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ただいままでの帰り道 ~魔王と異世界に放り出されたので家路を目指します~  作者: ふじきど
~第1章~ 本当の異世界・空飛ぶ島の冒険
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〝ステータス〟と呼べば。




  「──というわけで、この世界へとやって来たのだ。

   ズィーリエ殿から聞いた話では、アーヴ・ラーゲィは

   この世界に存在していた島とのことだが、

   元の世界に居た時に聞いた〝島そのものを転移させる〟という

   話とも合致するようだ」

  「はぁ~……!、この国にも色々な異能力を持つ

   別世界からの来訪者がいるけれど、そこまで特異な

   体験をしてきた人物はいなかったな……」



 コールが信じがたいものを見るような目でこちらを見てくるが、

 ミザリーもまたこの世界は信じがたいもので溢れている。


 おそらくこれからも、未知の出会いが有るのだろう。

 もしかしたら彼らには今後も世話になるかも知れない、

 そう考えてロインに包みを出すように言った。



  「そこで、この世界にやって来た際に

   空に開いた穴を塞いだ不思議な石があるのだ、

   今は役目を終えたのか粉末となってしまっているが……

   これについて何か知っているのなら

   何か教えてもらえないかと思ってな」

  「ふむふむ、見せてもらおうかな」



 ロインが腰の袋から包みを取り出し、

 コールたちの目の前で広げて見せる。

 そこには相変わらず青く輝く粉末と化してしまった

 〝願いを叶えるチンターマニ石〟が存在していた。

 


  「おお、綺麗なものですね!

   これが石として存在していたとしたら

   相当綺麗な物だったのではないでしょうか!?」

  「うーむ……確かにそうかもな。

   そんな石が存在していたって記録は無いけれどね……

   ──御伽噺みたいなものだったらあるんだけど」

  「御伽噺ィ?そんなもん聞いても仕方がねェだろうが」



 ロインはその話にあまり気が向かないようだが、

 ミザリーはどうにもその話が気になった。

 

 御伽噺や昔話というのは、過去の人々が教訓や真実を伝えるために

 口頭で伝えられるように残した物もある。

 只の作り話と断じるのは早計な気がしてならなかった。



  「その御伽噺、良ければ聞かせてはもらえないか?

   余はどうにも気になる」

  「いいけれど、今はこっちの話が先ね。

   と言っても、あとは君たちの能力とかを

   聞くだけなんだけどね。

   この国では所持している異能の危険性で

   滞在許可証を発行するか、場合によっては〝処理〟を行う

   ことになってるんだよ」

  「処理……?」



 その言葉に、何か得体の知れない危うさを感じたミザリーは

 思わずオウム返しに聞き返していた。



  「いやー、〝処理〟については話せないんだよなぁ。

   ともかく、君たちの能力について話してもらおうかな」

  「能力、と言われてもな……」

  「俺たちッて何か変な能力なんて持ッてないとしか

   言えないよね?姉ちゃん」



 怪訝な顔をしてこちらを見るロインに、

 ミザリーは何と返したものか考えた。


 リュウジに調べてもらったことでミザリー自身も知らなかった

 奇妙な能力が判明した、もしかしたらロインにも

 自身で把握していない何か特異な能力があるのかもしれない。



  「それについてなのだが……

   余には確かに妙な力があるようなのだが、

   その詳細については全く知らないのだ」

  「えッ!?姉ちゃん変わッた力持ッてるの!?

   な、なんで俺に教えてくれなかッたのォ!?」

  


 泣きつくように縋りついてきたロインを引き剥がしながら、

 ミザリーは言い訳のように捲くし立てた。



  「ええい纏わりつくんじゃないっ!

   余もそのことを知ったのは肉塊に操られた

   アバティ殿と対峙した時に初めてわかったのだ!」

  「そうなの!?それじャあ俺が知る機会は無かッたんだね……

   ごめんなさい姉ちゃん!俺の感情を優先してた!」

  「お前はいつも自分の感情を優先しているだろう……」



 若干呆れながらロインの言い分に返答していると、

 咳払いが聞こえて、現在事情聴取中だということを思い出した。



  「あー、仲がいいことは良いことなんだけど、

   今はこちらの事情を優先してもらおうかな。

   ……自分の能力がわからないみたいなことを言っているけど、

   どうやら異能力者なら、なんだか〝ステータス〟って言えば

   自分の状態はわかるみたいなんだけどね?」

  「そうなのか?それは全く知らなかった……」

  「それなら俺たちも、それで自分のなんだかんだが

   わかるッてのか?」

  「おそらくだけどねぇ」



 その情報は初耳だったので、ミザリーとロインは

 共に口にしてみた。



  『すてーたす!』



 ──部屋の中には気持ちよさそうに眠りこける

   アバティたちの寝息と、咳払いをして「失礼しました!」と

   告げるポムスの声だけが響いていた。



  「……何も起きない、なんというか、恥ずかしい……」

  「おいこらてめェッッ!!姉ちゃんに恥掻かせるために

   嘘言いやがッたのかゴラァッッ!!」



 詰め寄ろうとするロインをポムスが制しながら、

 コール自身は不思議そうな顔をする。



  「あれ、おかしいなぁ……

   出会った異能力者は皆、そうやって自分の能力を

   確認してたんだけどな……」

  「それは、余らが〝規定外の存在〟と言うことなのだろうか……?」



 暴れるロインを宥めながらミザリーは自分が思ったことを口にする。

 というよりも、想像がつくのはそれ以外に存在しえないのだ。

 〝普通〟に当てはまらなければ、自分たちが〝異端〟としか思えない。



  「そうなるのかな。

   でも困ったな、そうなると異能不明とは

   滞在許可証には記載できないから、

   君たちには発行できなくなっちゃうんだよなぁ……

   ちなみに無いと、買い物とか施設利用とかが

   ほぼ全部制限される、それで裏取引とかもあるから

   ボクたちが見回りしとかないと危ないんだけどねぇ」

  「そうなると……彼の協力を仰ぐしかないのか」

  「そうだねぇ……彼に来てもらって調べてもらうしかないねぇ……」



 もう会うことも無いかも知れないと思っていたが、

 よくよく顔を突き合わせることになる人物だ、と

 ミザリーは思った。



  「それでは、私が連れてきます!!」



 ポムスは姿勢を正すと、駆け足で船の中を走っていき──

 やがて全身を布で巻かれたリュウジが現れた。



  「何すか!?まさか空中でバイバイとかされるんすか!?

   確かに面倒が嫌で逃げようとはしましたけどねぇ!?

   だからと言って命を軽く見るのはどうなんですか!?

   やっぱり国境執行隊はおっそろしい組織──」

  「リュウジ・アグニ君!

   今ここでこちらの言うことに従ってくれたのなら、

   司法取引という奴で罪を免除しようと言ったら

   協力してくれるかな?」

  「何でも申し付けてください隊長さん!」



 もはや見慣れてきた変わり身の早さに、

 ミザリーはロイン以上に呆れることになる相手がいるとは、と

 いっそ感心していた。






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