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レッツ制作

 実際道具を作ってみよう!ということで、ハリーさん馴染みの金物屋にやってきた。

 ジョレンはクワをちょこっと変形させただけで作れる。何なら水抜きの穴を開けてもいい。錆びにくくて安い素材でお願いします。

 天秤は肩にかかる棒を工夫してほしい。あと、左右のバランス大事。ザルじゃなくて籠でも使える。


 とかいうのを、もう捨てるというガラクタで作ってみせる。土魔法でぐにーっとするのを驚かれた。固形の土を出すのしか見たことないらしい。


「レンガを作ったことはあるけど、こんな風に魔法を使うなんて…」


 金物屋にいた土魔法を使える人が、まじまじと俺の作った皿もどきを見ている。まだ薄くはできないし、表面もざらついているので実用には向かない。


「要は土を扱うんだから、泥でも石でも砂でも出せると思うんだけど」


 ところで土魔法というのは、そのへんの土を掻き集めているのか、無から生まれているのか、という疑問があった。答えはどっちもだった。外で土があればそこから引き寄せるし、室内で土がないと土そのものを生み出す。なのでプロセスの多い中のほうが、魔力消費が多い。


「砂も出せるのかい?」


「うーん、理屈としては出せるはず」


 砂はそういえばまだ出したことがないな。

 手のひらの上に力を集めて、砂、…砂漠、いや砂丘の方がイメージしやすいな。さらさらのー砂!


ざらーー


 手から茶色い乾いた砂がこぼれ落ちた。


「あ。すいません、散らかしちゃった」


「あーいや、それはいい。それよりこれはどこの砂だ? 赤土か?」


 金物屋の親方が不思議そうにこぼれた砂に指を通している。あー、砂場の黒っぽい砂のほうが良かった? そのへんよく分からん。


「現物見ながら出せば、同じようなのが出せるかも」


「いくらでも出せるのか?」


 ギラリと目が輝く。


「まさか。限界はありますよ。それに、同じ性質を持っているかは知らないし」


 レンガを作ったことがあるという店員に目をやると、う~んと腕組みをした。


「人によるとしか言いようがないね。脆くて使えなかったり、時間が立つと消えてしまう人もいたよ」


「そうなんですね」


 そもそも教えているところがないので、他の人がどれくらい使えるのかも、みんな知らない。そんで、近くの人の魔法を参考にするから、魔法=残らない現象になる。火魔法を見て学べば、土魔法も消滅してしまうのかもしれない。のかな?


「まぁまぁ。魔法のことはさておいて、このジョレンとやらは作れそうですか?」


 ヘリーさんが話を戻す。親方は「んむ」と頷いた。


「こっちは問題ない。鋳潰した鉄でも作れるから、価格は抑えられるだろう。天秤とやらは作ってみんとわからんが、強度はどうなんだ?」


「材質によるとしか。うーん。どうせなら猫車の方が便利かなぁ」


 首を傾げながら呟くと、「それはどういったものですか!」と肩を掴まれた。ハリーさんに。ハリーさん、購買担当だけあってか道具に興味津々だ。

 紙に、コレコレこんな感じの人力荷車だよ、と説明する。


「へぇ。引っ張るんじゃなくて押すのか」


「これ普通の四角い箱じゃだめなのか?」


 親方も興味を示してきた。いや、うーん、どうなんだろう。狭い道でも運べるようにあのサイズなんだろうけど、形の理屈は知らない。


 とりあえず作ってみようじゃないかとなった。


 昼休憩を過ぎて、一旦ハリーさんとヘリーさんがギルドに戻っていった。夕方また来るというので、俺はこのまま説明係として残る。


 ガンゴンと鉄板を伸ばしていく。

 この世界の製鉄技術とか、鍛治技術はどれくらいなんだろうな。前の世界のもよく知らんから、分からんな。

 そういえば『鍛治』のスキルがあるんだっけ。どのへんをフォローしてるんだろう。


 そして出来上がった、俺の絵に酷似した猫車。いや、早いな! 俺の「こんな感じの」というふわっとした説明でよく作れたな!


 では実践。


 持ち手を持って、押してみる。親方が。俺だと身長の関係で無理があるのでね。


「おぉ~」


 車輪1つでちゃんと動く。木の車輪にカエルの革を巻いたものだ。やっぱり衝撃吸収は大事。手を離すと、ちゃんと3点で立つ。手で押しても、グラグラしない。

 次は物を載せてみる。いきなり鉄の塊とか積んだ。


「軽い軽い」


 どんどん物を積む。山になったところでバランスを崩して横倒しになってしまった。


「積み過ぎですよ」


「うむ。そのようだ。しかし手で一つ一つ運ぶより、随分楽になるな。小回りも利きそうだ。バランスを取るのに慣れは必要だが、これは売れるぞ!」


 ということで、売り出すことになった。はやっ。


 親方と店員は、改良点や材料をどうするかと話し込んでいる。まぁ下手にバキッといくと、怪我をするからね。荷重がかかる箇所をチェックし、どんな素材がいいか検討していく。ファンタジー素材が使える分、面白いものができるんじゃないかな。


 そんなことをしていたら、ギルドの二人がやってきた。出来上がった猫車を見て感嘆していた。ヘリーさんが依頼書に手を加えて、これ分のお金も出してくれることになった。この世界に著作権とか特許権とかないので、初めにくれる分だけになる。それでも結構な収入だけど。


 出来上がったジョレンとかを、いくつかギルドに置くようにする。メンテナンス込みで、金物屋からのレンタルということになった。又貸しになる形だが、保全を考えたらいいんじゃないだろうか。


 「また面白いもの考えたら、来いよ」と上機嫌で親方に見送られ、一旦ギルドに向かった。ヘリーさんが作ってくれた依頼の受理と報告を行う。布袋に入ったお金をもらった。中身が金貨だ。何気に初めて見たかもしれない。


 嬉しくてハリーさんの元へ向かった。防具を買おう。

 胸当てと小手、すね当ての革鎧のセットだ。


 ついでに魔法鞄があるのか聞いてみた。ものが物だから金庫にあるのだとか。金貨150枚とか言われた。遠い道のりだ。


 ダンジョンで見付けるのと、金貨を貯めるの、どちらが現実味があるだろうか。


 

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― 新着の感想 ―
[良い点]  細かい設定が、ストーリーの中で自然に組み込まれていくから読みやすい。
[一言] 「これ普通の四角い箱じゃだめなのか?」 土とかを入れた場合、前に45度-60度傾ければ中身を流してだせるけど箱の形だと 90度から120度つまり、縦にひっくり返すぐらいのつもりで傾けないと中…
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