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プレニアヌダンジョン一階層

小説の『レイトの〜』二巻が発売されました!

よろしくお願いします。

 一階層に出る魔物の鑑定結果がこちら。


『ネズミウサギ

ウサギ顔のネズミ。体長一メートル〜二メートル。ロップイヤータイプで、顔だけは可愛い。

攻撃方法は、噛みつき、体当たり。

ドロップアイテム/魔石、皮、カフレ(プレニアヌダンジョン二階層限定)』


『ウォーターキャタピラー

水色の幼虫。体長二メートル。一瞬、顔とお尻見分けがつかないが、トゲがある方が尻。

攻撃方法は、噛みつき、体当たり。

ドロップアイテム/魔石、尻のトゲ』


 正直旨味がない。魔石は小さいし、皮もトゲも大したお金にはならない。ちなみにネズミウサギのは『毛皮』でも『革』でもなく、『皮』だ。なんか生の鶏皮みたいなぶよぶよしたものがドロップする。楽器に使うらしい。食用じゃないのでがっかりだ。

 みんなが早々に通り抜けてしまうのにも頷ける。まぁ、俺達は予定通りここで慣らし運転。


「せいっ!」


「えーい!」


「とりゃ!」


 まあ、なんだかんだみんな一撃で終わらせていた。俺も石弾一発で仕留められる。さすがにこれでは訓練にならないだろうか。


「あ、芋発見!」


 岩棚を一つ上に移動すると、茶色い乾いた台地に緑がぽつんと伸びているのが見えた。ほかにいわゆる雑草的なものは生えていないので、見つけやすい。ただしレア。

 岩棚同士は階段でつながっていて、一つの岩棚は五メートル四方くらいから、十メートル四方まで大きさはまちまち。足を滑らせると普通に落ちるので注意が必要だ。

 周囲の警戒を頼み、緑の根元を握って一気に引っこ抜く。ごろっとこぶし大の芋が三つ出てきた。すると手にしていた茎と葉っぱはしおしおと枯れていき、霧散していく。


「何回見ても不思議な光景だよね」


 俺と一緒にしゃがみ込んでいるラダがつぶやく。まったくだ。ガチガチの土というよりは岩なのに、なぜか芋ができている。そして抜くと上は消えてしまって、芋だけが残る。


「まあ、しばらく芋に困らなくていいけど」


 ちなみに芋の鑑定結果はコチラ。


『芋

じゃがいも。煮てよし、焼いてよし、潰してよし』


 時々饒舌になる鑑定さんがめっちゃシンプル。

 ダンジョン産の芋ではあるが、普通に外で採れる芋と何ら味にも性能にも変わりはないらしくて、冒険者ギルドでは『まあ、買い取りますけど……』レベルの代物なんだとか。不作のときは買い取り価格が上がって、みんなが殺到したらしい。


 そんな芋を魔法鞄にしまい終えると、コクシンがこちらを振り返った。


「そろそろ移動しないか? これでは訓練にもならない」


「そうだねぇ。カフレのこともあるし、二階層に行こうか」


「二階層もここと同じだよね」


 ラダの言葉に頷いた。

 シュヴァルツがぴょいっと俺のフードから飛び降りて、ミルコにライドオンする。シュヴァルツが足で指す方向にミルコが走っていき、そこにいたらしいネズミウサギをぶっ飛ばした。


「ミルコ、先々行くんじゃない」


 コクシンが眉を寄せるが、ミルコは「大丈夫! シュヴァルツに一体だけのところ教えてもらってるから!」と答えた。


「一体だから大丈夫というわけじゃない。私にも教えてくれ。ずるいぞ」


 いや、コクシン、自分も暴れたいだけかいな。というか、自前の気配察知あるでしょうが。


「ちょっと〜、僕達置いていっちゃわないでよ」


 ラダがコクシンを追いかけて岩棚をひょいっと飛び降りた。お前も俺を置いていくのか……。みんながショートカットしていくのに対し、俺は階段を使って降りていく。微妙に俺が飛び降りるには高いんだよな。ほら、傾斜がついてるから、ちょっと余分にジャンプしないとだからさ。

 あ、芋みぃーつけた。ほりほり。


「レイト! 横にポップしたぞ!」


 不意に下からコクシンの声が聞こえた。顔を上げると、俺のいる岩棚の端っこでちょうどネズミウサギがリポップしたところだった。垂れ耳ウサギのかわいらしい顔に、灰色のネズミの体。長い尻尾をびたーんとすると、こっちに飛びかかってきた。


「石筍!」


 壁際に避けながら、ネズミウサギの落下地点に石の筍状のものを生やす。


 ピギィ!


 目論見通り、ネズミウサギは喉から腹のあたりをグッサリえぐられて、断末魔をあげながら消えていった。石筍に肌色の生皮が引っかかっている。うーん皮か。指で摘んで魔法鞄にしまう。感触がどうもな〜。


「大丈夫かぁ?」


 コクシンの声に手を振り返す。

 しかし、石筍は強力だけど、見た目がエグいな。だが使わないと成長できないのも事実。今後のためにも串刺し頑張る。


 さいわいそれ以降は底につくまで魔物はリポップしなかった。心配ないと見たのか、誰も上に戻ってきてくれなかった。いいけどさ、対処できるし。下で楽しそうに狩りをしているのを見ながら降りるのは、ちょっと寂しかった。


 道順通りに進み、二階層へと続く階段にたどり着いた。谷底をほぼ真っすぐ進むだけでたどり着ける。地図を見ると、脇道はあるがどれも行き止まりだ。


「ほんじゃ、降りますか」


「お腹空いたね」


「えーもうそんな時間?」


 思い出したようにラダが言うのに、ミルコが「ミルコも!」と、手を挙げた。


「二人の腹時計がそうならそうなんでしょうよ。じゃ、階段でご飯な」


「「いえーい」」


 アンデッドダンジョンと同じく、ここのダンジョンも階段は安全地帯になっている。中ほどに踊り場があって、そこで休憩したり泊まったりすることができるらしい。スペースが取れないと階段で寝ることになる。まぁ、まだ一階層なので寝泊まりしてる人はいないだろう。


 岩を削っていたような階段を降りていく。ちゃんと明るいのがうれしい。しかもアンデッドダンジョンと違い臭くないので長居ができるし、食事にも問題なさそうだ。

 踊り場には誰もいなかった。


「なに食べたい?」


「僕芋料理!」


「ミルコお肉!」


「え、私は、なんでもいいぞ?」


 へっ!


「シュヴァルツが魔力くださいって言ってる」


「ほーい。じゃあシュヴァルツはお好きにどうぞ。あとで、果物出してあげるね」


 シュヴァルツがミルコから降りて、俺の足に巻きついた。特に痛みもなくそれで魔力の供給ができるらしいので、好きにさせておく。肩の方に来ないのは、今から俺が料理をするからと邪魔にならないようにしてるんだろう。ええ子や。


「っていうか、買ってきたものもいろいろあるんだけどなぁ。まあ、いいか。俺も食べてみたいし」


 味に違いはないというが、せっかくなので芋料理を作ってみよう。えー……。宿でガレット食べたので、じゃがいものガレットにしてみようかな。あとは暴れニワトリの肉でも焼くか。


「手伝うよ」


 と、コクシンが言ってくれたので肉の方を任せる。ぶつ切りにして塩を振って串に刺すだけだ。ラダには火の用意を頼む。俺が簡易かまどを作って、ラダが火を仕込む。ミルコは、待機。


 芋の皮を剥いて、千切り。塩を振って置いておく。その間にシュヴァルツ用に魔力豊富な果物を出し、ついでにジュースを人数分用意した。水気を切った芋を、油を引いたフライパンに放り込みぎゅーっと押し付けながら焼く。胡椒もかけようかな〜。


「うわ。こんなところで飯作ってるよ」


 靴音が聞こえてきたと思ったら、冒険者三人組が降りてきた。男一人女二人のパーティーだ。


「ほんとだ。地上に帰ればいいのに」


 あれ。これ、バカにされてます?


「おねーちゃんが料理作れないだけでしょ。そのくせあったかいもの食べたいとかうるさいんだからぁ。ーーごめんね? 悪気はないのよ、この人」


 脇を通りながら女の人が軽く頭を下げた。


「だって上でおいしいご飯食べればいいじゃなーい」


「お前、ほんとダンジョン向いてないな」


「はいはい。急がないと夜までに帰ってこれないよ! 携帯食だよ!」


 小突き合う男女の背中を押しながら、声をかけてくれた女の人はペコっとした。騒がしくしながら階段を駆け降りていく。


「やっぱり珍しいのかなぁ」


 美味しいご飯を食べたいだけなのに。


「私達のは魔法鞄を持っている前提の行動だからな」


「あーねー」


 コクシンの言葉に、そういえばそうだねと頷く。じっくり火を入れた芋を、気合とともにひっくり返す……なんてことはせず、一旦お皿に移してからフライパンに戻すという安全運転。ここで落としたら俺は泣く。蓋をして待ちましょう。


「それでも、こうやって食材が採れるんだから、作ればいいのにね〜」


 ラダが剥いた芋の皮を持ち上げた。俺が作ったペールにぽいっとする。生ごみは一つにまとめておいて、街に戻ったときにごみ捨て場に持っていく。健気なスライムが処理してくれるので、投棄は無料だ。


「うーん。ライモンさんが言ってたみたいに、食事にそれほど興味がない人が多いんだろうなぁ。というか、ダンジョン内でのんびりしてる事自体が珍しいのかもね」


 お金を稼ぐためやランクアップのために走り回っている中で、景色キレイだね〜とかのほほんとしてるんだから、そりゃ目立つわ。


 そうこうしている間に芋のガレットが焼き上がった。火で炙っている串肉はまだもうちょっとかかりそうなので、先にいただこう。四つに切り分けて、それぞれお皿に盛る。


「はい。シュヴァルツには果物ね」


 いつものテーブルとイスを出し、ランチタイムスタート。踊り場を半分ぐらい占領しちゃってるけど、通行できるスペースはあるからヨシ。


「「「いただきま~す」」」 へ〜。


 フォークで一口大にしてパクリ。きれいに焼き色がついている芋は表面がかりっとしていて美味しい。胡椒がいい味を出している。バターを入れてもうちょっと塩味を出してもよかったかもしれない。


「美味しい! 小麦粉のもいいけど、これはお腹に溜まりそうでいいね」


「上にいろいろ載せたいね〜」


 ラダは満足のようだ。ミルコはなかなかいいことを言うな。今度やってみよう。


「肉も焼けたようだ」


 コクシンが席を立って取りに行ってくれる。もちろん暴れニワトリの串焼きも美味かった。脂が美味いんだよ、暴れニワトリ。ダンジョンで鍛錬したら、また暴れニワトリクエストに挑みたいものだ。

お読みいただきありがとうございます。

皆様のおかげで、1月30日小説の二巻が発売されました。

https://gaugau.futabanet.jp/list/work/e6jy3M10y3fFHKv54GypKO0sP/novels/2

お手にとっていただければ幸いです。


いいね、感想、誤字報告ありがとうございます。

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ネズミウサギのドロに、カフレがこの階層では落ちないのに表示されてるのに違和感。 二階層でだけって知らずに潜ってこの表示だと、どれだけ倒しても落ちないから鑑定スキルは虚偽を表示するということになるのでは…
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