表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/240

名前の付け方


 日が暮れ始めた頃、ネルギーさんたちが戻ってきた。誰も欠けていないし、見た感じ怪我もない。ひとまずホッとし、早めの夕食にしつつ報告を聞くことになった。


「倒した進化スライムは5体。朝のと合わせて8体いた事になるな。それぞれ魔法持ちなんかもいたが、問題なく倒せた」


「おー」


「一応隅まで調べたが、警戒はしておいてほしい。あと、ドーム内は2階と地下があった。どうもその地下に例のものがあったようで、物はもうないが魔力が濃い場所があった」


 ちらっとネルギーさんがクエンさんを見る。クエンさんが頷いた。


「スライムが食い尽くしたのか、他の魔物はいないよ。ただ今後はわからないね」


「放っておくとまた進化しそうな感じ?」


 ニルバ様が尋ねると、首を傾げた。


「どれぐらい摂取したら進化するのかわからないけど、少なくとも異常なほどの魔力量ではないよ。自然でも見かけるくらいだから。捕食者がいなくなって、他のが入り込んでくる可能性はあるね」


「ああ、そっちか。了解した。調査には今のところ問題ないということかな?」


 ネルギーさんとクエンさんが頷く。


「お前たちはどうする?」


 問われ、俺はコクシンとラダを見た。どちらも俺の反応を待っている。興味がないといえば嘘になるが、無理はしたくない。


「ここで待ってるよ」


 ネルギーさんは「そうか」とだけ言った。


「美味しいご飯を作っておくよ」


 ちょっとおどけて言うと、皆から笑い声が漏れた。


「確かに、美味いな。このスープ、昨日煮込んでたやつだろう?」


「そうだよ。ニルバ様手持ちの鶏肉がもらえたんで、つみれも作ってみたんだ」


「つみれ?」


「この丸いの」


 包丁でひき肉にして、生姜と塩で味を整えた。昨日の残りのネギも入れた。ちなみに軟骨は入っていない。俺が苦手だから。コリコリ美味しいらしいんだけどね。肉まんに入っているたけのこも苦手だ。


「うん、美味しいね。手間をかけて作るなぁとは思ってたけど、この味なら待てるね」


 ニルバ様にも好評のようだ。

 コクシンとラダも美味しそうに食べてくれている。味噌か醤油が欲しいところだ。ファンタジー的に醤油の実とかありそうだけど、さすがそこまでは無理か。お米はギリありそうだけど。


 夜の警戒は、できるだけ俺たちで受け持つことにした。せめてできることはしないとね。開けているので、近づいてくればすぐにわかる。





 翌日、ネルギーさんたちとニルバ様はドームへと向かっていった。御者さんは馬やスーベラガの世話。俺たちは午前中寝て、昼から周辺の警戒と食料の調達をする。と言っても奥へ入ると危ないので、野営地が見える範囲でだ。


「あ、キノコだ」


 木の根元に茶色いキノコを発見する。キノコは毒持ちがあるから危険だけど、俺は鑑定があるからな。どれどれ。


『笑いキノコ

食べるとしばらく笑いが止まらない。焼くと美味しい』


 これ、だめなやつだよな? でも笑うだけならいいんじゃないんだろうか。美味しいって書いてあるし。一瞬心惹かれるが、やめておく。


『ロサボー

赤く透き通った傘を持つキノコ。麻痺毒を持つ。鎮痛剤の材料。火にさらされると爆発的に増えるので、管理には注意が必要。食べられないこともない』


 うお、これも危ないな。そしてなにげにチャレンジャーな鑑定。俺の意識によるものだろうけど、これは毒判定してください。興味が湧くじゃんか。ラダに持って帰ってあげよう。


 それにしても、この世界の名前ってどうやって付けられてるんだろう。名は体を表す的なのもあれば、謎の言葉のときもある。古代言語とか、方言的なものかな。


「ああ、大体は新種の発見者が付けるんですよ」


 野営地に帰って、手が空いていた御者さんに聞いてみたらそう答えが返ってきた。


「名前そのままのものは、冒険者が付けることが多いですね。有用そうなものには、自分の名前を付ける方もいますし」


「へぇ~」


「確か坊っちゃんもいくつか名付けておいででしたよ」


「えっ! ニルバ様魔物にも詳しいの?」


 驚いて聞くと、いやいやと手を振られた。


「遺跡にですよ。実際、ここにも名前が付いていないんです。〇〇村の近くの遺跡、みたいに呼ばれることが多いようですよ」


「な、なるほどー」


 とりあえずの管理しかされてないと思ったら、名前さえ付いてない場所だったとは。まぁ、遺跡で重要なのは出てくるアーティファクトであって、そこから読み取れる歴史はどうでもいいみたいだからなぁ。


「じゃあ、ここもニルバ様が名前付けるんですか?」


「どうでしょうね。今後も立ち寄る必要性があると判断されれば、お付けになるかもしれませんね」


「そうなんですね」


 名前も付いていない、人に知られてもいない場所はたくさんあるんだろうか。ちょっと気になる。ニルバ様じゃないけど遺跡巡りも楽しそうだなぁ。


 聞けば名前を付けると言ってもどこかに登録するわけではなく、「僕がこういう名前を付けました」で、それが広まれば名前として認知されるのだとか。なので地方ごとに違う名前で呼ばれているものは多いとか。じゃあ、鑑定はどうなんだろう。今のところ名前がたくさんあるものは出てきてないけど。今いる場所で呼ばれている名が出るんだろうか。というか、居場所把握してんのか、鑑定さん。


 遺跡の方に目を向けて、鑑定を使ってみる。発動しないな。街とかにも使ったことないな、そういえば。ちょっとだけ近づいて、崩れた一軒を鑑定してみる。


『廃屋

崩れてから年月が経ったもの』


 見りゃ分かるよ! と、思わず突っ込みたくなるような文章が出た。そう上手くはいかないか。まぁ、これで歴史が知れてしまうとそれはそれで困る。


「レイト。ウサギ捌き終わったぞ」


 ぼーっと考えていたら、コクシンが来た。今日の獲物はウサギだ。


「お、ありがと。焼くのはまだ早いな。ニルバ様に預けといて」


「もうお願いしてきた」


「そっか。じゃあ、ラダ…はなにか作ってるみたいだし、鍛錬でもしていようか」


 コクシンがコクリと頷く。今のところ野営地に人を襲うような魔物はやってきていない。クエンさんが言うには遠巻きにはしているらしい。魔力を使い切らないように気をつけつつ、ちょっと練習でもするか。


 コクシンが剣を振り飛ぶ斬撃の練習をしている。ネルギーさんに比べればスピードが足りないが、最初の頃より随分コンパクトになっている。

 俺は石つぶての威力を上げる練習だ。数が増えると、操作が難しくなる。うーん、矢じりを飛ばす感じにしたいんだけどな。木に埋まったつぶては、少し尖っているだけだ。最終的には炸裂弾にしたい。


「そういえばレイト。お風呂は入らないのか?」


 とりあえず終了なのか、コクシンが剣を収めながら声をかけてきた。


「あー、風呂なぁ…」


「内緒なのか?」


「いや、そういうわけでもないけど」


 遠征に出てから入ってないんだよなぁ。のんきに風呂に入るのはどうかと思うし、俺たちだけ入るって訳にもいかないだろう。そもそも、湯に浸かる習慣自体あまりない。


「気に入ったの?」


 聞くと、「そうじゃなくて」と視線を逸らした。


「寝る前に体を拭うだろう? レイト、ため息ついてるからさ」


「…え、あ、俺? 俺が入りたいんじゃないかってこと?」


「違うのか?」


 小首を傾げられ、俺は思わず「うわぁ」とうずくまってしまった。気づかれてるとは、っていうか、態度に出てたとは思わなかった。


「まぁ私も入りたいし」


 どっちなのよ。どっちでもいいか。夕食時にお風呂用意してもいいか聞いてみようっと。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
笑いキノコ…笑い続けるの…しんどいよ…?
[良い点] コクシンよく見てるな 捨てられるのがそんなにいやかw [一言] レイト その改造魔石食いそうw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ