13.アルジミーリッヒ
スケルトンナイトを完膚なきまでに無視してなんとかボスを撃破した私たち。
「「「イエーイ!」」」
三人でハイタッチをかわして、勝利を称え合います。
「いやあ。ボスを倒したら消えてくれて助かった。MPがちょっと厳しくて……」
「あ、それ私も。やっぱり攻撃スキルは連打できないね」
「くふふ……私はヒールのために控えめに撃ってたから万全」
さすがノドカ。
ヒーラーの動きとしてはMPを温存しつつ動くのは大事だと日頃から管理を徹底しているのでしょう。
普段の雑魚戦では戦闘と戦闘の間の自然回復で消費MPをまかなえてしまうため、あまり気をつけたことがなかったのですが、長期戦となるボス戦ではMPの管理も重要そうです。
「あ、なんか落ちているよ?」
「本当ですね。ドロップかな?」
「ボスドロップなら美味しいかも」
死霊の宝珠?
なにかのイベントアイテムでしょうか、普通のドロップアイテムとは扱いが違いますね。
「とりあえず領主の娘さんとこへ戻る?」
「その前に領主の館、調べていきませんか?」
「依頼主の実家を家探しとか! バタフー鬼畜!」
いやだって、ボスの根城だよ?
何かあるとしたら、あの館だよね?
なんやかんや言いつつもミナトもノドカもゲーマー気質なので、家探しははかどりました。
まあ主に私が〈発見〉を使って色々と探しただけですが……怪しげな本、地下通路はいいとして、元からこの家のものだっただろう高価な食器や絵画などの調度品はさすがに持ち帰ったらダメそうです。
怪しげな本は、『死霊術師の秘伝書』というまんまのネーミングの本ですが、特に内容があるわけでもなく、私たちが使える類のアイテムでもないようなので、街で売却しちゃって構わないでしょう。
地下通路は幾つかの牢屋に繋がっていて、どうやらアンデッドの実験に使っていたらしくスケルトンやゾンビが牢の中に……。
他には特に目ぼしいものはないので、依頼人の元へ戻ることになりました。
領主の娘さんのところへ戻る途中、アンデッドたちが非アクティブになっていて襲いかかってくることがなくなりました。
どうやら普段は徘徊しているだけで、人を積極的に襲うように命じていたのはあのボス死霊術師だったようですね。
そんな背景を想像しつつ、領主の娘さんのところへ討伐の報告をしました。
『本当にありがとうございます。奴の魂の在り処、死霊の宝珠はありますか?』
「あ、ボスドロップのあれ?」
「あれのことだね」
『それがある限り、この街の住人は思考を奪われ、街を徘徊する魔物も同然の存在となりさがっているのです。もしよろしければ、その宝珠を破壊してください。そうすれば、街の住人たちはあの死霊術師から開放されるでしょう』
「ほうほう。そうだったのね」
「もしかしたらこれを持っていたから私たち、帰り道に襲われなかったのかもね」
なるほど。
ノドカの言う通りかもしれません。
「じゃ、これ壊すけどいい?」
「いいんじゃない? 罠だとも思えないし。バタフーも構わないよね?」
「ええ、いいですよ。壊しちゃってください」
ミナトが両手剣の柄で地面に置いた宝珠を砕き割りました。
すると、
《『失われし都』が開放されました》
《以後、アルジミーリッヒの街となります》
『ありがとうございます。これでようやく、住民の自我が元通りになることでしょう』
「え? ダンジョンが街になるの?」
「おお、そういう仕掛けだったのね」
なるほどー……って、あれ?
住民の自我はもとに戻るって……もしかして住民は全員、アンデッドのままですか?
アンデッドの街……まあそれはそれでアリですかね。
『本当に、ありがとうございます』
《クエスト『アルジミーリッヒの死霊術師』をクリアしました!》
《称号『アルジミーリッヒの開放者』を獲得しました》
「「「称号!!?」」」
「って何?」
「あれだよ、三番目のクラスに入る奴!」
「ギルドに所属したりするとつくんだけど、こういうイベント称号もあるの。レアな称号よ」
へえ、さすがミナトとノドカ。
攻略情報をしっかり仕入れています。
聞けばギルドの仕事をこなすことでも称号は入手可能らしいですが、今回のようにイベントをクリアすることでも称号を入手できることがあるらしく、後者の場合は先着1パーティのみという限定品らしいです。
さてじゃあ地上に行って、街の様子を見てみましょう。
廃墟ですね。
しかし燦々と照りつける太陽が眩しいです。
常夜の失われた都はもうありません。
ここはスケルトンとゴーストが商売をする街、アルジミーリッヒです。




