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黄昏の剣と盾  作者: イ尹口欠


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15/42

15.行商護衛クエスト

 エイミーさんによると、デザートリザードは始まりの街グレアリーハーフェンの北西にある砂丘に出現するトカゲ型モンスターだそうです。

 砂漠じゃなくて砂丘……。

 始まりの街を根城にしているプレイヤーから購入したものを行商よろしくデーバーホルツまで運んできた商人(マーチャント)系プレイヤーから購入したのだとか。


 来歴はともかく、私とノドカのレザーアーマーをデザートリザードの皮で作ったレザーアーマーに換装することに決めました。


「そういえばレア称号もちなんだね。アルジミーリッヒの開放者。どこか新しい街でもできたのかい?」


「ええ。南西の失われた都がダンジョンではなく街になりました。住民はアンデッドですけど、この街にもないアイテムが売ってましたよ」


「へえ。じゃあ今度、行ってみるよ」


 なお称号は他のプレイヤーから丸見えになる情報です。


 例えばエイミーさんの場合、既に名乗っているため、


《エイミー 服飾ギルド員》


 と表示されますし、私からミナトを見れば、


《ミナト アルジミーリッヒの開放者》


 というプレイヤーカーソルに加えて、パーティメンバーなのでHPとMPのゲージなどが別に読み取ることができます。


 まあ何が言いたいかと言えば……私たちは結構、目立っているわけですね。

 名乗り合っていない知らない相手からは、


《??? アルジミーリッヒの開放者》


 と見えるはずですから、まずレア称号に目が行くのも仕方のないことです。


「……ああ、失われた都がダンジョンじゃなくなったって、掲示板で話題になっているね」


 エイミーさんが外部ネットワークを介して某所の掲示板を見せてくれました。

 確かに話題になっていますね。

 現在、明らかになっているふたつの街に加えて、みっつ目の街の発見ですから。


 あとは私たち、街を開放したのに情報を握りつぶしているとか書かれていたのはちょっとショックですね。

 別にそんなつもりもないですし、そもそも公式掲示板とかじゃないですからね、そこ。

 その辺を弁えた声も幾つかあって、私たちを非難する書き込みは2~3つ程度ではありましたが……。


「まあこんなオッサンどもの会話なんて見ても面白くないか。さて皮の鎧は二日程度かかる。今から取り掛かるから、まあ明日にでも取りに来てくれ」


 明日ですか……。

 エイミーさん、いつログアウトするんですかね?



 次の目標はどうしようか、と喫茶店でお茶を飲みながら私たちは頭を悩ませていました。

 ちょうどいいダンジョンを開放して街にしてしまったことから、私たちは狩場を失い情報を求めていました。


 ミナトと私は攻略サイトのコメント欄を探したり、ノドカは例の掲示板をチェックしているようでした。


 どうも私たちは最前線に近い位置にいるようで、他のトッププレイヤーたちの動向を仕入れるか、情報なしに行動するしかないというところまで来ているようです。


「考えても仕方ないんじゃない? もう北へ行こう、北へ」


「やっぱりそうなりますか……」


「北だよねえ、次はどう考えても」


 そう、地図を考えれば北へ向かうしかないのは分かっています。

 しかし次の街の位置が分からないため、どのくらい遠出すればいいのか分かりません。


 この辺りの手探り感はトップランナー特有のものですが……。


 まあその前にやれることはやりましょう。

 NPCに聞き込みです。



 …………はぁ。


 実に徒労な時間を過ごしました。


 ギルド会館の行商ギルドで話を聞いた結果、遥か北にジャレンヴァイクという街があるのだそうです。


 ただ遥か北、というだけあって、グレアリーハーフェンからデーバーホルツとの間、一時間程度ではないことがわかります。

 二時間も指針なく北へ向かうというのは、なかなか勇気がいりますね。


 そこで行商の護衛をすることでジャレンヴァイクへ行こう、という話になりました。

 ただし護衛をするには幾つかクエストをクリアする必要があるようで……。


 私たちは行商ギルドの信用を得るために、クエストに挑むことにしました。


 まず最初は、グレアリーハーフェンまで行商の護衛です。


 あの退屈な道程を一時間、わざわざ始まりの街に戻るという難関です。

 そして帰りも護衛して、報告するというハードスケジュール。


 往復で二時間も移動に費やし、雑魚しか出現しないエリアで時間を空費するという拷問です。


 しかし何の道標もなく新しい街に行くのは難しそうなので、私たちはこのクエストを受けることにしました。


 ……というわけで、今日は街と街を往復するだけで終わるのでした。


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