見目麗しく最強パワー持ち
暗っ
ここは あれだな 転生先のお母様のお腹の中だわ
両親は絶対美形だよなー ……どうしよう
吸ったり吸われたり拭かれたりしちゃって大丈夫かな理性?
自然にオギャれるかなぁ……
◇「あのー」
!
ふぇえあ! おギャァ!! オギャア!!!
◇「うわきも」
え?
◇「あ いや、まだ転生していませんよ」
……///
やめてよもー 頭の中見るのー
さっきの神様?
◇「違います」
だれ?
◇「私ですか?
私はあなたを此度の転生へと導いた御方に連なる者……
あなたが過ごしていた世界の言葉で言えば、陪神や天使の様な存在ですが……
いや、あなたの故郷の言葉では中間管理職と呼ぶ方が正確かも知れません」
つまりは係長かな?
◇「うーん その例えで定義するならば、役員ですかね。
取締役と云うのでしょうか?」
役員だと中間管理職じゃなくね?
◇「頂点と最底辺の間は全て中間ですから」
うーん 暴論
そんじゃまあ ナマ言ってすいませんでした!
◇「? あなたの語彙は余り一般的では無い様ですね。
いまいちjApあねせ日本語の汎的用法と噛み合わない……」
それはなんというか すいません☆
◇「……? もしかして “すみません” って言おうとしてます?」
え?
◇「いや、 “すいません” は、本来の意味からすると誤用の様ですが?」
……は?
◇「?
あ、もしかして 誤用の意味をご存知ないのですか? 間違った使い方の事ですよ」
いやいや すみません って言ったし?
◇「そうですか」
……
◇「すみません!
最近加齢から来る難聴なのか…… 耳が遠くなっちゃって」
いや そんな張りのある声しておいて
◇「いえいえそんな滅相もありません。
陪神とはいえ神ですから、私。 長生きなんですよ。
まあ、こんな雑談は切り上げて本題といきましょう。
この度は ご愁傷様です」
御丁寧に有難う御座います
で、ここはどこでしょうか? 転生失敗?
◇「順調ですよ。
ここは最終確認のために設けられた場所ですので」
最終確認?
◇「先程あなたがお会いになられた あの御方は至高にして究極の存在。
それ故に と申しますか、下等な存在とのコミュニケーションが苦手……というか、不得手なところがありまして」
ほう
◇「要するに 上位存在と下等存在の間でコミュニケーションを確立するためには、往々にして私のような橋渡しの仲介役を必要とするものなのです。
ですから私のことは あなたが思い描く今後の展望……つまり、その 転生後の……輝かしい えと、そう 未来!
その目的の成就に向けた、恙無い進行のための御手伝いをさせて頂く、調整役兼アドバイザーとお考え下さい」
なるほど ……あれ? いま貶した?
下等って言ったよね?
◇「では早速本題と行きましょう。
これまでの所で 此度の転生について不明な点など御座いませんでしたか?」
いや それはもう分からないことだらけですよ
でも好待遇異世界転生強強人生
これ、確定なんですよね?
◇「はい?」
見目麗しく最強パワー持ち不老不死健康毎朝快便種族に転生できるんですよね?
◇「ご希望の通りに。
それ以外は特に要望が無いということでよろしいでしょうか?」
ちょい待ち 夢と欲望は実家の庭の雑草の如く無限に出てきますよ
全部言っといた方が良い感じ?
◇「それはお勧めしません。
確かに要望の数が多く内容が詳細であればある程、相応に強力な存在として生まれ変わる事が可能です。
ですが、一方で転生時に獲得する異能は=それら要望の範疇へと定義されてしまいます。
砥ぎ澄まされた指向性は それ故に意外の可能性を減衰させますからね。
貴方が転生を望む様な不老の存在にとって、どれほど困難であったとしても時間をかけさえすれば手に入る物……例えば、知識や富は必ずしも重要ではありません。 技能や経験も同様です。
貴方に必要なのは可能性。 天井知らずの伸び代なのです。
つまり 此度の転生に関して明確過ぎたり、数が多過ぎる要望は、長期的に見れば必ずしもあなたの望む結果に繋がらない可能性が高いのです」
お おう
◇「分かりにくかったでしょうか。
要するにあの御方から授けられたモノに過剰な変更を加えるのはお勧めしない、という事です。
私程度でもあの御方が与えたモノに干渉し変質を促す事は出来ますが、補ったり強化する力は有りません。
消去する事も出来ません。
また 私がこの場で施すことが出来るのはあくまで軽微な最終調整……それも端的且つ不可逆なものです。
あなたの要望が過度に広範である場合、その適用には相応のリスクが伴います。
ここまでは宜しいですか?」
うん よろしくないです 話が長くて分かりにくいです
◇「そうですか。
では 難しく考えず、ざっくりとした分かりやすい目標などを設定してみてはどうでしょう?
転生先はハイ・ファンタジー。
神秘に彩られた魔法文明の異世界なんですよ?
あなたの世界では娯楽のテーマとして一大ジャンルですよね?
それを踏まえて何かやってみたい事とか、見てみたいものとか有りませんか?」
転生先の話キタ! あのお方? 前の人は全然そのあたりの話無かったからね
……つってもハイファンタジーかー あんまり分からん
目的は…… うーん あえて言うなら食べものかなー
その辺りこっちの世界はどうなんですかね ごはんはおいしいの?
◇「お役に立てず誠に申し訳ないのですが、下等存在の味覚のことは殆ど分からないのです。
あの御方ほどではありませんが私のような上位存在と物質世界に蔓延る原住生物とでは身体の組成に大きな隔たりがありまして…… 」
なんだコイツ
◇「上位の存在で、本当に申し訳ありません。
もっとあなた寄りの下等な存在であれば下界のニチャニチャした煮込みの味とかも説明できるのですが」
謝罪しながら貶してくる……!
◇「お役に立てず 本当に申し訳ありません」
腹立つわ
つーか食事……食べ物まずかったら嫌だなー
そもそも行き先ってどの程度の文明レベルなんだろうか
食文化はさて置き 衛生環境ってどうなん?
ファンタジーって事はヨーロッパ風の世界観?
ヨーロッパだと公衆衛生は19世紀に成立したって聞いたことがあるな
早い!安い!美味い!のソバとか麺類全般どうなってんだろ
そこらへんはどうなの?
◇「さあ……我々の住む世界と比べると下界は全体的に汚いのでなんとも言えません」
クソリプ野郎?
んじゃ 最悪 中世並みの衛生環境ってこと?
うんちっ◯まみれの公道で立ち食いとか苦行なんだが
いやそもそもその場合には全てが不潔……しかも異世界転生てことは日本食どころか地球の食材もぜんぜん無いかも
あの家系も二度と食べられない?
二郎は……? もうマシマシどころかラーメン◯遊記ごっこもできないの……?
◇「マシマシ??
何を仰っているのかよく分かりませんが、二郎さんはあなたのお知り合いですか? もしかして恋人でしょうか?」
遠からず 近からず かな
家から遠く無いけどそこそこ並ぶし
◇「そうでしたか。 お会いする事は難しいかも知れませんが、こちらの世界で頑張れば お墓参りくらいは出来るかも知れませんよ?」
お? 元の世界に戻る方法があるって事?
前のポンコツ神様は転生するか さもなければ消滅!って言ってましたけど
◇「ぽ!??!……ッ……
……いえ その通り。
あの御方の御言葉に嘘は有り得ません。
あの御方の仰ることは絶対……即ち元の世界に戻る方法は存在しません。
今のところは。
私が言っているのは、あなたが新たにその方法を創り出せば良い、という事です!」
えぇ……? この見目麗しく最強パワー持ち不老不死健康毎朝快便種族に転生した私に出来るかな……?
チラッ
◇「まず不可能です」
お前なんなん?
◇「?
仮に、世界最高の魔法の使い手が、自身の持つ全ての資源と時間を注いだとて、実現に至る一縷の可能性すらありません。
ところが、あなたは転生者。
それも運良く あの御方から授かった力を ほぼそのまま、翳りのない純粋な形で保持しています。
これは奇跡的なことですよ。
まるで能力に関する一切の具体的要求無しにあの御方との面談を終えられたかの様な…… 空っぽの器!!
莫大な虚無に脚が生えて そのまま歩いているかの如き矛盾!!
愚者だけで構成されたタロットのデッキ!!!
いや 云うなれば至低の存在……?」
;;
◇「次元の異なる世界の間を一足飛びに渡る方法を総じて“世界渡り”というのですが、これは神々ですら持て余す難題。 一朝一夕に成し得る事では有りません。
魔術と工学を極めた神々に等しい天稟の持ち主が挑戦すれば、あるいは……ワンチャンあるかも? と言った程度のものです」
じゃあ至低の存在には無理ですな
◇「ご自分のことを仰っているなら、寧ろその逆です。
膨大な容量の持ち主つまり無能力もとい無限の可能性を持つあなたの様な転生者でなければ、挑む事すら叶わないレベルの魔導なのですから。
修練を怠らず全身全霊をもって探究に尽くせば、世界渡りを修得する過程で、およそ思いつく存と凡ゆる奇跡を体現することが出来る様になるでしょう」
ほーん
◇「転生後の生活が落ち着いたあと、暇な時にでも挑戦してみれば良いと思いますよ。 挑むのはタダですし。
元の世界に戻るのは難しいでしょうが、あなたなら世界渡りを修得できるかも知れません」
ちょっともー 二郎の話するから二郎のこと思い出しちゃってたのに無理なの?
◇「二郎さんの話をしたのはあなただと思いますが……
無理というか、世界渡りは極大の魔導ですから、特定の世界を目指して発動するといった微調整は神々でさえ困難なんですよ。
あなたの様な転生者も結果的にあの御方の下に魂が手繰り寄せられて来ているだけであって、特定の魂を狙って呼んでいる訳ではないですし」
うるせー!! 二郎食えんのか食えないのかハッキリしいや!
◇「恋人食うの!?
まあ、世界渡りを修得する前提で、せめて二郎さんのいる世界に辿り着く可能性を上げるという事なら…… あなたが亡くなった際に持っていた物……この中に何か……
……お こちらはどうでしょう?」
◆◆◆
暗闇の中に浮かぶ シンプルなデザインの指輪
◆◆◆
◇「あなたの生まれた世界で作られ、死の際にあなたが所有していた物。 ですよね?」
……そうですね
◇「これをあなたと同時に転生させます。
装身具ですから、魔法の触媒としてもなかなか好条件が揃っています。
本来なら元の世界の品を持ち込んで転生するメリットはありませんし、転生時に無理矢理捻じ込むのも危険です。
母胎ごと爆発四散する可能性があります」
えぇ……
駄目じゃん
◇「その通りです。
ただ壊れないだけの指輪を持ち込むために、転生早々爆発していては本末転倒ですから。
しかし 事あなたに関しては爆発する可能性はありません」
なんで?
◇「あなたの持つその虚淵……膨大な容量にこの指輪を預ける事で、一切のリスク無しに転生先へと持ち込むことが可能です。
ですからこの指輪を転生時に紛れ込ませて、あなたと共に転生先の世界へ送り込みます。
先々の話ですが、この指輪を身につけて世界渡りの究極魔術を行えば……」
……ワクワク
◇「……出発元の世界から弾き出されたあと、本来ならば四散しつつランダムな方向に自由落下するべきところに指輪由来の引力が働き、この指輪が造られた世界の方角へと引き寄せる筈です」
なるほど
◇「付け加えるなら、世界渡りを修得する可能性を持つ者にとって異世界由来の秘宝を持っている事は、何にも替え難い価値があります。
世界渡りに失敗して永遠に虚空を彷徨ったり、存在諸共虚無の壁に擦り潰されるリスクを回避出来ますからね」
怖っ
でも うん、いいね
ここまでの無礼を払拭するくらい良いプレゼンだよ
◇「転生した際、この指輪は世界の何処かに落ちるので頑張って見つけて下さい」
ん? 一緒に転生しないの?
◇「当たり前でしょう。
あなたの肉体は母親の組織を基礎として構成されますが、指輪はそうはいきません。
貴金属ですよ? どうやって人体が貴金属で出来た指輪を生成するんですか? 」
はいはい分かりました無知ですみませんね
で、どこかってどこですか 指輪はどこに落ちるの?
◇「それは分かりませんが、あなたが転生する世界のどこかに必ず落ちます」
場所が分からないと取りに行けません 無理です
◇「心配はいりません。
ただの指輪ならいざ知らず、世界渡りを成した秘宝ともなれば、この世の果てに落ちたとしても前世の縁を通じて何れはあなたの手元に帰ってくるでしょう」
でもこれ素材は金属だし お高いやつだけど 普通の指輪だし
落下ってどの程度の高さ? まさか大気圏凸入? 溶けるよね?
もし落下後に無事だったとして、傷とかどうなるの? 錆とか平気?
◇「ご安心下さい。
ある世界で造られた物品が異世界へ渡ると、転生者同様に領分を超えた力を得ます。
つまり下等生物が土塊を練って作った輪っかも、世界を渡るだけで不壊の秘宝に早変わりするのです!」
なるほどー 隙あらば貶すよね
じゃあ運悪く火山の火口とかに落ちたらどうすんの?
◇「申し上げた通り この指輪は下界に落下した時点で秘宝と化していますから高温でも溶けません。
溶岩の中に落ちたとて溶けずにそのままですから、あなたが溶岩の中でも死ななくなる防御魔法を覚えてから潜って取りに行けば良いのではないでしょうか?
なにせ見目麗しく最強パワー持ちですし」
はあっっっっぁぁぁぁー!? あーいえばこういう!
◇「( お前がな )
それではどうされますか?」
……どーしよう
危険性とかデメリットとか?
指輪持ち込むと自動で変なサービスに加入させられたり連帯保証人にさせられたりしないんだよね?
◇「話は変わりますが、この場に指輪を顕現させる為に相応のエネルギーが消費されています」
?
◇「あなたは魂。 つまり霞の様なモノなので問題ありませんが、指輪は別です。
凄まじいエネルギーを対価に、世界を跨いで無理矢理この場へと持って来ています。
この場のエネルギーを消費し尽くすと転生そのものが実行出来なくなるので、早めに決断される事をお勧めします」
それは先に言えよ!
◇「はあ」
いや すぐ転生します
◇「指輪はどうされますか?」
持っていきます 優しく入れてね♡
◇「承知しました。 良い旅を」