自治会費2
毎日午前2時掲載
現実とは、何だろう?
事実とは、何だろう?
俺は、歓楽街のとあるコンビニに向かっている。そして、そのコンビニの入り口には自動ドアがある。
俺が、この自動ドアに到達しようとすると、いつものようにこの自動ドアが開き、俺はコンビニの中に入る。
そして、異変に気づくのだ。俺が自動ドアを通って到達したのは、今俺が入ろうとしていたコンビニではなく、実は場末のエスニック料理屋であるのだ。
そのコンビニの自動ドアの先にあるのは、必ずしも場末のこのエスニック料理屋であるとは限らない。たいていの場合は、自動ドアの向こうにはちゃんとコンビニがあるのだ。ただ、俺が、用事を言われてこのエスニック料理屋に行く場合、このコンビニの入り口を通って、エスニック料理屋に到達する。
どういう原理が働いて、同じ場所に、コンビニとエスニック料理屋が存在するのだろう?
俺は、「末端」の存在だから、この不思議な事象の原理を知らないのだろう。
自分のことを「末端」とかいう言葉で表現すると、人は俺が自分のことを卑下していると見るかもしれない。実際、俺は自分のことを貶めている気持ちはない。俺は、ただ自分のことを「末端」の存在として実感しているのだ。
何より、俺は、自分のことをほとんど知らない。それが、自分を「末端」と考える理由でもある。俺には、1、2年前からの記憶しかない。物事を判断し、行動する上で、材料にする過去の体験というものがない。
ただ、名前はある。俺の名前は、狩場涼という。
俺は、人に命じられたように動く。今も、命じられてコンビニであるべき場所にある、エスニック料理屋に向かっている。
おっと、ところで俺は、何の用事でエスニック料理屋に向かっている? 俺は、ふとそう思った。俺は、ある種の瞑想から我に返っていた。俺は、自分の体全体が激しく身震いするのを感じた。俺は、とてもいやな予感がした。
俺は、今まで、なにを考えていたんだ。いつの間にか、俺は、2つの世界とか、どうでもいいことを考えている。本当の問題から逃げている。
俺は、あまりの危機に放り込まれてしまい、自分が置かれた現実に耐えきれず、すでに頭がくるってしまったかもしれないぞ。俺は、いまはもう到着してしまったこのコンビニの、この自動ドアの向こうにあるエスニック料理屋で、俺は殺される!
それ以外には、考えられない! なんて最悪な俺の運命! どのようにして、この世に生まれ、どのように育ったのかも知らず、自分について、自分の人生について全くしらないまま、場末のエスニック料理屋で、殺されてしまうのか?
それもこれも、すべての原因はあの女に出くわしてしまったことにある!