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雑談からの思わぬ展開

 案の定筋肉痛が苛んできた。寝る前に回復薬飲んだし、宿のベッドでも寝たのに。今日一日ゴロゴロしてたい。でも一泊分しかお金払ってないし、お腹も空いた。


 ぎこちないロボットのように階段を降りる。

 宿の朝食は、安定のスープとパンだった。そういえば、この世界ってソーセージとかベーコンないのかな。まだ見たことがない。干し肉と塩漬け肉はある。ベーコンと目玉焼き、食べたいなぁ。作り方は…頑張れ俺の脳みそ。


 宿を出て、今日はブラブラすることにする。休みも必要だ。と言いつつ、娯楽がないのですることがない。結局冒険者ギルドに行って、ぼんやり人間観察することにした。


 やっぱり剣を持っている人が多い。今居る人達は、余裕がある人達なんだろう。依頼を取り合わなくても、仕事に就ける人だ。装備も充実している。

 俺も革鎧ぐらいは買わないといけない。あと、強い弓を引きたいから弓懸もほしい。靴もそのうちサイズが合わなくなるだろう。

 お金はいくらあっても足りないなぁ。

 かといって、危険な依頼を受ける気もないけど。




「あれ。今日は見学ですか?」


 ボーっとしていたら、職員さんに声を掛けられた。この間のツリ目の獣人の受付してた人だ。


「あ、はい。昨日疲れちゃって」


 苦笑すると、「ああ、聞いてますよ」と職員さんも苦笑を返してきた。


「ヨロヨロと君が入ってきたもんで、すわ何事か!と緊張が走ったとかなんとか。いや、見れなくて残念でした」


「…あははは」


 そんなことになってたのか。ざわめいているなとは思ったけど、疲れててそれどころじゃなかった。そういえば、思い出した。


「あの、昨日依頼主さんにお礼だって報酬金とは別に、お金を少し渡されてしまったんですけど、もらってきてよかったんですか?」


 恐る恐る聞いてみる。規約違反だと言われたらどうしよう。


「ああ。少額なら問題ないですよ。もちろん冒険者側から要求するのは、アウトですが。あと、追加で仕事を要求されることもありますが、ギルドを通していない依頼は関与できないので、詐欺などに注意してくださいね」


「ふぉぉ。なるほど。気を付けます」


 そういうこともあるのか。ついでにこっちもしてよとか言われたら、断りにくそうだけど、仕事だもんね。溝掃除の依頼主さんは優しそうだったけど、追加の仕事が実は犯罪まがいのものだったとか、洒落にならない。


「ふふ。その様子じゃ、しばらく溝掃除は受けてくれなさそうですか。好評だったんで、期待の声があったんですが」


「う。うーん。もう道具もないし…」


「? 道具ですか? そういえば、なにか変わったものを使っていたって報告があったね」


 いや、怖いな。情報網どうなってんだ。ビビると、どうも天秤を担いで行ったり来たりしている俺が、目立っていたらしい。まじか。

 実は今朝、ゴミ捨て場を見に行ったのだ。昨日仕事終わり、スライムに食べられないようゴミ捨て場の端の方に置いてきたのだが、2つともなくなっていた。

 誰かが持っていったのか、スライムが出張してきて平らげたのか。

 それを話すと、フムと彼は頷いた。


「そういう道具があれば、もっと依頼を受けてくれるんでしょうか」


「どうでしょうね。少なくともザルよりかは効率上がると思いますけど。この街なら常時溝掃除の依頼ありそうだし、ギルドで貸し出したらいいんじゃないんですか」


「ギルドで?」


 目をキランっとさせて、職員さんが詰め寄ってくる。


「え、ええ。冒険者は荷物になるもの持たないし、各家で用意するのも負担だろうし、いや、安く作ってもらえれば、それこそ各家に常備しといてもいいんだけど」


 溝が周りにある家なら、依頼するにしろ自分でするにしろ、便利な道具は常備していていいと思う。

 大きくギルド所有と彫っとけば、借りパクもないだろう。

 ギルドも依頼主も冒険者も、いい事尽くめだ。


「ふむふむ。ちょっと上と話してきていいですか?」


 あれ。話大きくなってきた?


「いや、勝手に進めてください」


「そういうわけには行きませんよ。アイデア料は払います。道具の制作にも付き合って頂きたいですし、ちゃんと依頼という形でお願いします」


「ふぁい…」


 圧が凄い。そんなに依頼滞って困ってたのかな。まぁ俺も一回すればもう勘弁してくださいってなったもんな。下手な討伐よりしんどいかも知れん。


 獣人の職員さん、ヘリーさんというらしい。ヘリーさんがお話している間、俺は地下の購買を覗くことにした。


「こんにちは」


「いらっしゃい」


 店番はこの間と同じ、眠そうなお兄さんだった。ついでと言っては何だけど、名前を聞いてみた。ハリーさんというらしい。


「あれ、さっきの職員さんと似た名前ですね」


「ん? ああ、ヘリーと面識があるのか。弟だよ」


「んえええー?」


 いきなり衝撃の…いやそうでもないか、事実が明かされた。兄弟って、あれ、耳…。

 俺の視線が頭上を彷徨ったのに気付いたのか、ハリーさんは苦笑した。頭に手を当てて、髪をぺちゃんとさせる。するとそこにピコンと耳があるのがわかった。


「普段は髪で見えないみたいだね。別に隠しているわけじゃないよ」


 確かにハリーさんはふわっとした髪質だから、隠れちゃってたんだなぁ。そう思いながら改めて見てみると、目付き以外は似ている気がした。

 ついでに失礼を承知で、なんの獣人なのかを聞いてみた。


「クマだよ。よく見えないって言われる」


「クマ!」


 大きくもないしモッサリもしてない、丸っこくもないけど、クマなのか。


 よく勘違いされるけど、と説明してくれた。そもそも獣人は獣の能力を引き継いではいるものの、体格は普人(普通の人間)よりなんだとか。なので、ネズミだから小さいとか、トラだから肉しか食べない…みたいなことはないらしい。


 そういうもんなのか。ちょっと変な期待をしていたようだ。ちなみに、耳や尻尾を不用意に触るのはやっぱりアウトらしい。まぁでも普通の人でもいきなり耳触られたらアウトだよね。


 勉強になったところで、ヘリーさんが降りてきた。昼食がてら話をしようということになった。面白そうだと、ハリーさんも付いてくることになった。店番は?と思ったら、普通にドアを閉めて鍵をかけていた。


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― 新着の感想 ―
瓦もだけど盗まれてないだろうか スライムが片付けたことにして現実逃避してる?笑
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