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ミザリーの行方


  ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 

 ロインはひたすらに大通りをけ抜けていく。

 どこへ行けばいいのかもわからず

 目的地もわからないが、

 ミザリーがさらわれてしまった今

 じっとしていることの方が

 許されない状況じょうきょうだった。



  「チクショウッ……!!

   クソッタレがッ!!

   なんであの時俺は

   すぐに姉ちゃんの部屋に行かなかッた……ッ!!」

   


 どれだけ後悔こうかいしても

 時間は戻ってはこない、

 しかしこれから起きるだろう

 悲劇はまだ止められるかもしれない。


 ロインはそこまで考えてから

 弱い意志を振り切るために頭を振った。



  「違うッ!!

   〝かもしれない〟じゃない、

   止めるんだッ!!

   でなきャ俺は、俺はッ……!!」



 自分自身をふるい立たせつつ

 己の顔にこぶしを叩きつけるロインは、

 大通りの喧騒けんそう昨日きのうまでとは

 違うことに気が付いた。



  「やめ……やめてくれ!

   マリア、なぜ刃物を振り上げるんだっ!?」

  「ナアマさん、お願い正気に戻って!?

   なんで首に手をかけるのっ……

   あっ……がッ……!」

  


 平和そのものだったアーヴ・ラーゲィで

 突然町民が襲われているという光景に、

 ロインは背筋を凍らせつつも走り続ける。



  「何が起きてやがるッ……!

   姉ちゃんがさらわれたのと

   関係あるのか?

   ……ええいわからねぇッ!!」



 ロインは手近な町民に駆け寄ると、

 襲い掛かっている相手に

 さやを思い切りたたきつけた。


 さやで殴られた相手は大きく吹っ飛び、

 砂煙を立てながら地面を転がる。



  「おいッ、

   なんでお前はおそわれてんだッ!?

   もしかして姉ちゃんをさらッたやつらと

   何か関係が──」



 ロインが襲われていた町民の肩に手を置くと、

 町民はその手を振り払って

 吹っ飛ばされた相手に駆け寄った。



  「アダ!アダ大丈夫か!?

   どうしてしまったんだ……

   どうして……」



 ぐたりとした相手を抱えながら、 

 町民はロインに厳しい目を向けた。



  「なぜ彼女を傷つけたんです……!

   なぜ……!!」

  「そんなもん当然だろうが!!

   お前から情報聞き出して

   姉ちゃんを助けるためだッ!!

   さあ言え、昨日きのうこのあたりを歩いていた

   俺の姉ちゃんを知らねェか!?

   赤い髪の毛が特徴的な

   童顔ッぽい美人だが……!!」

  「知りませんよそんな人っ!!

   私が目に入れるのは、

   愛しているのはっ!!

   アダだけなんですからっ!!」



 町民はそう言い放つと

 再びアダと呼ばれたおそい掛かっていたはずの相手を

 抱きしめて泣きながら名前を呼び続ける。



  「くそッ!何がどうなッてやがる……!?」



 ロインは困惑しつつも周りを見回す。

 そういえばと先ほど聞こえてきた

 声を思い出してみると、

 どの声も相手が豹変ひょうへんしたことに

 混乱しているような声が多いことに

 気が付いた。



  「……くそッ!!

   それだけじャ情報が足りねェ!!

   ほかに何かないか……!?」



 ロインは素早く考えて、

 ある推論すいろんが頭をよぎる。

 しかしその推論すいろんは根拠もなにもなく

 なぜ思い浮かんだのかすらわからない。


 しかしなぜかロインは

 その推論すいろんは的を射ていると考えた。

 そしてそれがあっていることを確認するために、

 一番近場の屋台〝タルタルフィッシュ〟へと

 急いだ。









 大通りを駆け抜ける間にも

 そこかしこから悲鳴や怒号どごうとどろき、

 町は阿鼻叫喚あびきょうかんを極めていた。


 

  「なんでそんなこと俺は思ったんだろうな……!!

   ともかく今は可能性があるなら全部調べるしか!!」


 

 ロインが屋台の通りまでやってくると、

 そこもまた地獄絵図じごくえずと化していた。


 屋台の店員らしき男が刃物を振り回し、

 それを押さえつけようと

 町民がとびかかり血が飛び散る。


 そのほかにも屋台の前には

 人形の首だけがごろりと転がっていたり、

 人の手だけが落ちていたりと

 あまりにも凄惨せいさんな光景が広がっている。



  「えッと、

   あの屋台やたいはどこだッた──

   ッ、あッた!!」



 〝タルタルフィッシュ〟の屋台やたいを見つけたロインは

 そちらへとけ寄り──


 思っていた光景とは違うものが

 目に飛び込んできた。



  「……なんだこれは、

   確か〝おおとまた〟とか言われていた

   からくり人形だッたよな?」



 そこに横たわっていたのは、

 頭部を半分砕かれたオートマタの残骸ざんがいだった。

 砕かれた頭の中は何も入っておらず、

 中身はこぼれたというよりも

 〝初めから何もなかった〟ように見える。


 しかし意外だったのはそれだけではなく

 今朝けさ会ったはずの店主の頭もまた

 砕かれていたということであり、

 その中身はがらんどうだった。



  「おッさんもがらんどう?

   ……気にはなるがともかく、

   あの小僧がいねェ……!」



 ロインは当てが外れたとばかりに

 他へと向かおうとすると、

 まな板の上に1枚の紙切れが

 置いてあることに気が付いた。


 ロインは周りを見回しながら

 その紙を手に取ると、

 そこにはどうやらミザリーと

 ロインに向けたらしい

 文章がつづられていた。



  〝手伝ってくれたお2人が、

   この手紙を読んでくれることを祈っています。

   初めに謝っておきます、

   僕はお2人に正体を明かしていませんでした。

   名前は言えませんが、

   僕はあるところから派遣されたエージェント、

   すなわち本物のスパイです。

   そしてここで得た情報を

   お2人にもお伝えしようと思います〟



 なぜ間諜スパイが自分たちに肩入れするのか、

 疑問はあったがロインは今はそれをわきによけて

 読み進める。



  〝この町は明らかに

   誰かが意図的いとてきに作った町です。

   その目的まではわかりませんでしたが

   何かがおかしいのです。

   今まで確認されていなかった海、

   それにもかかわらず騒ぎもしない町民、

   住民が謎の機関車から──〟

  「そんなことよりも

   姉ちゃんにつながる情報は何かないのかよッ!?」



 ロインは手紙を読み飛ばしながら

 情報を探し──


 そして気になる点を見つけた。



  〝──ですが、一か所だけ

   町の人間ですらおかしいと感じる

   場所がありました。

   それが町の中に立つ真っ青な建物、

   『ブルーマン・ショップ』です。

   この店だけが町の影響を

   受けていないようなのです〟

  「あの店……ッ!!」



 何か情報があるとしたら

 ブルーマン・ショップにあると

 ロインは確信し、

 手紙を腰の袋に適当に突っ込むと

 そのままけだした。









 町中が叫び声に包まれている中、

 ブルーマン・ショップの周囲は

 不気味ぶきみな静寂に包まれていた。


 ロインはそのまま店内に駆け込むと

 店主のダニエルを探す。



  「おいッ!!

   てめェどこに居やがる!!

   ネタは上がッてんだ、

   この町のことに詳しいか

   何か秘密みてェなモンを握ッてんだろうが!!

   姿隠してるつもりか!?

   さッさと出てきやがれッ!!」



 棚を回り込みながら

 店の中を探し回るロインの目に、

 なにかが映ったように感じる。


 そちらに目を向けると、

 そこにあったのは床に投げ出された足と──


 そばに広がる血だまりだった。



  「ッ!?」



 驚いたロインがそちらへと駆け寄ると、

 そこには勘定机かんじょうづくえに身を預けて

 足を投げ出したダニエルの姿があった。


 腹からは血が流れ続け、

 床に血の池を作っている。

 


  「ああ、お兄サンですかい……

   よかった、間に合ったようでやすね……」

  「なんだてめェ……

   これはどうなッてやがる……」



 ロインは困惑しながら

 ダニエルの腹の傷を見る。

 傷が深いらしく手で押さえていても

 なお血が流れ続けている。


 手の施しようのないことは

 素人のロインにもわかった。



  「ははは……

   ものの見事に不意を突かれやして……

   結果は御覧の通りでさぁ……」

  「誰がそんなことを──

   いやそんなことはともかく、

   姉ちゃんはどこにいる?

   てめェは一枚噛んでるんじャねェのか?」


 

 ロインの質問に、

 ダニエルは脂汗を浮かべながら笑った。



  「お兄サンが来たということは……

   〝選ばれた〟のはおじょうサンの

   方だったようでやすね……」

  「その言い方はやッぱ何か知ッてやがるなッ!?

   選ばれたッてのはいッたいなんだ!?

   姉ちゃんは今どこにいる!?」



 ロインはダニエルの胸ぐらをつかみ、

 締め上げながら詰問する。

 ダニエルはその様を見ながら

 笑顔を崩さずに言った。



  「お話ししなきゃあならないようでやすね……

   わたしの正体ってやつを……

   ははは……

   その前にお伝えしやしょう……

   おじょうサンがいるのは……」



 ロインは先をうながすように

 ダニエルに顔を近づける。



  「この町の中央、

   〝蒸気スチーム供給所ジェネレーター〟でやす……

   ただし、何も対策を聞かずに行けば

   間違いなくお兄サンは死ぬことになりやす……

   そうなればおじょうサンは誰も助けられやせんぜ……」

  「……ッ!!

   ……ッくそが!!

   早く言いやがれッ!!」


 

 その言葉にダニエルはうなずき、語り始める。

 


  「わたしは……

   〝教会〟の坊主ぼうずなんでさぁ……」

  「坊主ぼうず……?」






※いつも読んでくださりありがとうございます。

 ここで皆様にお願いがあります。

 この小説を読んでいただいて

 面白いと思ってもらえれば、

 ぜひとも感想、ポイントなど

 入れていただけると嬉しいです。

 皆様からのメッセージを

 お待ちしております!

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