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ただいままでの帰り道 ~魔王と異世界に放り出されたので家路を目指します~  作者: ふじきど
~第1章~ 本当の異世界・空飛ぶ島の冒険
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病室事変・2



  ガラガラと瓦礫が崩れる音と、騒ぎ立てる人声が聞こえて

 ミザリーが目を開くと、目の前にはいくつものベッドと

 腰を抜かしてしまったのか、その場にへたり込んでいる

 おそらく患者と思われる人々が大勢いた。



  「けほっけほっ、船は……止まったようだな……」

  「止まったというか、これ以上進めなくなったというだけじゃねぇかな……」



 すぐそばで逆さまになりながら事実を指摘するリュウジの姿に、

 全員の無事を確認しなければとミザリーは声を上げた。



  「ズィーリエ殿!ズィーリエ殿、意識はあるか!?」

  「けほっ……ちょっと起きるのは辛いですが~……

   意識はまだありますよ~……」

  「良かった……リュウジ殿はここで無事が確認できた、

   ロインはどこに行った!?」

  「俺ならここに居るよ姉ちゃんッ!!」



 瓦礫を跳ね飛ばしながら飛び出してきたロインに驚いたが、

 更に驚いたのはその口から血が垂れ流されていることだった。



  「お、お前っ……大怪我をしたのか!?

   なんだその吐血の量は!?」

  「オボロロロロ……なんが知んないげど、船が激突してがら

   ずっとこんな感じだよッ!!」

  「あいつ、ここに来る前に国境執行隊からキツイ一撃貰ってたよな?

   その傷が船の激突の衝撃で派手に開いたんじゃないか……?」



 おまけにロインの腕はところどころ凍傷になっている、

 即刻入院させられても仕方がない大怪我である。

 それでもなおこうして笑顔で応対している様子に

 いっそ恐怖が湧いてくる。



  「お前はとにかく安静にしているように!

   他には、アバティ、アベース!!そなたらは無事か!?」

  


 操舵室に話しかけるが、返答がない。


 最悪の想像が頭をよぎり戦慄するが、

 直後に操舵室から煙と共に2人分の影が転がり出てきて

 ミザリーの側へと瓦礫にぶつかりながら滑り落ちてきた。



  「ごほっ、げぇっほ……!

   ああ、何とか生きてんぞ……!」

  「兄ちゃんが守ってくれたっすから、

   あたしも無事っすよ、げっほげほ!!」



 これで船に乗っていた人物は無事が確認できた、

 ホッと息を吐いたミザリーは、部屋に飛び込んできた人物に

 あっ、と声を上げた。



  「ズィーリエ、無事か!?

   途中から会話が途切れ途切れになって心、配──」



 ボロボロになったズィーリエの姿を見て、国境執行隊の隊長コールは

 顔色を変えて駆け寄ってきた。



  「うおお大丈夫かズィーリエぇぇぇ!?

   何が起きたらこんなにボロボロになるんだ!?」

  「隊長!まさかとは思いますが一緒に連れ去られた

   この連中がズィーリエさんを痛めつけたのでは!?」



 連れ立って入ってきた女性隊員のポムスが、

 ミザリーたちを指さしながら険しい顔をしている。

 

 これは不味い事態である、このままでは自分たちは

 国境執行隊員を傷つけたという冤罪でしょっ引かれてしまう。


 ……アバティに関してはどう答えたものかわからない、が

 少なくとも自分の意志で傷つけたわけではない筈なので、

 少しでも刑を減らす手伝いが出来ればと考えた。


 経緯は様々あれど、彼らがいなければ船の操作が出来ずに

 自分たちは死んでいた可能性もなくはないのだから。



  「それについては、余からも説明したいのだが……

   信じてもらえるかはともかく、こちらのアバティ殿が

   謎の存在に操られていてな。

   その際に冷気を操る能力によって凍傷を負ってしまったのだ」

  「凍傷!?早く治療しないと体組織が腐ってしまうじゃないか!?

   早く処置をしてもらわないと!!」 

  「うむ、実際その状態でアバティ殿に憑りついていた

   喋る肉塊や襲撃してきた、きょう、しゅう……?」

  


 確か襲ってきた船は何だったかと記憶を漁っていると、

 リュウジが隣から助け舟を出してくれた。



  「そうなんですよ、本来なら軍部が所有しているはずの

   強襲揚陸艇に襲われて。

   その際に色々と助言してもらったり、俺たちが襲ってきた

   強襲揚陸艇を撃沈させるための手助けをしてくれたりと

   無理をされて……」



 全部が嘘ではないとはいえ、よくもまぁここまで口が回ると

 ミザリーが悪い意味で感心していると、コールは俄かには信じがたいと言った

 顔でこちらを見つめていた。



  「うぅ~む……その話、どこまで信じていいんだ……?」

  「この男、先程悪魔とやらを呼ぶためにズィーリエさんを

   騙そうとしていた前科があります!

   おそらく大半が嘘ではないかと!!」

  「ウオォ~イ!?

   待ってくださいよ、俺は真実を話しているだけなのに!?」



 全てが真実ではないだろうという言葉をぐっと飲みこんで、

 ミザリーはアバティを指し示した。



  「ズィーリエ殿に救われたというのは真実だ、

   謎の肉塊に襲われかけた時に、相手を拘束するという剣で

   肉塊をその場に釘付けにして余は助かったのだ」

  「その場に釘付けにする剣──〝標本プローベ・シュヴェールト〟か!!

   その能力は相手が異能力者であるときだけ、ズィーリエが使う能力だ。

   それを君たちが知っていて、誰も刺し傷を負っていないところを見るに……

   そのことは間違いなく真実のようだな……!」

  「なんと、そうでしたか!疑ってしまい申し訳ありませんでした!!」

  「姉ちゃんを疑うとがふざげでるのかでめェらッ!!

   オボロロロロ……!!」



 横から入り込んできたロインの姿にコールとポムスが 

 ぎょっとしていると、ポムスがこちらの様子に気が付いた。



  「はっ!?今気が付きましたが、他の皆さんも

   結構傷ついております!赤毛の彼女は右手が凍り付いてますし、

   そこの吐血している金髪男は体中凍傷だらけです!!」

  「言われてみれば確かにそうだ!?ズィーリエにしか

   気が向いてなかったから!!」

  「不法侵入者を見張る執行隊がそんなザルみたいな観察眼で

   大丈夫なのかよ!?」



 リュウジの指摘にバツの悪そうな顔をしたコールとポムスは、

 「とにかく!」と姿勢を正して告げた。



  「これはまた全員から話を聞く必要が増えたようだな!!

   とりあえず傷ついている者たちには入院してもらって、

   傷を癒してもらってから話を聞くことにしよう!

   今度は逃げ出したりしても、その傷では遠くに行くまでに

   間違いなく悪化してしまうからな!!」



 そう言われるが、ミザリーは周りを見回しながら尋ねる。



  「入院するのは全く以って同意だが……肝心の病院が

   こんな状態だぞ……?いったいどこに入院するのだ?」

  


 幸い瓦礫に潰されてしまったような哀れな犠牲者はいなかったが、

 病室は瓦礫の山が半ば流れ込んでおり、とても患者を増やせるような

 状態ではない。


 すると、コールがミザリーたちの背後を呼び刺した。



  「それは当然、ここである程度の処置をしてもらってから

   この上の島、ズィーデン島にある病院に入院してもらおう!!」



 この町に最初にやって来た時に見えた大きな島だろうか。

 あそこに行くことになるとは思わなかったが、ともかく今は

 素直に従った方が良いだろうと頷いた。






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