32.巨獣討伐戦(2)
マップを出ると、そこかしこに巨獣――巨大なネズミやら巨大なウサギやらが跋扈しています。
「じゃあ皆さん、片っ端から倒していきましょう!」
「「「おおおおおおお!!」」」
ミナトとノドカはすっかりアイドル扱いですね。
私?
言わせんな。
〈隠密〉〈縮地〉〈修羅〉、〈居合い〉〈バックスタブ〉〈アクセルヒット〉!
〈壱の太刀〉も乗ってかなりのダメージです。
ていうか、巨獣、弱くないですか?
ミナトの〈チャージ〉、ノドカの〈サモナーズ・キャスト〉〈ウィンド・カッター〉でゴリゴリっと巨獣のHPバーが削れます。
そしてレイドを組んでいる人たちの集中砲火で、あっけなく巨獣は倒れました。
……どうやら戦力を集めすぎたようです。
「よっしゃ、次に行くよ~っ」
「「「おおおおおおお!!」」」
でも効率はすこぶる良いので、ガンガン巨獣を狩ろうかと思います。
裁縫師であるエイミーさんは布を武器に中距離からの攻撃を繰り出しています。
錬金術師のふたりは爆弾のようなものを投げていますね。
鍛冶師のカシウスさんは巨大ハンマーで前線に出て殴っています。
樹聖術師のフィーネさんは回復魔法とバフを味方にかける支援役のようですね。
……そして黒幕のクロは指示を出すだけで何もしません。
「エイミーさん、黒幕って何ができるクラスなんですか?」
「うん? あそこで指示を出しているだろう? あれ〈人使い〉っていうスキルで、指示を出されたプレイヤーのステータスが一時的に上昇するんだよ」
どうやらサボっているわけではないようですね……。
私たちは次々と巨獣を狩りました。
運営の調整ミスでしょうか?
巨獣が弱すぎますね、これ。
いやそもそもクラン対抗戦なのに関係のない人たちを集めてフルレイドを組んでいるのがおかしいのかな?
でもクランを設立するためにはヒドラを倒すクエストをクリアしなければならないため、敷居が高いんですよね。
そのための個人ポイントでしょうから、やり方は間違っていないはず。
巨獣を一体倒すのに一分かかりません。
私たちはガンガンマップを進軍しながら、目に止まった巨獣を屠っていきます。
暫定ランクでは私たち『アルジミーリッヒ解放戦線』が一位です。
個人ランクでも私たちのレイドに参加している人たちで上位を独占していますね。
ていうか何気に個人で参加している連中の動きが良いですね。
上手く強い人たちを集めたようです。
「ミナト、ノドカ、あの人達は片っ端からレイドに加えたんですか?」
「まさか。レベルで足切りしたよ?」
「くふふ……レベル40未満は戦力外通告」
メインクラスがレベル40となると、かなりの強さが要求されます。
ていうかエイミーさんたち、生産職なのにレベル40以上あるのか……。
精鋭を集めたようなものですね、これ。
「チ、ここいらの巨獣を狩り尽くしたね。……よおしみんな、あっちの方に行くよー!!」
「「「おおおおおおお!!」」」
ドラゴンに乗ったミナトの号令に従い、妙なテンションの連中を引き連れて行軍します。
その日はそのまま暫定ながらクラン順位一位のまま、終えました。
参加してくれた精鋭たちやエイミーさんたちとはフレンドになりました。
明日からもできるだけこのメンバーで狩ろう、ということになったのです。
効率いいですもんね。
しかし翌日、他のクランも人員募集をかけている姿を見かけました。
どうやら数の暴力で巨獣を狩りまくるのがベストだと私たちを見て判断したようですね。
クラン同士で同盟を組んでいるところもあります。
しかし私たちは前日の精鋭たちを集めることができたので、素早く出発することができました。
彼らも個人ランク上位という旨味がありますからね。
効率のいい私たちとのフルレイドを放棄する理由はありません。
かくして巨獣を無慈悲に狩るフルレイドがいくつも出来上がり、マップの巨獣のりポップのスピードが面白い事になっています。
初のクラン対抗イベントとはいえ、運営はバランスをミスっているようですね。
巨獣が瞬殺されていくペースは、やはり私たちが一番早いようで、ランキングでは二位以下を大きく離して一位を堅守しています。
さあこのままフィニッシュなるか?




