【脱出】その1
フルダイブ型VRゲームソフト
『アトリビュート・バトルフィールド』
今、世界中で人気を博しているMMORPG。
王道のストーリーや高いゲーム性、隠しストーリーやクエストの数も数えきれないほどで飽きがこない。そしてなにより、スキルやステータス、職業などの自由度が高い。
そういった要素により発売から二ヶ月足らずで売上ランキング、人気ランキング、プレイ人口ランキング、その他etcといった数多くのランキングや賞を総なめ、紛れもない神ゲーとなった。
「一番の魅力は隠し要素の多さ。隠しクエスト、隠しモンスター、隠しアイテムに隠し職業まである、ね」
少年はそっとパソコンの電源を落とし、時計をチラッと見る。
「そろそろか」
ピンポーン
「きた!」
家のインターホンの音に少年は急いで荷物を取りに行く。
「はい、確かに。ありがとうございました」
「母さん!」
「あ、ひさと。お望みの物が届いたぞ」
「うん、ありがと」
「楽しんできな」
母親から荷物を受け取った少年、ひさとは自分の部屋に走って戻った。
「それじゃあ早速!」
ひさとはヘルメット型の機械を頭につけ、各種の設定を手早く終わらせベッドに横になる。
そして
「ゲームスタート」
意識はゲームの世界へ繋がった。
『ようこそ!アトリビュート・バトルフィールドの世界へ』
音声が響き渡り、久人は目を開ける。
「おぉぉぉ!ここがABFか!」
『最初にユーザー設定を行います。本名、年齢を入力してください』
「はいはい、えーっと本名は一鷹久人、年齢は16っと」
久人は慣れた手つきで入力する。
『確認しました。続いてキャラクター設定です。キャラクターメイキングを行います。スキャン開始ー完了。変更を行ってください』
フルダイブ型のゲームは顔や体に大きな変更はできない。髪型や髪色、目や眉毛などといったものがせいぜいだ。
「これでよし」
『プレイヤーネームを設定してください』
プレイヤーネーム、ABF内での名前。
「プレイヤーネーム…[イツマデ]かな」
『最後に職業設定とスキル構成を行います。職業はストーリーを進めてることで変更できますが、ユニーク職業の場合は変更不可能です。ご注意ください。スキルは5つまで選択可能です』
「確か攻略サイトによると、ここで表示される職業は人によって違うらしい。そして職業の大まかな分類によってストーリーが変わるんだったか。どんなものがあるかな」
そういって出てきた画面に表示された職業を見ていく。
「戦士や武闘家、騎士とかの近接職、魔法使いや陰陽師といった魔法職に、鍛冶屋、錬金術師、調合師などの生産職、盗賊、トレジャーハンターとかの斥候職…よりどりみどりだなぁ」
色々流し読みしていると、目についた職業があった。
「〈咎人〉?何だコレ?」
職業の説明欄を開き読んでみることにする。
〈咎人〉
ユニーク職業
分類 斥候職
彼の者は罪を犯し、独房にて自らの運命を嗤う。心を入れ替え、人と向き合った笑顔の裏に貴方がいる。故に彼は大罪を背負ってくれる者を探すのだ。
ステータスポイント
20ポイント獲得
スキル(強制選択)
《罪人》
NPCの好感度減少
一部NPCは効果なし
《詐称》
自身の職業、ステータス、スキルの表示を変更可能
《殺人》
プレイヤー撃破の経験値20%増加
モンスター撃破の経験値10%減少
《物語》
〈咎人〉に関するストーリー、クエストの誘発率増加
《対人》
人との戦闘時ステータス上昇
「いや、物騒だな!」
見た感じ、プレイヤーに対して強い職業だがデメリットもデカい。
「でも気になるぅ。これにしちゃお」
そんな軽い気持ちで選んだ俺はこの後少し後悔することになる。
「これでよし」
『確認しました。これより転移を行います。幸運を祈ります』
辺りが強い光に包まれ、目を閉じる。
そして再び目を開けると
「牢屋ーぁ!?」