イケメンは粛清されるべし。
六畳間の床にごろんと大の字になり、俺は昨日の試合の後の兄貴の言葉を思い出していた。
「新しいピッチャーが必要‥‥か。」
俺が前半抑えて塔子ちゃんが最期に終わらせる。
それが鼻水かっぱえんじぇるずの当たり前のルーチンであった。
現在昼の12時。世間様はとっくに会社や学校で昼食を食べている頃だろう。
‥‥俺?俺は高校になんか行っていない。中卒である。
何せ4冠優勝で貰った賞金やテレビ出演のギャラがまだたんまりあるから贅沢をしなければ生きていける。
だから早々親の元へと離れ家賃5万のアパートを借りて一人暮らしをしているのだ。
ちなみに塔子ちゃんは家柄が超がつくほどのお金持ちの為、名門のお嬢様学校に通っている。
百合の園か‥‥。いいなあ。
「俺も女になればスランプを克服できるかな‥‥?」
「なーに馬鹿なこと言ってんだよ。」
「うえをおおッ‥‥!!?」
いつの間にか裕翔が俺の部屋に侵入し呆れ顔でツッコミを入れる。
金髪でどの角度から見ても凛々しい醤油顔のこのイケメンは中野裕翔。
兄貴と塔子ちゃんに次いでの腐れ縁であるこいつは兎に角イケメンの中のイケメンだから俺は密かにこいつに嫉妬の炎を燃やしている。
実際俺のファンであった女の子たちの大半は裕翔に取られ、更に塔子ちゃんからはその姿を見て「草生える」と煽られるし。
妬ましい‥‥妬ましい。
「お前、学校はどうしたんだよ‥‥。それとどっから侵入してきやがったこのパツキンゴキブリめ!!」
俺と裕翔は中学まで一緒であったが、元々勉学が嫌いであった俺とは裏腹に裕翔は頭脳も明晰であった故に関東一の進学校へと入学した。
妬ましい‥‥妬ましい。
「今は春休みなんだよ。部屋は普通にドア開いてたから入っただけだ。」
いや、普通に入んなよ。
「それよか太郎、瀬文さんからのメッセ読んだか?」
「いや全然‥‥なんのでだ?」
最近兄貴から聞いたことと言えば近所の老舗の銭湯の壁に秘密の覗き穴はあると教えられたくらいだ。
だから今度塔子ちゃんと茶来さんと舞さんを連れてそこの銭湯に行こうという事で話は収束した。
「なんだ。まだline見てないのか?」
裕翔は自分のスマホをポケットから出し鼻水かっぱエンジェルズのグループlineを開くとその文面を俺に見せつけてきた。
「‥‥なになに?」
文面はこう書かれてあった。
『マックイン・レッドホークの娘さんが俺らのチームに入りたいらしい、ので本日13時に入団テストを行う。至急いつもの河川敷に集合せよ。』
‥‥‥‥はあ!!!!!???