最強の男
マックイン・レッドホーク―――。
“ザ・キング”と称されるその男はまさに現在のMLB界の王に相応しい存在であり、投手タイトルの全て奪取したこともある俺から言わせれば世界最強の投手と言っても過言ではない。
そんな神と等しい人と何故瀬文の兄貴が知り合いなのか。
俺の小さな脳が混乱する一方、尚も兄貴は話を続ける。
「夏のリーグ戦…つまり俺達が4冠を勝ち取った2週間後、俺のメアドに全て英文で書かれた見知らぬメールが届いたんだ。」
一応、鼻水かっぱえんじぇるずにも簡単ではあるが公式のHPがある。
しかしSNS?というやつにまあとことん疎い俺達なので、殆ど兄貴が管理している。
なのでお問い合わせ用のメールフォームも兄貴のメールアドレスになっているのだ。
「最初は同姓同名の海外の熱心なファンがファンレターとして送ってくれたメールなのか、最悪悪戯メールの類だと疑ったんだ。だけど翻訳ツールとか使いながら調べていくとどうもそうじゃ無かった。」
兄貴はスマホをポケットから取り出しそのメールの本文を俺達に見せながら淡々と話す。
「俺の直訳だが、メールにはこう書かれてあった“突然メールしてきて申し訳ない。私はアメリカでベースボールをやっているマックイン・レッドホークという者だ。君達のあの決勝を見て私はとても感動した。是非我が娘をこのチームに入れてやってはくれないか?”てな。」
「……それで、信じたんですか?」
半信半疑な様子で裕翔は兄貴に尋ねた。
そりゃあそうだ。俺だって信じていない。
塔子ちゃんなんか退屈そうにぼーっとしているし、彼女の使用人兼キャッチャーの舞さんなんか話を聞かず興奮気味に塔子ちゃんの艶やかな髪を嗅いでいる。
信じられるか…こんな協調性の欠片もない糞チームが4冠取ってるんだぜ?
「まあ、俺も最初は釣られる覚悟というか面白半分で彼の提案を吞むことにしたんだ……そうしたら…。」
「「そうしたら……!?」」
一斉に(塔子ちゃんと舞さんを抜かした全員)兄貴に問いただすと兄貴は苦笑いを浮かべた。
「……いや、今更ながら説明するよりも見たほうがいい気がしてきたぞ。……よし皆、太郎ん家に行くぞ。」
……は?俺ん家!!?