ことの起こり
一話当たりの長さはそこまで長くはありません。息抜きに
読んでみていただけると幸いです。
─常によい目的を見失わずに努力を続ける限り、最後は必ず救われる─
─ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ─
いつか、遠くない昔。ある“神”が生まれた。
やがて数多の生命が祝福を受け、
世界は“神”に見守られた。
─ことの起こりは「ホシッド」と呼ばれた世界の端っこ、
東の果ての小さな村の、そのまた小さな一軒家からだった──
『「姉ちゃん、行ってきます!」
家の中からはつらつとした声が聞こえてきます。
「いってらっしゃい、遅くならないようにね」
送り出す言葉が聞こえると同時に扉が開き、
1人の青年が飛び出していきました。
青年の名前はロイン。
健やかな顔に金色の髪が揺れる、
17歳の好青年です。
飛び出した彼の後に続いて出てきた女性の名はミザリー。
赤味がかった茶色の長髪に、
幼げの残る顔立ちの、
18歳になるロインのお姉さんです。
「よう、ロイン!」
「おはようさん、狩りなら気をつけなよ!」
村を出る道すがら
村人からの挨拶に手を振ってこたえたロインは、
出入り口で父親のカルへと
「親父! 狩りに行ってくる、大物待ってなよ!」
と言って駆けていきました。
ロイン、ミザリー、そして父親のカル。家族3人は畑を耕し、
山で狩りをし、いつもと変わらぬ
慎ましいながらも幸せな暮らしをしていました。
日が東の空高くに差し掛かったころ、
山中でロインは唇を尖らせていました。
「ちぇっ、ウサギ一羽もいやしない。
何かは獲って帰らなきゃ……
でもなんだ?
ここまで何も見つからないのも珍しいな……」
肩にかけた弓をいじりながら歩いていると、木々の向こう側──
村の方角に煙が見えました。
「ん? 昼飯の準備かな。
でもずいぶんと早くないか?」
あれか、炭焼きかな
などと考えていると、
その煙は見る間に大きく、
激しさを増していきました。
「…あれ、なにかまずくないか?」
嫌な予感に駆られたロインは
見晴らしの良いところまで走り、
その理由に気づきました。
煙の出どころ、
村のあるところにちらちらと赤い光が見えるのです。
「村が…、村が燃えてるっ!! 火事だ!!」
ロインははじかれた様に山を下り始めました。
???「すべての始まり、というのは少し違うかもしれませんが
ここが始まりなのは違いないでしょう。この先どのようなことが
待ち受けているのでしょうか…?」
ロイン「誰だてめぇ!?」
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