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6Ⅰ9~4回目の黒電話~(仮)  作者: 笹丸一騎
【島根編】3章【フランスと島根】
9/42

09,その人は偏食家?

二〇一〇年八月一日午後二時


俺は今、日本から約三十時間かけ、フランスは、マルセイユにあるホテルの前にいた。


島根の田舎から何故マルセイユ?と、疑問が沸く。自身もここまでする事に、内心驚いている。目的は勿論、あの電話について。


もう、誰かに相談しないと、気が収まらない領域までに到達していた。


それでも父や友人に話ところで、受け入れられる内容ではない事は、

百も承知。であるならば、フランスにいる祖父に、会うしかない。


その為俺は、家の店に訪れる錬金術士の中で、唯一、会話が成立する人物に相談した。


彼女は「ヴィヴィアン」っと、名乗る金髪の女性で、いつもキラキラとした長い髪を

一つにまとめ、赤い服と青いデニムの格好で訪れていた。


買う物も、いつも決まっている。一つ目は、祖父に教えてもらった「自家製の丸薬」。二つ目は、何の変哲もない「麦」。


丸薬については、彼女だけでなく、訪問する錬金術師の多くが買う。人気商品の一つ。が、俺は中身が何なのか知っているので、とてもじゃないけど、服用する気にはならない。


麦については、錬金術士が、何かと何かを調合する際、下地(したじ)になるらしいのだが、彼女は「食べる」為に、買うという変わった人だった。


いや、逆に変わっていない人などいない。寧ろ、飯の好み以外は、真面(まとも)な人。それ故に、俺は彼女に相談した。


彼女は普段、イギリスのロンドンに住まいがあるらしい。ただ、基本的には、ヨーロッパ各地を転々としているとか。また何故か、店に来る度に、彼女が訪れた各地の土産物を俺にくれた。


「何故、そんなに親切なんですか?」


そう、質問すると―――。


「ここの丸薬は、私の好みだからな」


成程―――自分が作っているだけあり、かなり嬉しい。

俺は―――食わんけどな。


さて、そんな彼女が、訪問したのは、二〇一〇年の七月頃の頭。その時も、インドの土産を持参して尋ねてきた。


不思議な体験については触れず、祖父の行方だけを話したところ―――。


「電話を借りていいか?」っと言われ、俺が了承すると、何処かに電話をかける。


「もしもし?ああ、私は元気だ」


「あの計画の進捗はどうだ?」


「―――そうか、引き続き頼む」


「それと、一人探してほしい御仁いる。特徴は―――」


彼女は祖父と面識があった為、何も言わずに相手へ特徴を伝えてくれた。すると、ものの五分も経過せず、祖父の行方が分かったという。


それだけじゃない、祖父と既に接触しているとか―――。

一体、どのような方法で?その疑問は尽きないが、この際、どうでもいい。


祖父と直接話せるそうなので、そのまま、祖父と話す事になった。


粗方、事の経緯を伝えると「直接話したい」との事で、場所と時間を伝えられた。


正直、わざわざフランスまで赴くのは、面倒ではあった。が、お金や航空チケットは、祖父が融通する事で、渋々了承し電話を切る。


「未来からの―――電話か」


隣で聞いていたヴィヴィアンは、ポツリと呟く。


「変な話ですよね?」


当然だ、いくら変人とはいえ、未来からの電話を信じる人など、いる筈もない。が―――。


「いや、そんな事はない」


やっぱ、錬金術士は変人だった。


「ただ―――思いの外、早かったな―――」


「えっ?それってどういう―――」


「すまない、もう時間だ」


そう、彼女は話を切り上げ、店を後にするのだった。


そして、今に至る。


ヴィヴィアンの発言は気になるが、変人の言う事と気にする事はない。


あれ以上に、変テコな発言をする客も幾度となく見ている。それよりも、当面の問題を解決しないと―――。


とはいえ、祖父と会うのも数年振り、会った回数も年の数もない。苦手ではないが、少しだけ緊張する。


俺は深呼吸心を行って、心を落ち着かせる。その後、ホテルの中へと入るのであった。


ホテルのロビーで会う約束をしていたが、有数のホテルらしくロビーがとてつもなく広い。


俺は辺りをキョロキョロっと、探していると―――。


(かおる)


渋い声で、俺の名前を呼ぶ声。その方向に視線を移すと、白い立派な(ひげ)(たくわ)えた白髪の老人。


サングラスで、顔はダンディー。一見、モテそうな風貌なのだが―――。


「相変わらずだな」っと、呆れた溜息が漏れた。


俺が何を呆れたか―――。


それは、何処で買ったか分からない、センスの欠片もない、自身を模したかのような―――祖父の顔がプリントされたTシャツ。


認めたくはないが、アレが俺の祖父である。その人が右手を軽く挙げ、こちらへ来いと促してきた。


ちょっとだけ、行きたくない想いを抑えつつ、祖父が居る場所へと近寄っていく。


「あれ?隣の人、日本人?」


祖父に意識を持っていかれ、それまで隣の人に気付かなかった。


和服を(まと)ったその女性は、祖父よりも遥かに、若く見える。


何処かで見た事があるような―――。


その女性は、俺に向かって会釈をしてきたので、こちらも同じように頭を下げたのだった。

挿絵(By みてみん)

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