【06】キャリー
本稿ではスティーブン・キングのデビュー作『キャリー』(以下、原作)
その原作を元に1976年に公開されたブライアン・デ・パルマ監督による映画(以下、デ・パルマ版)
更に2013年に公開されたキンバリー・ピアーズ監督による映画(以下、リメイク版)
について書いて行こうと思う。
あらすじは、母親によって抑圧されて育ったキャリーという少女が超能力に目覚め、いじめをきっかけにぶちギレる。
しかし、このぶちギレるまでが兎に角、綿密で長い。
じっくりコトコト不穏と不吉を煮込んで……煮込んで……煮込んで……最後に鍋が爆発する。
読んだ事のある人なら解るだろうがキングの小説はだいたいこんな感じだ。
ともあれ、この作品の凄いところは、なんといっても冒頭のあのシーンであろう。
主人公の少女キャリーが学校のシャワー室にて初潮を迎え、学友たちから生理用品を投げつけられてからかわれるシーンだ。
こんな胸糞の悪いシーンをよくも書けたというのもあるが、キングは男である。
「本当に良く書こうと思ったな! お前はアホか」と、モダンホラー帝王たる彼にどやしつけたくなる。
しかも、このシーン、一回ボツにしてタイプライターの原稿をゴミ箱に捨てたところ、奥さんがサルベージ。
「うん。良いわね」
そう言われて、やっぱり書き続けて完成したのが原作らしい。
しかも、キングがこの奥さんと結婚した理由が凄い。
「タイプライターを持っていたから」
当時はあまりお金のなかったキングはタイプライターを使いたくて結婚したんですねえ。
お前は、サイコパステストのサイコパスか!
(これはジョークで実際は他にもちゃんと理由があったようです)
とにかくキング半端ない。
そんな凄まじい原作を映像化しちゃったのが、今もホラーファンがオールタイムベストにあげる事も多いデ・パルマ版である。
このデ・パルマ版の凄いところは、やはり主演のシシー・スペイセクであろう。
彼女は当時二十五歳。にも関わらず十七歳の陰キャ喪女いじめられっ子を見事に演じている。
学校ではいじめられ、家では母親に抑圧された生活送る容姿のすぐれない少女キャリー。
スペイセクの演じるキャリーは、よく漫画やアニメでありがちな「設定では可愛いくないという事になっているが、作品をみている我々からするとどう考えても可愛い女の子」などではなく、本当に不細工だ。少なくとも不細工扱いされて納得のいくレベルであった。
それが、気になるイケメンにプロムに誘われ、ゆっくりと花開く蕾のように、キャリーは変化する。
そうしてプロムのクイーンに選ばれた瞬間のあの満開の笑顔……。
良かったね。キャリーちゃん……。と、思わず涙ぐんでしまうほどの可愛さである。
……その直後に、あの豚の血なんですが。
この冒頭からプロムまでのキャリーの変化は、本当に見事としか言いようがない。不細工な蛹から生まれて初めての青春によって蝶に変化する少女……そして豚の血。
そんなデ・パルマ版を元に製作されたのが2013年のリメイク版だ。
よくある事だがデ・パルマ版が素晴らし過ぎなために、このリメイク版に関しては賛否両論が巻き起こった。
筆者もデ・パルマ版に比べると、物足りないというのが率直な感想ではある。
しかし、基本的にはデ・パルマ版そのままのベタリメイクにも関わらず、いくつかの追加シーンによって、まったく異なる味わいの作品になっているところは面白く感じた。
最大の相違点は、ラストのスーの扱いによって顕著に表現されている。
あそこでリメイク版のキャリーは完全なモンスターになっておらず、周囲の人々の悪意によってモンスターにしたてあげられた悲しい超能力少女である事が強調されていた。
デ・パルマ版は悲しきモンスターのキャリー・ホワイトの物語。
リメイク版は悲しき超能力少女キャリー・ホワイトの青春。
といった趣があるように筆者には感じられた。
リメイクというと、兎に角、オールドなファンは条件反射的に否定しがちだが、こうした細かい違いを丁寧に見ていくと、違った味わいが見れて中々楽しい。
基本的に「デ・パルマ版に及ばない物の良リメイク」というのが筆者のリメイク版に対する評価であるが、ひとつだけ不満な点がある。
それは、キャリー役のクロエ・グレース・モレッツちゃんが可愛すぎる点だ。
だって、あんな可愛い女の子がいじめられてたら、ぜったいお前ら全員クロエ・グレース・モレッツちゃんの味方になるだろ普通。
そう思わせるほどクロエ・グレース・モレッツという女優の可愛さがにじみ出ちゃっていた。
これはクロエ・グレース・モレッツという役者が悪いのではない。
彼女も頑張って、オドオドとした顔色の悪い陰キャ喪女いじめられっ子をしっかり演じていたと思う(プロポーションをもっさりとしたものにするために体重も増やしていたっぽい)。その演技に不満はない。
しかし、クロエ・グレース・モレッツちゃんのキャリーはまさに「設定では可愛いくないという事になっているが、作品をみている我々からするとどう考えても可愛い女の子」であった。
だが、逆に「不幸萌え」や「不遇萌え」の気のある方は、このクロエ・グレース・モレッツちゃんのキャリーをぺろぺろしてみるのも悪くはないだろう。




