16.ジャレンヴァイク
翌日、エイミーさんから新しい防具を受け取り、いよいよジャレンヴァイクに向かう行商人の護衛依頼です、……が。
「…………」
「…………」
なんと他のパーティとクエストを合同で受注することになりました。
このタイミングでジャレンヴァイクに向かうということは、最前線のプレイヤーたちでしょう。
私が言うのもなんですが……。
「そうか、お前らがアルジミーリッヒを街に変えたパーティか。あれはやられたよ。ウチのソラが〈発見〉できなかったのは痛かったな」
「酷えよカルタシスさん。〈発見〉は運も絡むし、適切な場所で使わないと反応しないって言ってるじゃんかよー」
私たちは互いに自己紹介を済ませました。
《カルタシス 傭兵ギルド員》
《ソラ 斥候ギルド員》
《アイダ 孤児院のお兄さん》
《マタヒロ 信仰の徒》
《ミチノブ 魔術師ギルド員》
《リュウト 魔術師ギルド員》
さすが最前線を行くパーティ。
パーティは人数上限の六人は当たり前、見たところ戦士ふたりに斥候ひとり、神官ひとりに魔術師ふたりとバランスも取れています。
孤児院のお兄さんというのは、レア称号のようですね。
「とはいえ女の子三人か……ムサい六人パーティが悲しくなってくるな」
「言うなマタヒロ。安定してログインできて攻略を重視するメンバーを集めたら、VRMMOは男だらけになるのは仕方のないことだぞ」
あちらさんにも葛藤があるようで。
まあ女子高生三人、一時の清涼剤になってあげましょう。
「女の子ふたりに蜥人族か……若さと瑞々しさがうらやましいよね」
ちょ、私が女の子扱いされていないだとっ!?
これは断固、抗議すべきですね。
「あの~……私も一応、女子なんですが」
「え? あ、ああ。そうなの。ごめんね、蜥人族の外見だと分かりづらくて……」
え、コイツ女の子だったの? みたいな困惑した空気が流れましたが、どうやら私が女子高生であることを見抜けるのはNPCとエイミーさんくらいなものらしいです。
むしろ逆にエイミーさん凄えな。
かくして私たちはクエストを合同受注し、ジャレンヴァイクに向かうことになりました。
道中は大人の男性陣たちとおしゃべりしながら、他の上級職の使い勝手を聞いたりしていました。
カルタシスさんは武士で、太刀を二刀流する攻撃的なスタイルだそうです。
ミナトと同じく防御は〈オートガード〉〈パリィ〉任せですが、〈肉を切らせて骨を断つ〉という痛そうな反撃技もあるそうです。
ソラさんは鷹匠でした。
鷹を操り攻撃させたり、スキルを取得すれば猟犬も追加できるとか。
なかなか楽しそうなクラスです。
アイダさんは黒騎士ですね。
白騎士が防御よりなのに対して、黒騎士は攻撃よりのスキルが多いらしいです。
ミナトはそれを聞いて「失敗した~」と頭を抱えていました。
マタヒロさんは司教です。
範囲回復魔法や強力なバフ・デバフ、対アンデッド魔法など、神官の正統進化系といったところでしょうか。
ミチノブさんは召喚術師だそうです。
召喚したモンスターを長時間使役することもできるそうですが、一瞬だけ呼び出して攻撃させる魔法の方が使い勝手がいいとか。
リュウトさんは精霊術師です。
魔術師の正統進化系らしく、多彩な魔法とより威力を増した攻撃魔法があるのだそうです。
ノドカはミチノブさんとリュウトさんの話を真面目に聞いていました。
サブクラスの魔術師のクラスチェンジ先を今から考えておくということでしょう。
私は心のなかでは決めていますが、ミナトの選択次第では変わる可能性も無きにしもあらず、といったところでしょうか。
やはりかの六人パーティは最前線を自負しているらしく、私たちよりややレベルが高く攻略情報についても知悉していました。
これがVRMMOガチ勢……。
とはいえ私たちとてアルジミーリッヒの開放者。
レア称号もちとして食らいついていかなければ、と心新たにしたのは私だけではないでしょう。
ミナトもノドカも、格上のパーティとの会話に触発されて、やる気がみなぎっているように見えます。
私たちのクラスの雑感も交えながら話ていたら、二時間はあっという間に過ぎ去ってジャレンヴァイクが見えてきました。
……確かにこれは行商についていくか、先行したプレイヤーからの情報がなければたどり着けませんね。
デーバーホルツから北北西に位置するジャレンヴァイクは、他の街と同じく海に面していました。
この世界では海運業が盛んなのでしょうか。
海にも魔物は出ると思いますが、陸伝いに船を出した方が運べる荷は圧倒的に多いでしょう。
とまあそんな港町、さっそく探索してみましょう!




