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 車を降りた途端、強く風に吹かれた髪を抑えた。

半年以上ぶりに訪れた場所で、私は冬の海の荒々しさに驚いていた。

遠目にビーチを見ただけで、波が強く打ち付けているのがわかる。

冬の海、と言うことで今日はしっかりと防寒してきた。

タートルネックのニットにデニムパンツを合わせ、厚めのコートを羽織っている。

靴は歩きやすいスニーカーブーツを履いてきた。


腕を組んで入り江までの道を歩く。

初めて訪れた時は名前を呼ばれることすら照れくさく、二人の関係もお互いに手探り状態だったっけ。

思い返すと懐かしく、こそばゆい気持ちになってくる。

あれから半年の間に色んなことがあったな。

慎と両親公認の恋人になって、二人の過去をお互いに思い出して。


マリエルは結局、天界に帰ってしまった。

下界に滞在していたメインの理由が堕天使になったジュンの捜索だったし、それを解決し滞在理由が無くなったのだから仕方がない。

そもそも貴き地位にある天使が長期滞在していたのが異例だったのだ。

今はジュンが最期残した言葉を手掛かりに、他の天使たちと例の堕天使を捜索中らしい。

天界へと帰る時に教えてくれた。


CAFEエデンは橘さんが店長を引き継ぐこととなり、今も変わらず営業中だ。

悩んでいた私の進路も、目出度く決まった。

槙村さんがいなくなったエデンで、ちゃんとしたスタッフとして将来働くために、高校卒業後は専門学校でカフェ経営を学ぶことにした。

エデンでの仕事は楽しかったし、今世でも私と慎を引合わせてくれた大切な場所だったから、そこでこれからも働きたいと思った。

マリエルが槙村さんとして滞在していた思い出の場所でもあるし。

因みに紗梨も同じ道に進む予定だ。

将来の道については、両親も背中を押してくれている。


家庭内で両親たちとよく話すようになり、良い親子の関係を築けていると思う。

両親と慎の仲も良好で、私抜きでも楽しく会話している

これまでのことを振り返っているうちに、いつの間にか開けた場所に出ていた。


久しぶりに訪れたけれど、入り江は相変わらず美しかった。

打ち付ける波には、ビーチと違って荒々しさはなく、少し安心する。

残念なことを一つ上げるとすれば、空が曇っていることくらいだろうか。

波がかからない位置に立ち、二人で海を眺める。


「海って夏のイメージが強いけど、冬の海も綺麗なんだね」

スマホを取り出し写真におさめる。

海が一番綺麗に見えるフィルターを選んだ。

「空気が澄んでいて、荒々しいけど、夏とは違った良さがあるよね」

前回とは違い、今日は慎も写真を撮っていた。

「今日は写真撮るんだね」

素直に口にすると、慎は柔らかく笑む。

私の一番好きな顔だ。

「今日の海は瑛茉の瞳の色だからね」


 ̄曇り空に碧い海を閉じ込めたような


そんなフレーズを思い出し、あっと声をあげる。

私の瞳の色だからとあまり撮らない写真を撮っている姿がとても愛おしい。

思わずぎゅっと抱きついてしまった。

慎は私の背中に腕を回し、もう片方の手で優しく頭を撫でる。

慎の手はいつも心地いい。


「あの泉とは全然違う場所なのに、不思議と天使様だった頃のエマを思い出すよ」

「私の瞳の色だから?」

身体を離し、悪戯っぽい顔で見上げ言うと、そうかも、と優しく笑ってくれる。

「シンが好きだった翼はもう無いんだけどね」

「確かにそれは寂しいけど、前より抱きしめやすくはなったよ」


背中に回したままの腕に力を籠め、一度離した身体を再び引き寄せられた。

こんなじゃれ合いが、楽しくて、幸せだ。

恋人になってから半年。

もうすっかり触れ合うことが当たり前になって、照れずに自分からもどんどんスキンシップを取っている。

風吹く冬の海を、身体を寄せ合いしばらく眺めてから、そろそろ帰ろうかと歩き出す。


「そういえば実家から林檎が届いたんだよね」

「そうなの?」

「うん、だから家帰ったら一緒に食べよう。好きでしょ?」

今度は慎が悪戯っぽい顔をする。

真っ赤で艶やかなあの果実は、エマの頃は毎日飽きずに食べていた。


「久しぶりに丸齧りしてみようかな?」

なんて冗談を言うと、慎も笑って乗ってくれる。

「いいね、じゃあ今日は二人で林檎丸齧りしようか」


来た時と同じく、腕を組んで歩く。

これからも新しい思い出を一つ一つ重ねながら、二人並んで未来を形作っていく。


再び出会えたあなたと共に、これからずっと、幸せな日々を歩くのだ。


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