拳王
練習試合は基本的コールドゲームが無い為、その後もノーアウトのまま打たれに打たれまくり終わらないエンドレスゲームと思われたこの試合は35点獲られた直後にクローザーとしてベンチに座っていた俺の幼馴染であり副主将の奏風塔子ちゃんの棋士の如く投了を告げたことにより試合は幕を閉じ鼻水かっぱえんじぇるずは「四冠の王者」から「35失点の弱者」等と各スポーツ報知から汚名のレッテルを貼られ、某掲示板のスポーツ板はその話題で持ちきりとなり1300までスレッドが延びたという。
無論試合が終わった頃にはギャラリーはほんの数える程しか残っておらず、すっかりいつもの河川敷と化していた。
残っているギャラリーの大半は「なーにが拳王だー!」「時間返せやボケ!」「塔子ちゃーん!いつでも俺のところへ戻っておいでー♡」と、日頃のストレスを発散させるかのように大きな声を張り上げながらブーイングの嵐が巻き起こっている。
肝心の俺はマウンドに立ち尽くし涙も枯れるほどに精神が参っていた。
なにより伝家の宝刀ナックルボールが死に絶え周囲のブーイングという悲劇的な状況よりもチームの殆どが20点辺りから自分の荷物をまとめ帰り始めたのが一番堪えた。
既に涙を出し切っていた俺の身体は出すものが無いという事で代わりに出したのは小便であった。
もう全てがどうでもなくなり自暴自棄になった人間はおしっこを一切の羞恥心もなく漏らす。
ソースは俺。
こうして俺はこの試合を切っ掛けにスランプとなり、チームはその後も練習試合を含め7連敗という無残な結果で桜が降り注ぐ新しい季節を迎える事となってしまった。