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プロローグ
あのとき全ての水がこぼれ落ちた気がした。
緑葉が茂る校庭を目の隅に視界が一周した。
コンクリートの廊下、水道から落ちる水の雫、周りの同級生の男たち。
そのどれもが一瞬の風景かのように僕の心を襲った。
彼がもう一人の彼の顔を殴る。
止めに入る同級生たちに殴られた彼に罵声を浴びせる彼。
そして殴られた彼はゆっくりと立ち上がり、顔の血を拭って殴った彼に向かっていく。
やめてくれ。
気がつけば僕はそう叫んでいた。
日向が心地よい午後の休憩時間に起こったこの事件は、
3年後の夏の球場へと続いていく。