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2話

 インタビューが終わった後、但馬ら仁野方のメンバーは球場に入り廊下を歩く。地元プロ野球球団が日頃使用する球場ということもあってか選手たちのテンションは上がっていた。

「……」

 但馬は無言でいた。さっきバスから降りた時にみた斎藤の様子が頭から離れないでいた。

「あっ……」

 マネージャーの高橋が何かに気づいて拾い上げる。但馬カバンから落ちたお守りだった。

「但馬さんこれ落ちましたよ」

 と高橋は但馬に近寄ってお守りを渡した。

「あ……サンキュ」

 但馬は一瞬ためらったあと笑顔を返した。

「それにしてもなんで『安産祈願』なんですか?」

 高橋はふふっと笑いながら質問した。

「それは……」

 但馬が答えあぐねていると、

「それ懐かしいな」

 と、但馬と同じ3年生の沖本が話に入って来た。

「ああ……」

 但馬は3年前を思い出す。


 あれは中学3年生最後の夏。

 全国大会に出場した仁野方中学の野球部は開催地である静岡県に来ていた。その時に3年生のチームメイトが近くに有名な神社があるから行ってみようとのことで但馬、斎藤、沖本らの3年生たちで行ってみることにした。

「おーすげーすげー結構人いんじゃん」

 平日だが夏休みということもあってか神社はそれなりに賑わっていた。

「おいせっかくだから必勝祈願しようぜ」

 とムードメイカーの須田が提案した。

 当時3年生は7人いたが皆横一列に並んで参拝をした。たまたま但馬横に斎藤が来ることになった。賽銭に小銭を入れ二礼二拍手したところで但馬はチラと斎藤を見た。真面目な様子で目を瞑り何かを祈願しているようだった。

 それを見て但馬も全国大会の勝利を祈願した。

 参拝した後に皆で神社のお土産コーナーに立ち寄った。巫女姿の店員が売り子をしており、絵馬やお守りが並んでいる。

「お前はこれがいいんじゃないか?」

 悪戯な笑みを浮かべた須田が但馬に持って来たお守りは「安産祈願」と書かれたお守りだった。

「なんでだよ」

 但馬が突っ込む。

「そりゃお前キャッチャーって女房って言われるじゃねーか。だから『安産祈願』。ドーユーアンダースタンド?」

「てめーふざけんな」

 但馬が須田にヘッドロックをかます。「いいじゃねーか買えよ」「そうだそうだ」と周りの部員も囃し立てる。

「じゃあ俺はこれだな」

 すると斎藤が「家内安全」と書かれたお守りを持って来た。あまりボケることをしない斎藤だったため周りの部員は一瞬ぽかんとした後、笑い始めた。

「サイコー」「ウケる」などと3年生全員でバカ笑いをした。

 今思えばあれが一番斎藤と打ち解けた瞬間だったかもしれないと但馬は思った。

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