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親友が王子様

作者: ゆき

「お前との婚約は破棄させてもらう!」

私は第一王子ゾウマ様の言葉を呆然と聞いた。

「お前は嫉妬にかられてシカレッタのドレスを汚したり、階段から突き落としたらしいな」

私はしていない、と声を出しかけてやめた。

この国では王族の言葉は絶対だ。

私が否定したところで何になろう。

ゾウマ様の隣にいるシカレッタの口元がゆるみ、半円を描く。

「観念したか。お前は国外ついほ…」

「そこまでよ、お兄様」

私とゾウマ様の間に華やかなドレスを着た美女が入る。

「スカイラ…」

私は思わずつぶやく。

「もう大丈夫だからね、アンジェ」

最近ずっと風邪をひいていて、低い声になった親友が私の手を握る。スカイラは第一王女でゾウマ様の腹違いの妹だ。

母親同士が仲がいいので、私とは物心つく前からの仲である。

「お兄様、ちゃんと調べたの?」

スカイラがゾウマ様にきつく聞く。

「当たり前だ!全てシカレッタから聞いて、目撃者も見つけている」

ゾウマ様が目撃者の令嬢たちを指す。

「目撃者って…シカレッタの取り巻きじゃない。信用ならないわ」

スカイラは呆れたように両手の平を上に向けた。

「だいたい階段から突き落とされたっていつよ?」

「昨日の昼間だ!」

「あらあら。昨日はアンジェならお妃教育で1日王城にいたじゃない。学校の階段から人を突き落とすなんて天地がひっくり返らない限り無理よ。ドレスが汚れたというのは?」

ゾウマ様はこわい顔で私を見る。

「よくもうまく妹を籠絡したな。ドレスはシカレッタが私が送った新しいドレスを着るたびにインクをかけたり、泥をつけたりしていただろう!やさしいシカレッタは昨日まで黙ってくれていたのだぞ」

私は覚えがなさすぎて固まる。

するとスカイラがまた私の手を握ってきた。

「スカイラ…」

「それも無理よ、お兄様。だってアンジェはシカレッタと話したことはおろか、関わったことがないんですもの」

スカイラが艶然と笑う。

豊かなブロンドに煌めくサファイアブルーの瞳、私は立場を忘れて見とれた。

「本当か?アンジェリーナ」

ゾウマ様の言葉に我にかえる。うなずくとゾウマ様はシカレッタに「聞いてないぞ」など言いながら詰め寄っていた。

「アンジェ、こっち」

スカイラが私を誘導する。

そうだった、今日は王家主催の舞踏会だった。

私は観衆にまぎれて人目につかないバルコニーに行く。

「ばか兄貴がごめんね」

「お口が悪いわ」

私は思わず笑ってしまう。

「アンジェにはいつも笑っていて欲しいわ。もう大丈夫よ」

スカイラにふんわり抱きしめられる。

私はほうっと息をついた。

「スカイラがいなければ私、どうなっていたかしら」

体が震える。

私はしがない公爵令嬢だ。替えなどいくらでもいる。

「私が守る」

スカイラがぎゅっと腕の力を強める。

「ちょっと苦しいわ」

私が上を向くと間近にスカイラの美しい顔があった。

身長もこの半年で私より頭ひとつ高くなった。

「アンジェは私が守るよ」

スカイラの顔が近づく。

唇にやわらかい感触がした。

「なんで抵抗しないの?」

スカイラが呆れたように言う。

「スカイラですもの」

「王族だから?」

「違う。スカイラだから…」

私は口がうまくない。

もどかしく感じながらスカイラを見つめる。

「禁断の道まっしぐらだね」

スカイラが笑う。

「ちょっと見て」

スカイラは自分のドレスを肩から脱ぎ出した。

私は慌てる。

「何してるの?」

「大きな声出さないで」

スカイラは私が聞いたこともないほど低い声を出した。

まるで…。

「男だよ」

スカイラはたいらな胸を私に見せた。

「私は男だ。スカイラインでなくスカイラークだ」

私は混乱する。

「本当は私は第二王子だ。でもゾウマの母の身分が低いから私が王太子だ。暗殺対策で成人になるまで女と偽っている」

スカイラは私の頬に手をあてた。

「今年が16。成人だ」

「ええっ」

私はそれきり何も言えない。

「君がゾウマの婚約者になったときは絶望したけど、シカレッタのおかげで光が見えたよ。あの尻軽に感謝だな」

「スカイラ、お口…」

私はスカイラが男性という事実より、スカイラの口の悪さが気になってしまう。

スカイラは面白そうにクックと笑う。

「君のそんなところが好きだよ、アンジェ」

もう一度口づけされる。

「あの…、私たち婚約者でもないのにいけないわ」

「婚約者になってくれないの?」

ブルーサファイアの瞳が悲しげに細まる。

「私は小さいときから君ひとすじだよ」

私はその眼差しに胸がきゅーっとした。

「私の婚約者になってください」

スカイラが私の両手を握った。

「はい」

私はうなずいた。

「やった!ありがとう、アンジェ」

スカイラは私を抱きしめた。

(親友だと思っていたらお姫様でなく王子様だったなんて…)

私はゆっくり微笑んだ。



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