29.クラン創設クエスト
死者の迷宮をクリアした私たちは、地上の攻略状況をまず調査しました。
攻略サイトで見る限り、幾つかの街が発見されているそうで、中でもザンダレンガウという街では、クラン創設クエストが見つかっていました。
私たち三人はクランを立ち上げるため、ミナトのドラゴンに乗ってザンダレンガウに向かうことに決めました。
通常なら4時間は歩かなければならない道のりですが、ドラゴンなら2時間ほどで到着できました。
凄いですねドラゴン、さすが私たち三人の資金を投入しただけのことはあります。
ザンダレンガウは今まで見た中で一番大きな街でした。
施設も充実、ギルド会館の中にクラン管理ギルドが存在することは、下調べで判明済みです。
「こんにちは。クランを創設したいんですけど~」
「はいこんにちは。クラン創設ね……じゃあ北の森に出没するヒドラを討伐してきてください。かなり強いので、複数パーティでの討伐が推奨されています」
複数パーティでの討伐?
それってレイドコンテンツじゃないですか!?
「え、どうする? 私たち、伝手ないよ?」
「同じように困っているパーティを探しましょう。きっといるはずですよ」
「あーそうだね。いると思う」
私たちはクエストを受理し、攻略サイトの掲示板にヒドラクエストの共同受注の募集をかけました。
クラス構成とレベルを書いて、いざ投稿。
すると幾つかのパーティが参加を希望してくれたので、待ち合わせて北の森に行くことになりました。
「あ、どうもこんにちは。掲示板の方たちですよね? 女の子だとは思いませんでした」
「こんにちは。私らもゲーマーなので気にしないでいいですよ」
そんなやりとりを2~3回繰り返すと、私たち以外、男ばかり16人も集まりました。
これだけいればヒドラもなんとかなるでしょう。
「火魔法使える人は何人います? ヒドラは首を落とした後、火魔法で焼かないと再生するらしいですよ」
情報通の方が言う通り、攻略サイトを調べるとそのようなことが書いてあります。
魔術師系がいないと詰むクエストらしいですね、運営もいやらしいモンスターをボスにしてくれました。
ノドカを含めて火魔法を使える人員は6人もいたので、なんとかなるだろうと判断。
街を出ていざ北の森へ向かいます。
「うわ、ドラゴンだ。すげえ……」
「あれ高いのに……」
ミナトのドラゴンにみんなが興味津々です。
金の力で購入したドラゴンは大人気です。
さて北の森を探索するまでもなく、背の高いヒドラが森の木々をブレスで燃やしているのが遠目にも分かりました。
「よし、行きましょう!」
私は小太刀二刀流になり、みなバフを予めかけて、いざ鎌倉!!
ヒドラに突撃します。
忍者走りの格闘家がいの一番に駆け出しました。
初速は早かったのですが、ドラゴンに乗ったミナトがすぐに追いつきます。
私も〈縮地〉を連打して一気に間合いを詰めました。
魔法使いたちは歩きながらジリジリと距離を縮めていきます。
そして遂にミナトがヒドラに接敵しました。
「〈ウォークライ〉!! 〈ホーリーセットアップ〉!! 〈挑発〉!! ……〈チャージ〉ぃぃぃ!!」
ドラゴンに乗ったミナトが一撃で首を半壊させます。
ってうわあ、HPバーが変な色してますよ!?
何本、HPがあるんでしょうね……。
〈隠密〉〈縮地〉〈修羅〉、〈居合い〉〈バックスタブ〉〈アクセルヒット〉!!
私も背後に回り込み、ヒドラの首の根元に切りつけます。
予めノドカに〈ホーリーウェポン〉をかけてもらっていたので、良いダメージがヒドラに入りました。
次々と戦闘に加わるレイドメンバーたち。
太刀一刀流で舞うようにして斬りかかる武士舞踊家、当たれば大きいクリティカルヒッターな狙撃手賭博師、人間大の傀儡を操る人形遣い、巨大な斧を振り回す鍛冶師。
様々なクラスを間近に見ることが出来て楽しいですね。
特に遊び人系と商人系の上級職は仲間にいないので、新鮮です。
私たちも負けていられません。
おっと早速、首がひとつモゲました。
ノドカたち火魔法を使える人たちが首の切断跡に魔法を叩き込んでいます。
首の切断跡が真っ黒になったら再生しないようですね。
首がひとつ減ったヒドラは、その場でストンピングを始めました。
周囲にいた私たちは踏みつけられてダメージを負います。
どうやら首が減るにつれて行動パターンが変わるらしいです。
強敵ですよ!?




