩くと釣りスポットとして有名な海岸についたので、午後はゆっくり釣りにいそしむことにした。
「雑念を消しさり、釣り糸を通して海と対話するように」という釣り好きなじいちゃんの教えを実践してみたが驚くほど釣れなかった。
正面に広がる南の空が昼夜の境界線になる頃まで粘ったが結局ボウズだった。
「はぁ…ここまで釣れないことあるか? さすがに凹むぞこれ」
どうやら瑠璃との出会いに当分の運を使ったらしい。
「今日はおとなしく帰るか~」
若干ため息を吐きながら海に背を向ける。
その瞬間ふと後方から呼ばれた気がした。直感的に”何かが起こる”と感じるいつもの感覚とは違い、初めて感じる不思議な感覚。
日時も規模も分からない。それでもこの勘が外れたことは今までなかった。
初めての感覚が何を表しているのかはわからないが悪い感じはしない。
「何年か前にもあったな…あの時は確か東北の危険区域に中級個体の群れが出て避難勧告発令とかだったか。でも不幸な感じはしないんだよなぁ。」
物心ついた時から大きな出来事の起こりを感じ取れてしまう体質。感じ取った対象がどんなものでいつ来るのかは俺にも定かじゃない。
はぁ、旅行中に起こらないでくれ。頼むから。
藍の心の叫びは左腕の空のバケツに零れるのだった。
(/・ω・)/藍君の容姿ですが、濃い紺色(ほとんど黒)の髪・真っ黒な瞳をしていて、
身長175cm 体重64kg 2021年12月20日生まれ 18歳 となっています。
あとなんか”感じ取っちゃう系男子”な藍君です。
(/・ω・)/瑠璃ちゃんは、黒く輝く髪・瑠璃色の瞳をしています。
身長165cm 体重 ヒ・ミ・ツ(´・ω・`) 2021年9月10日生まれ 18歳
何がとは言いませんが「そこそこデカい」です。
第2話完読ありがとうございます。
感想・☆等々でやる気が激増しますので良ければお願いします。
引き続き読んでもらえるよう頑張ります。
それではまた次回~