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黄昏の剣と盾  作者: イ尹口欠


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11.初クエスト

 ノロマなゾンビ、それなりに俊敏とはいえ通常の域を出ないスケルトン、いつものブルーグミは対処が容易な相手です。

 しかしゴースト、コイツが厄介な相手だとは、……まあ普通に考えたらゲーマーなら想像つきますよねえ?


 ゴーストは物理攻撃を八割ほどカットする特殊能力を持っており、私とミナトではなかなかダメージをあたえられません。

 ゴーストに有効な攻撃手段は、ノドカの〈シャインストライク〉、〈ファイア・ボール〉です。


 あと実はノドカの〈ホーリーウェポン〉をかけてもらった攻撃は、八割カットの対象外になるため、私とミナトは常にノドカからのバフを貰って攻撃し続けます。


 さすが神官(プリースト)系上級職、アンデッドへの対応力が高いです。


 ……と、〈発見〉に感あり。


「あ、そこに何かあります」


「バタフーが何か見つけた?」


「えーなになに? お宝?」


 私は廃墟の腐った絨毯を持ち上げ、地下に続くであろう蓋を見つけました。

 初の〈発見〉、お手柄なるか?


 蓋を持ち上げると、階段が現れました。

 どうやら地下室があるようですね……。


「おお、本当に何かあったね」


「お宝?」


「いえ、分かりませんけど、おりますよね?」


 中は当然、真っ暗です。

 ノドカについてきてもらわなければ、探索もおぼつきません。


「はいはーい、〈ライト〉が通りますよー」


「お願いしますノドカ先生!」


「いんやぁ、さすがはノドカさんだぁ」


 幅一人分の狭い階段を、足元に注意しながら降りていきます。

 無駄に長い階段を折り返して、やがてたどり着いたのはぼんやりと青く光る女性の幽霊のいる部屋でした。

 幽霊はモンスターではなく、どうやらNPCの模様。


「おお……散々アンデッドを蹴散らしてきたけど、ここに来て幽霊のNPCとは」


「友好的な態度を取ってくれるのかな?」


「くふふ……カルマが試されますねえ?」


 そんなシステムはない、と思うのですが。

 青白い光を放つ女性の幽霊は、こちらを力なく見上げると、口上を述べ始めました。


『私はこのアルジミーリッヒの領主の娘。どうかこの地を汚す邪悪な魔術師を倒してもらえないでしょうか?』


「この地を汚す?」


『はい。住民をいたずらにアンデッドに変える非道な魔術師です。アルジミーリッヒの民の安寧を乱し、安らかなる眠りから目覚めさせた魔術師を……どうか倒してもらえないでしょうか?』


《クエスト『アルジミーリッヒの死霊術師』を受注しますか?》


「おっと、クエストだったよ?」


「ボスクエストだね。ていうか攻略にはなかったよね?」


「もしかして一番乗り? 隠し階段だったし、見逃しがあったのかも」


 前人未到とあっては、俄然やる気の出る私たち。

 誰も踏み荒らしていない新雪を踏むが如く、テンション上がりまくりですよ。


「分かった。その死霊術師はこのミナトにお任せあれ!」


「いやいやミナト、三人で受注するからね?」


「そうそう。ミナトひとりだとゴースト、倒せないでしょ」


『おお……ありがとうございます。奴はアルジミーリッヒの北にある領主の館にいるはず……どうかよろしくお願いします』


《クエスト『アルジミーリッヒの死霊術師』を受注しました》


「よ~し気合入ってきた! 報酬も期待できるよね!?」


「ミナト、ミナト。一応依頼人の前でがめついよ?」


「一応ではなく依頼人なんだけどね」


 わいわい言いながら、私たちは失われた都の北の方へと歩いていくのでした。


 ゴーストが硬いのとブルーグミの酸をミナトがちょくちょく喰らう程度で、ノロマなゾンビと非力なスケルトンは相手にもなりません。

 スケルトンはやや素早い上に武器を持っているため、たまに私が被弾しそうになりますが、そこはゲーマー。

 バタフーのギリギリ回避の見せ所です。


「おおう、バタフーがまたすごい仰け反っている」


「バタフー、〈パリィ〉で受けて〈ヒール〉してもいいんだよ?」


「いや……なんとなく? やっぱり斥候は回避するか、完全に受け流さないと」


 ミナトとノドカは「拘るねえ」と肩をすくめました。

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