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【01】マーターズ


 まずはじめに。

 現実の虐待はクソである。


 と、わざわざ断りを入れたら入れたで「こいつ、何をムキになっているんだ。もしや……」などと白い目で見られ、断りを入れなければ入れないで「あ、こいつヤバい人だ」と思われるのが辛いところであるが、このまま話を進めようと思う。


 ときに皆さんは「リョナ」というジャンルをご存知であろうか。

 ウィキペディア的な退屈な説明をするならば「フィクションのキャラクターが理不尽な暴力や拷問によって苦悶するシチュエーションに対する嗜好」といった所だろうか。なんか適当に書いたから間違ってるかもしれないがだいたいそんな意味だろう。

 筆者はホラーマニアであるので、こういった要素を含む作品を嗜好するは当然ながらある。

 因みに“谷尾銀”というペンネームの由来は“谷尾”が本名で“銀”はアニメ「鷲尾須美は勇者である」に登場した三ノ輪銀ちゃんからいただく程度にはリョナ好きである。

(三ノ輪銀ちゃんは好きですが嘘です)

 それは置いといて、よくフィクションなどの美少女虐待で、そこに性的なニュアンスが伴わないと「温い」などと言いはじめる輩がいる。

 どうやら、そういう輩にとって「美少女虐待の最上級=レ○プ」らしい。

 彼らにとって美少女への性的なニュアンスを含まない虐待は作品の要素として“下等”で、性的なニュアンスを含む虐待は“高尚”という事のようだ。

 そういった輩に物申したい。

 何でもかんでもレ○プレ○プって……お前らはゴブリンか!

 本当はリョナなんかどうでもよくて、単に美少女のエッチなシーンが見たいだけちゃうんか?!

 オレは、そこら辺のナンパ道路や仲よしクラブで「ゴブ」「ゴブ」って 大口叩いて仲間と心をなぐさめあってるようなゴブリンどもとは訳が違うッ!

 いいか?! そんな軟弱な野郎どもは、パスカル・ロジェ監督の映画『マーターズ』(2008年 フランス・カナダ合作)でも百回繰り返し観て、気合いを入れやがれッ!



 ……と、少し訳のわからないノリになってきたので、唐突に冷静に戻るのだが、ふたつ注意点がある。

 まず、ひとつ。この映画はホラー映画が苦手な人は絶対に観ないでください。

 ストレートにかなりグロいし痛い。その手の耐性がない人は、まず最後まで観る事ができないだろう。

 そして、ふたつめの注意点。

 2015年アメリカ製作のリメイク版は絶対に観てはいけない。

 理由は単純につまらない映画だから。


 という訳でようやく本題の映画の紹介にうつるわけだが、まずは簡単に序盤のあらすじから。

 いきなり冒頭から下着姿の薄汚れた少女が監禁場所から逃げ出すシーンから始まる。

 そして年月が経ち、冒頭の少女リュシーは、同じ施設で育ち唯一心を開いていた少女アンナと共に、ある場所に赴く。

 そこはかつて、リュシーを監禁して虐待していた男の住む家だった。

 何気ない朝の風景に突然、乱入するリュシー。

 ショットガンをぶっぱなす! 兎に角、ぶっぱなす……。

 次々と死んでゆく監禁男の家族たち。

 リュシーの壮絶な復讐が始まったかに思えたが、物語は予想の遥か斜め上を行く展開を見せる。


 と、こんな感じなのだが、もっと端的にこの映画を言い表すならば『胸糞系』である。

 決して監禁野郎に復讐してざまぁスッキリなどを期待してはいけない。

 または、復讐にやってきた美少女たちが返り討ちに合いゴブられるなどの展開も存在しない。

 物語の後半、アンナが監禁男の家の地下室で“ある物”を見つけてから始まる美少女虐待ショーは、ただひたすら淡々と、粛々と行われる。

 それは性的欲求や嗜虐心を満たすためではなく、ある目的のために行われる虐待であった。

 まったくエロくない美少女の虐待……ナンパ道路や仲良しクラブなんかじゃ味わえない種類の美少女虐待がそこにはあった。

 筆者は、その目的が作中で明かされたとき「いやいや、そんな馬鹿な」と思わず笑ってしまった。

 なぜならまったく共感できなかったからだ。

 目的と、それを達成するための美少女を虐待するという手段が、どうにもつながらなかった。

 ……え、そんな事のために?

 たぶん、多くの人がそう思うだろう。恐らくこの共感のできなさは、意図的に演出されたものであるように思える。

 共感のできなさ……理解不能……コミニュケーションの不全。つまりは狂気である。このあたりの描写は本当に強烈な映画だ。

 この映画で繰り広げられるのは、性的嗜好を欠片も持たない狂気の虐待なのだ。

 単純なスプラッタシーンより、こっちの方が辛いと感じる人も多いだろう。

 目的達成のために繰り返されるエロさを欠片ほども感じられない虐待は、兎に角、暗く重い。

 そして、視聴者が納得できないまま理不尽で不愉快な暴力は振るわれ続け、問題のあのラストに到着する。

 アンナが“黒幕”の耳元で囁いた言葉。

 それは映画が終わったあとも明かされる事はない。

 この「最後の言葉」の内容については、映画を観た人々の間で様々な憶測がなされた。

 何となく想像はつく。だがしかし、もしかしたら……。

 そんなモヤモヤとした思いを観客に抱かせたまま、映画はエンドロールに突入する。

 因みにタイトルの“Martyrs”とは、殉教者または証人という意味だ。

 これほど的確なタイトルもないだろう。映画を見終わったあとは誰しもがそう思うに違いない。

 物語の終盤にアンナが目にしたものは、天国か地獄か、それとも……。


 いろいろと考えさせられる映画だなあ……。


 

 

 と、騙されてはいけない。

 エンドロールに『ダリオ・アルジェントに捧ぐ』とあった。

 あ、やっぱ、小難しい感じのおフランス映画と思わせて、この監督は単に美少女虐待がやりたかっただけなのね。

 このテロップを観て、筆者はそう確信し何故かほっと胸をなでおろした。




*ダリオ・アルジェント

 ホラー映画好きなら誰でも知っているイタリアの映画監督。

 あのジョージ・A・ロメロのゾンビ(ドーンオブザデッド)の音響、ヨーロッパ公開版の監修、プロデュースを担当した事でも知られる。

 美少女が酷い目に合う映画をいくつか撮っており、サスペリア、フェノミナ、トラウマの三作は、美少女虐待三部作などと一部では言われている。

 更に自分の娘を映画に良く出すのだが、大抵酷い目に合うか殺されている。

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[良い点] 『オレは、そこら辺のナンパ道路や仲よしクラブで「ゴブ」「ゴブ」って 大口叩いて仲間と心をなぐさめあってるようなゴブリンどもとは訳が違うッ! 素晴らしい! 漢ですね! 映画に興味が湧きまし…
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