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浄化してみる

 さて、どう説明したものか。


 ふいにポンとラダが手を叩いた。


「思い出した! たしか師匠がそんな感じのことを言ってた気がする。なにか悪いものだけを除去するのが浄化だって」

 

「そうそう。腹を壊したりする悪いやつね。で、それを取り除くことができると、食べられるようになる。かも?」


「なるほど。キレイにするって意味か?」


 コクシンの言葉に、ウンウン頷く。


「目に見えない汚れを取る感じかな。でも高いんじゃあ、とても使えないね」


「うーん」


 ラダが腕を組んで首を傾げている。


「どうした?」


「聖水は使えなくても、浄化の魔力はどうにかしたら使えるかも」


「浄化のスキルがあるってこと?」


「ううん。えーっとね、素材を混ぜるときにね、例えば聖水なら浄化の魔力を意識して注ぐんだ。回復薬なら治れ〜っていう魔力」


「へぇ。じゃあ意識せずにただの魔力なら?」


「それでも出来るけど、効果は落ちるって」


 ふぅん。その辺は初耳だなぁ。ばぁちゃんは魔力を注ぐとは言ったけど、細かくイメージするとは言ってなかったと思う。まぁ、それはスキル持ちじゃないと出来ないことだから、詳しく言わなかっただけかもな。


「じゃあ、回復薬に毒になれ~ってするのは?」


 何を言い出すんだとばかりにコクシンがこちらを見る。


「失敗する。違う魔力を注ぐと、ぼふんってなるんだよ!」


「経験談か」


「うん。あ、いやね? 売れそうなもの作ろうとしたとき、効果分かんないのがあってさ、ぼふんって」


 大丈夫、ビックリするだけだから。とか笑っている。


「? スキルで分からないのか?」


「そうそう。名前と、材料とレシピ。作ろうと思うとそれが頭に浮かんでくるんだ。効果は代々師匠に教えてもらうんだよ。大体のは名前で分かるんだけどね」


 なにか危ないスキルだな。効果とか副作用とか表示されないのか。それとも本人の意識か?


「あ。そういえば、『だからワシが教えたもの以外は作るな』って師匠に言われてたんだった」


 テヘペロしてんじゃねーよ。師匠ー!この人野放しにするの早かったんじゃないんですかねー!?


 まぁそれはさておき、浄化の魔力か。浄化を付与する…っていうのとはまた違うんだよな。浄化のイメージを送り込むってことかな。イメージ…うん、俺が土魔法使ってるときとそう変わらないってことか。


 じゃあ、俺も浄化のイメージを送ったら発動するのか?


 目の前にはさっき処分した内臓がある。


『トトジカの内臓

寄生虫がいるので食べることはできない』


 では実験。


 浄化のイメージを…難しいな、寄生虫を除去するイメージにしてみよう。むむむむ。ダメだ、魔力は動かない。鑑定してみたが、文面は変わっていない。


「何してんの?」


「ああ、ラダ。これにちょっとその浄化の魔力使ってみてくれない?」


「うぇぇ~」


 スプラッタな穴の中にラダが引き気味の声を上げる。


「いいからいいから」


「良くないよ、もぉ」


 ラダはそれでも見ないように腕だけ伸ばして、うぬぬぬってしてくれた。


「うーん、ダメっぽい。溶け込んでいかない」


 溶け込むねぇ。鑑定してみたが、変わりはない。


「じゃあ、コップの水にやってみて?」


「それならなんとか…」


 コクシンが差し出してくれたコップに、ラダが自分で生活魔法で水を注ぐ。そしてガラス棒で混ぜ始めた。手の中に現れたガラス棒に目をパチクリさせると、笑って「魔力で作っている」と教えてくれた。えー!? ばぁちゃん普通に木の棒使ってたけど…。


 カラカラとしばらく棒とコップが触れる音が響いた。


「うん。出来たかも!」


 一応鑑定。


『魔力水/浄化

浄化用の魔力が込められた水。』


 うん。ただの水ではなくなっている。


 では掛けてみましょう。パシャパシャ。


『トトジカの内臓

時間が経っているので食べるのはオススメしない。』


「ふぉぉ」


 キターー!! 出来てるじゃん、浄化!


「どう?」


 コクシンが聞いてくるのに、Vサインをしてみせる。まぁ通じないわけだが。サムズアップは通じるのに。


「出来てる! さすがにこれは食べないけど。卵とか、普通に肉に掛けてもいいかも。あとは味が変わらないかとか、いろいろ実験はしてみるけどね!」


 魔力を体に取り込むことになる。普通に回復薬とかにもラダの説明通りなら入ってるはずだから、多分大丈夫だろうけど。


「ラダ、しばらく実験に付き合ってね」


「え、うん、いいけど。それ相手にずっとやるの?」


 視線が穴の中に向かう。


「しないしない」


 埋めちゃおうね。さっさと土を被せて、ないないしとく。


 ふ〜。それにしても、思わぬところから使える技が見つかったな。っていうか、普通に回復用の魔力込めたら回復薬代わりになって、薬草いらないんじゃね? 


 ご飯の準備をしつつ、ラダに聞いてみる。


「そんなの考えたこともなかった。じゃあ、あれは聖水になってたの?」


「いや、魔力水っていう名称になってた」


 ちなみにラダにはすでに鑑定のことは伝えてある。多分俺が乱用するので、隠すのは無理。一応口止めはしてある。


「じゃあ、別物か。効果が同じなら、どっちでもいいが」


 コクシンが真剣な顔で肉を焼いてくれつつそう言う。


 そうだな。身内で使う分にはどうでもいい。


「鑑定はそこまで出なかったのか?」


「うーん、あとでもう一回見てみる」


 多分鑑定って、俺が知りたいと思ったことが出るから、効果とか人体に対する影響とか、考えながら見たら出るんじゃないかと思うんだよね。




 色々やってみた結果がこちら。


 魔力水は作って数分で効果がなくなる。ただし効果が発動したあとは持続する。

 体内に入れても大丈夫。食品の味も変わらない。ただし大量に摂ると、人によっては魔力酔いする。

 魔力水は本来の薬より、だいぶ性能が落ちる。薬が50回復するとして、魔力水は1回復…みたいな。ラダが作る手間と時間を考えると、使用は微妙。

 ではなぜ浄化は十分な成果が出たか。これが1だとしたら、聖水の効果が異常なのかも? つまりはコクシンの「消す」って言葉が冗談でないかもって話。


 そもそも聖水の使い所だが、コクシンによると、魔除けというか厄除けというか、神聖な場所に撒くものなのらしい。人や物に使うというものではないらしい。

 呪いは祈祷師の分野で聖水は使わないという。なんでそんなことに…。「え、ゾンビは?」と聞いたら、燃やすらしい…。ちなみに回復薬で倒せるか聞いたら、アホの子を見るような目で見られた。なんでさ、定番じゃんよ!


 ということで、そもそもの使用方法に認識違いがあったようである。


 鑑定がないからだろうか。使ったら効果がありすぎたから、周りに撒くだけになったのかもしれない。人には使うな、みたいな教えが徐々に浸透していったのかもしれない。


 まぁ難しいことや常識はおいておき、魔力水程度の濃さなら食べても問題なしということさえ分かれば良し! 作り置きが出来ないので、その度にラダに作ってもらわないといけないが。


 とりあえず次の街に着いたら、卵を買おう。そんで卵ごは…そうだ、米ないんだった。TKG出来ないじゃん。


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― 新着の感想 ―
毎日魔力水作ってたらそのうちにレベルアップして聖水作れるようになるかもしれないね
[良い点] ラダの幼女ムーヴおもしろかったですw レイトは保育士さんか何かにジョブチェンジしたのかと思いました 幼女の教育に動物の解体とか内蔵を握らせるのは、やはり猟奇的ですね [一言]  レイト「内…
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