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おすすめ武器は?


 ラダの装備は翌日以降に決めることになった。先に得意武器を見極めようって話になったからだ。

 戦闘系のスキルを持っていなくても、経験次第でスキル化することがある。初めてでも武器を手にしたときに、馴染む感じがするものはスキル化する可能性があるのだとか。なので、ギルドの訓練場で一通り武器を扱わせてみることにした。もちろん、全く不向きという結果になるかもしれないけど。ついでに俺とコクシンもやってみるつもりだ。戦闘系のスキルをいくつも持っている人もいるしね。


 さて、ということで購買で買うものは、コクシンの剣ということになる。ぶっちゃけなまくらでもいい。スケルトンとか、打撃のが効きそうだし。


「それならあの中だな。ここで売ったときに持っていたのを買い取ってるんだ。初心者用のが多いが、稀に中クラスも混じってるぞ」


 ギルド長が指差したのは、樽の中に乱雑に入れられた剣の束だった。なんかこういうのマンガとかで見たことあるなぁ。魔剣とか混じってないだろうな。


「ん? そういえば、コクシン。それの前の剣ってどうしたっけ?」


 コクシンが首を傾げる。


「さぁ。中に入ってるんじゃないか?」


 魔法鞄を指差す。どれどれ。


「あ、あった」


 ちゃらーんと魔法鞄から前に使っていた初心者用の剣が出てきた。あれ? ということは、剣買う必要ないんじゃない?


 すんっとギルド長が表情をなくした。


「これだから魔法鞄持ちは…。ワシの見せ場がないじゃないの」


 見せ場ってなんだろう。まぁ、せっかくだから1本買っておいてもいいんじゃないかな。砕く用に、コクシンに重量重視で選んでもらおう。


「あ、思い出した」


 コクシンがなにかに気づき、初心者用の剣を鞘から抜いた。途中からポッキリいっている。


「あー、そうか。折れたから買い直したんだっけ。忘れてたわ」


 そうそう。それで今のかっこいい剣になったんだっけ。何でも置いとくと、こういうことになる。


 ちなみにこっそり樽の中の剣を鑑定してみた。残念ながら魔剣はなかった。聖剣もなかった。なにか憑いてるのもなかった。本当に残念です。


「お、これなんてどうだ?」


 ギルド長が奥からなにか持ち出してきた。筒状のものに持ち手がついている。70センチくらいの黒い棒。


「なんですか?」


「これはな、こうして魔石を嵌めて、ここを押すと」


 持ち手のボタンを押す。


 ぽひゅっ。


「火が出る」


 うん、それチャッ○マンだね。生活魔法の着火と同じくらいの火が、筒の先でチラチラしている。本体の大きさに比べて火がしょぼい。


「生活魔法は使えますよ?」


「まぁ、待て。次はこの火の魔石だ。これを嵌めて押すと」


 ぼうっっ!!


 筒の先から火柱が出た! 火災報知器が感知しちゃうレベル。火炎放射器か。というか、室内で危ないよ、ギルド長。


「あ、うん。すごいけど、これをどうしろと?」


 あまり驚かない俺に、ギルド長はちょっと悲しそうな顔をした。ちなみにラダとコクシンは目を丸くしている。俺にリアクションは求めないように。


「ゾンビは火が大敵だ。火魔法がないなら、こういうのもありじゃないかと思ってな」


「おお、なるほどー!」


 そういえば、図鑑にはそんなことが書いてあったな。消臭剤のことしか考えてなかった。うーん、これなら俺やラダでも扱えるかな。


「ただし、燃費が悪いからいくつも魔石を用意しておく必要がある。その点、君らならいくらでも持ち込めるだろう」


 買う気になったところで、そんなマイナスポイントが告げられる。まぁ、コスパがいいならもっと流行ってるよな。持ち歩くにはちょっと大きいし。


「でも、お高いんでしょう?」


 魔導具って、基本高価なイメージがする。


「まぁそれなりにはするが、これは売れ残ってるからちょっとはお安くできる」


 紙に書かれた値段を見せてもらう。俺らの装備ほどではないけど、即決で買えるもんではない。


「この辺で火の魔石って手に入れられましたっけ?」


「そうだな。このあたりだと…2日ほど馬で行ったところにある沼地に、火吹きカエルがいるな。集団を相手にしなければ、君らのランクでも討伐できる」


 カエルかぁ。お手々にカエルがいるから、なんとなくやだけど、背に腹はかえられない。もちろん魔石は買うことができるが、量がいるなら自前で揃えたい。訓練にもなるし。


「じゃあ、とりあえず魔石を狙って行ってきます。それで確保できたら、それを買うってことでどうでしょう?」


 提案してみると、すんなり「じゃあ、そうしよう」とギルド長が頷いてくれた。


「あ、こんなところにいた」


 部屋の外からの声に振り返ると、受付嬢がドアのところにいた。


「もう閉める時間なんで、出てくださいな」


「お、もうそんな時間か。じゃあ、これは仕舞っとくからな。用意ができたら言ってくれ」


「わかりました」


 ギルド長に頷き、みんなで部屋の外に出る。騒がしかった酒場もだいぶ落ち着いていた。いつの間にか結構な時間が過ぎていたらしい。コクシンの予備の剣も次回ということになった。


「それじゃあな」


「はい。今日はありがとうございました」


 ギルド長は手を振り、2階へと階段を上がっていった。また今から仕事なんだろうか。大変だなぁ。受付嬢と挨拶を交わし、ギルドの外に出る。


「なにかやることがどんどん増えてくな」


 ちょっと覗いて見る程度の軽い気持ちだったのに、いつの間にか本格的にダンジョンアタックをすることになっている。まぁ、アンデッドと戦ったことはないし、たとえ1階層で断念することになっても、いい経験にはなるだろう。準備も含めて楽しもう。




 えー、そんなわけで日々やることがいっぱいです。


 忙しいのはラダだ。アンデッド消滅薬を作ってもらわないといけないし、冒険者業もこなさないといけない。Fランクはすぐに失効してしまうからね。なので、研究と依頼を交互にこなすことにした。当然火の魔石狩りにはまだ行けていない。


「うーん。おかしいなぁ。何でできないんだろ」


 数回目の試薬消滅に、首を傾げるラダ。失敗するとボフンと消えてしまうので、分かりやすい。分量が違うのか、魔力を込めるタイミングが違うのか、成功しない。


「素材はこれだけでいいんだよね?」


 俺の問いに、「うん」とラダが頷く。


「それは合ってる。込めるイメージが違うのかなぁ」


「イメージねぇ。ラダってアンデッド見たことある?」


「ないよ」


「俺もないんだよね。1度見に行ってみる? その方がイメージしやすいかもよ」


 うーんとラダが腕を組んで考え込む。相手を特定したものを作るのは、難しいのかな。それとも聖属性だからだろうか。いや、回復薬とかは普通に作れているんだから、単純にレベルというか経験が足りないだけかな。


「試してみたいこともあるし」


 回復薬自体は効くのかとね。


「うーん。今日できなかったら、考えてみる」


「そっか。樹液は足りそう?」


「感覚的にはほんの少しでいいはずなんだけど…。もうちょっと増やしたほうがいいのかなぁ。いや、回復薬の…」


 ブツブツとラダが思考の海に溺れていく。こうなるとしばらく戻ってこない。


 さて、俺はどうしようかな。今日は研究の日。コクシンは庭で馬の世話をしたり、剣を振り回したりしている。


 あ、そうだ。精霊の雫の持ち運び方を変えよう。せっかくいじったけど、太陽もどきから石を外す。太陽はまた仕舞っとこう。こういうの好きな人がどこかにはいるだろう。よく考えたら、普通に袋に入れて持っとけばいいんじゃん。ということで、ちっちゃいお守り袋みたいなのを縫い縫いする。あ、クリスマスツリーの枝の欠片も入れとこう。出来たものを首から下げる。可もなく不可もなく。おかしい。俺には美的センスとやらがないのかもしれん。


 諦めて次にすることを考える。


 うどんを作ろう。醤油も出汁もないが、食えなくはないはず。ボウルに小麦粉を入れる。塩水をちょっとずつ入れていく。混ざってきたら手でこねる。体重かけてこねる。うむ。体重が足らない気がする。コクシーン! 鍛錬にどうかね? バトンタッチして、俺は味付けを考えよう。そういえば、丸干しがあったな。これで出汁っぽいのを取ってみよう。肉も焼こう。薄切りにして塩生姜焼き。適当な野菜サラダも付けよう。


「レイト。これいつまでこねるんだ?」


 あ、ごめん。忘れてた。濡れ布巾を被せて休ませておく。あとなんだっけ? 伸ばして切るのか。棒がないな。ゴソゴソ。きれいそうなのがないのでレイトチックで作る。ただの棒なら簡単だ。今後のことをコクシンと話しながら時間を潰す。もういいか。お湯沸かしてー打ち粉してー伸ばしてー折って切る! 出来るもんだね。


 出汁が薄かったので、濃いめの味付けにした肉と一緒に食べてもらった。ズルズル。わりとうまーい。2人はフォークだし啜れないので、なにか別のもの食べてるみたいだ。でも味の評価は上々だった。疲れるので当分は作らないけどね!

 

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 79話『報告』で、剣がポッキリ折れちゃったから新しいのを買ったんじゃなかった? 鞘つけたまま鈍器として使うんでしょうか?
[良い点] 饂飩、美味しそう♪ [一言] ギル長の邪魔をする気はないんだが。 限られた空間……腐乱死体……燃やす……キツくない? 一瞬で消し炭の高火力ならありだけど。 そこまでいくと、お高そう。
[良い点] 「でも、お高いんでしょう?」 [気になる点] どこのテレホンショッピングですかw 台詞で「あ、これは買うな」と思いました。 [一言] お手手にのカエルくん、何気に気に入ってますね?w
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