Encounter of the beginning
あなたは「神」を信じますか?
「神」とは、世界中にある神話や伝説に登場する超常の存在である。
あなたは「神」を見たことがあるだろうか。
それは本当に「神」だったのか?
なぜ「神」だと断言できるのか?
「神」はあなたに何をしてくれただろうか。
ではなぜ世界には不幸な人間がいるのか?
悪人にも幸福が訪れてはいないか?
あなたは何を根拠に「神」を信じるのか。
それは正当な理由だろうか?
証明できない根拠はただの妄想ではないか?
「神」の存在を証明するのは神話や伝説だけではないだろうか?ではその神話や伝説は誰が作ったのか。
そう、神話や伝説を作ったのは「人間」である。
つまり、神とは…………。
「ハァ…ハァ…ハァ…」
少女は走っていた。夜の森の中を必死に走っていた。服は汚れ、体は無数の傷が付いている。
「待ちやがれぇ!」
「絶対に逃すなよ!!」
少女は数人の男に追われていた。相手は大の大人である。少女が追いつかれるのは時間の問題だった。
「あっ!」
少女は木の根につまづき転んでしまった。真っ暗な森の中である。足元もまともに見えない。
「やっと追いついたぞ!こんなとこまで逃げやがって。」
追いつかれてしまった。起き上がろうにも体力が尽きかけている。もうろくに走ることができない。
「もう逃がさねえぞ嬢ちゃん」
少女が顔を上げると、追っ手の男たちに取り囲まれていた。少女は逃げ切れないことを悟った。
(嫌だ!誰か…誰かッ…助けてッ!)
それは声にもならない悲痛な叫びであった。声に出したところで、こんな森の中では助けが来るはずもなかった。
「さあ、俺たちと来てもらおうか」
男の手が伸びてくる。もうダメだと少女が諦めかけたその時、
ゴオオオオォォォォォォオオオッッ!!!
夜にもかかわらず周囲が急に明るくなった。さらに厚い雲で月や星の光すら見えていなかった。そんななか、昼間のように明るくなったのだ。
「な、なんだ!?急に明るくなったぞ!」
「ギャアァァッッ!!熱い!!アツイィィ!!」
「燃えてる!周りの木がいきなり燃えたぞ!」
暗闇が昼間のように明るくなったのは、突如木々が燃えたからだった。
「なに…これ…」
どうやら周囲の木だけではないようだった。辺り一面、見える限りの景色全てが炎によって包まれていた。
一瞬の出来事だったため、追っ手の男数人が炎に焼かれたようだ。追っ手が減り、混乱している間に逃げようと思ったが、炎に囲まれているのは少女も同じだった。
「こんな大規模な炎を一瞬で!!まさか…お前がやったのか!」
なぜか、少女が疑われた。こんな一瞬で炎で取り囲むことなど、出来るはずがない。それこそ魔法でもない限り。
「いや、こいつの仕業じゃねえ。こんなこと出来るの、奴しかいねえ!!」
「ま、まさか?!」
男たちはこの現象の正体に心当たりがあるようだった。だが、男たちは気づいていなかった。少女だけが気づいていた。
少女たちの上空の厚い雲だけがぽっかりと、穴が空いたかのように晴れ、月と星の光が射し込んでいた。炎のせいなのか、普段よりも強く光っているように見えた。
「一体、何が起こっているの?」
あまりに異常な光景だった。周囲は炎の海となり、空には大穴が開いている。こんなもの、自然現象のはずがない。少女は本当に魔法なのではないかと疑わざるを得なかった。
「お、おい!!あれ!!」
一人の男が空を指差して驚いた。空の異常に気づいたのかと思ったが、男が指差したのは別の存在だった。
「おいおい…マジかよ?!なんでこんなとこにいやがるんだ!」
男が指差した存在に少女も気づいた。月明かりに照らされる何かが空に浮いていた。その何かはゆっくりとこちらに近づいて来た。
「…………」
人だ。空に浮いていたのは、人だったのだ。男たちは気づいていたようだが、少女は分からなかった。なぜなら、人間が単体で宙に浮くなど信じられなかった。
(この人が、この炎を?どういうこと?)
少女は空から降りて来た人を見た。月明かりと炎のせいで顔がよく見えないが、幼さが残りつつも大人びた雰囲気の少年だった。顔と雰囲気では年齢までは分からないが、身長的には少女と近い年齢かもしれない。
「あ、あなたは…?」
少年の正体を聞こうとしたが、少女は疲れ果てて倒れてしまった。男たちから逃げ続け、異常な光景の連続による混乱。心身ともに限界が来ていたのだ。
少女は眠るように気を失っていった。
「…………」
少女が覚えていたのは、少年のうっすらとした、心から安心できるような不思議な笑顔と、周囲全てを焼き尽くしていく業火。
そして、その業火に焼かれていく男たちの叫びだけだった。
こんにちは。東 将國です。
この物語は実際にある神話や伝説を参考にし、私なりの考えや解釈で進んでいきます。そのため、忠実とは違うという場合もあるかと思いますが、そこは私のオリジナルということでご容赦ください。
今回はあくまでプロローグでございます。今後物語がどんどんと展開していきますので、是非とも続きをご覧ください。なお投稿頻度は不定期となっております。慣れてきたら投稿日を決めていきます。
ご感想やご意見ありましたら、よろしくお願いいたします。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
今後ともよろしくお願いします。