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1話:ハワイ旅行のはずだった①

(/・ω・)/いつかハワイに行ってみたい今日この頃。

 天井から滴り落ちる水が顔にあたり、目が覚める。

 雨漏りか?と思いぼやける視界を必死に回復させピントを合わせる。そこには見知らぬ天井があった。


「まさか自分がこのセリフを体験する羽目になるとは。」


 父親の影響で見ていた作品のことを思い出しながら状況を整理していると、なにがあったのか理解できた。


 1週間と少し前

 実家の居酒屋で手伝いをしていると、常連である紅華(べにか)さんから突然飛行機の予約画面を見せられた。


「珍しいですね。旅行でも行くんですか?」

「いや、行くのは君だ。(らん)。」

「………はい?」


 思わず間が空いてしまった。

 そんなの当り前だ。

 40年近く前、奴らが蔓延ってから容易に海外旅行なんてできなくなってしまったからだ。比較的に日本などの島国は被害が少なかったとはいえ、人類全体では人口と土地の半分を失っている。

 しかも陸・海・空すべてに奴らがいる可能性があるのだ、おちおち長距離移動はできないだろう。

 まぁそれでも日本ハワイ間は安全な航路が確立されつつあるのだが。


「ずいぶん唐突ですね。」

「来月から君も正式にうちに所属となる。入りびたりの今と違って忙しくなるだろう。遊べるうちに遊んでおけ、という年長者からのアドバイスだ。」

「それに次にハワイに行くとすればそれは遊びではなく命を懸けて何かを守る時だ。」

「年長者って言ってもまだ24歳じゃないですか。」


 俺と6つしか年が違わないのに、ずいぶんと年寄り臭いことをいうものだ。

 パッと見、疲れ切ったOLにしか見えないほどくたびれている。せっかくの美人が台無しだ。

 そう見えるほに、俺では想像もつかない経験をいくつもしているのだろう。


「私にとって弟のように思う君には楽しく学生生活を終えてほしいんだよ。」


 そういってジョッキのビールを飲み干し、大きく胸を張り「おやじさん!お代わり!」とカウンターの向こうの親父に要求している。

 その場の雰囲気に流され、受け入れてしまった。

 それから旅行の準備をし、現地での計画を立てているだけであっという間に出発当日になってしまった。

 空港で両親と仕事を抜け出してきた紅華さんに見送られ空へと飛び立った。




 さらっとハワイ旅行をプレゼントできる紅華さんの経済力に脱帽しているとあっという間にホテルに到着した。

 その頃にはお天道様は就寝の準備を始めていた。

 なので夕食を繁華街の方に行って食べることにした。

 滞在するホテルは島の中でも軍事施設寄りにあるので飲食店を見つけるには少し東に移動しなければならない。


「普段のトレーニングに比べたらなんてことない距離だな」


 独り言をぼやいていると、住宅地と飲食街の境目にさしかかる。

 さきほどより賑やかになったのを感じ、旅行っぽいな~なんて呑気に歩いていると、物が大量に入っていそうなバッグを両手で下げた女性がいかにもなチンピラ4人に囲まれているのが見えた。

 

 「よくもまぁ人の往来があるところで出来るよな」


 女性の受け答えがあまりにオドオドしているものだからチンピラたちも行けると踏んだのだろう。

 空腹も相まって人をなめるように見る視線に嫌気がさし、気が付けば足が動いていた。

 チンピラたちが俺に気が付くころには彼女との間に割って入っていた。


「いつまでたっても集合場所に来ないものだから心配になってしまって。すいません、連れに何か用ですか?」


 前半は女性に、後半はチンピラ4人衆に目配せをしながら告げる。

なんてベタな台詞(ウソ)なんだと若干自嘲しながら改めて状況を確認する。


 建物を背にしている女性を男性4人が正面から囲い込んでいる。

 さらには「姉ちゃん今日は一人かぁ?なら今度こそ俺らと遊ぼうぜぇ~」と迫っている。


 中々ひどい状況だ。

 

 (ここで引いてくれれば楽なんだけどなぁ)と希望的観測を仕舞っているとリーダー格と思われるチンピラ①がすごみながら顔を寄せてくる。


「悪いな~兄ちゃん、その子俺らと遊ぶことになったんだ。さっさと荷物もって帰んな」

「って言ってますけど」


 先ほどから小声で「どうしよう、どうしよう」と慌てている女性に話を振る。

 ビクッと体を震わせたのち、少し間をおいてから大きく息を吸って答えた。


「毎度毎度絡むのやめてください!いい加減迷惑なんです!!」


 先ほどまでの雰囲気とは打って変わってはっきりと物申した彼女に俺自身も少し気おされてしまった。その目には絡まれているときほどの不安の色はなく、むしろ怒りの色が強く出ている。


「というわけで、助けてください!!」

「なんか吹っ切れたな…」

「今まで少し怖かったですけど、今になって怒りがわいてきました。」


 そんな言葉のラリーをしていると蚊帳の外気味になっていたチンピラ①が顔を真っ赤にして怒鳴り始めた。

「そうかそうか、それなら仕方ないなぁ」

「俺たち、少しばかり力には自信があるんだ」


 そういいながら肩を回し始めるチンピラ①。

 左足を踏み込み、右腕で大きく殴り掛かる。

(素人のそれだな・・・)と内心思いながら相手の右ストレートを躱す。

 相手の伸び切った右腕を掴みこちらに引き寄せながら背中に回し、足をかけて地面に伏せさせる。


「動くなよ。無理に振りほどこうとすれば肩を外すぞ。」


 チンピラ①を簡単に取り押さえたのを見てもなお殴りかかろうとしてきた。

 なので少々脅すことにした。


「いいのか、ここでこいつが怪我すれば当分の間威を借る対象がいなくなるぞ?」


 先頭に続こうとしていたチンピラ②~④を牽制するために告げる。

 今度こそ諦めてくれたみたいなので①を抑えたまま彼女に指示する。


「こいつら抑えとくから先に行っててください」

「え、でも。」

「とりあえずその荷物持って帰らないといけないですし」


 余裕のある笑顔を見せて言う。

 荷物と俺を交互に見て俺の意図を理解してくれたらしい。

 彼女がこの場にとどまり続けるのは得策ではない。

 途中何度か振り返りながら俺が来た方向に進んでいった。

 それを確認してから自分の下にいる①に問いかける


「お前さっき躰性能向上(パフォーマンスアップ)使おうとしたよな」

「・・・」

「別に”能力“を持っていること自体は問題じゃない。だがそれをこういう使い方したらダメだろ」

「・・・うるせぇ!どう使おうが俺の勝手だろ!おいお前らもう女はいねえがやっちまえ。うさばらしだ」


 先ほどまで固まっていた②~④が俺に殴りかかってきたので仕方なく①の拘束を解いて飛びのく。

 ここまでしても聞く耳を持たないようなのでそろそろ正当防衛(武力行使)に出させてもらおう。




「あ、もしもし警察ですか。いま〇〇通りの□□を曲がったところで不審者に襲われたんですけど。はい、殴ってきたので返り討ちにしちゃって。はい、分かりました。待機してます。」


 チンピラ①以外のやつは特に能力は持っていなかったので全員簡単にのすことができた。①もタフさはあったが動きが雑だったのでカウンターを入れたらあっさり気絶した。

 40年前、精心力(アルカナ)の濃度が急上昇したことで人間の身体能力が平均的に上昇するとともに5人に1人程の確率で”能力“に目覚めるようになった。

 その1つがさっきのチンピラが使おうとしていた「躰性能向上(パフォーマンスアップ)」だ。

 体内の精心(アルカナ)器官に貯蔵されている精心力(アルカナ)を消費してより身体能力を強化する能力。

 強化できる幅は訓練で大きくすることもできるが基本的に生まれ持ったままとなる。

 彼は能力保持者の中で最も多い”躰性能向上だけ”のようだった。


 正直見た目の割に弱かったので少し物足りない。

 こんな感想を抱くようになってしまったのも紅華さん達のおかげか。


「俺は紅華さんとの訓練なんかもやったから平均よりは強化できるけど、それでもあの面子だと”一般的“になるんだよな」

「というかあの人無事に帰れたかな。結構無理やり返しちゃったけど」


 気絶している彼らを壁に寄り掛からせ、独り言をぼやき、ここ十数分で起きたことを振り返りながら警察を待つのだった。




 警察に詳しく事情を説明し、身柄を拘束してもらった。ついでにおすすめの料理屋を聞いた。


「やっぱ地元の人のおすすめは間違いないな」


 腹を満たし、すっかり暗くなってしまった帰路につく。


「旅行で来ているはずなのに、そうはならない気がしてきた」


 これから貴重になるであろう休暇が既に危うい気配を放っているのを感じた。

 そんな俺の声は誰が効くでもなく、夜の空気へと溶けていった。



始まってしまった本編第1章。流れ的に誰が誰だか分かりにくなっています。ごめんなさい(-_-;)

登場人物の自己紹介イベントは次回を予定しております。


第1話完読ありがとうございます。

感想・☆等々でやる気が激増しますので良ければお願いします。

引き続き読んでもらえるよう頑張ります。

それではまた次回~

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