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5 第二工程 物理的・心理的に合理化してゆく

 第二工程では、トリックの着想を発展させて、以下の二点を詰めてゆく作業となる。


  ①どうやってやったのか(ハウダニット)

  ②なぜやったのか(ホワイダニット)


 さて、これは言い換えるならば、物理的に合理化する作業と、心理的に合理化してゆく作業ということになるだろう。物理的に合理化するというのは、実現可能かどうかということだろう。心理的に合理化してゆくのは、動機に必然性があるか、ということだろう。


  ①実現可能なトリックにする。

  ②動機に必然性があるトリックにする。


 例えば、観覧車の車内で事件が起こったとして、トリックが「隣の車内から飛び移った」というものだとしたら①に引っかかる。あまりにも非現実的だ、という話になる。実現不可能だ、という話になる。


 また密室殺人をしておいて、その動機が「なんとなく、密室殺人の方が面白いと思ったから」というようなものだと、説得力はあまりないだろう(この動機も悪くない気もするが)。


 まず①の「どうやってやったか」であるが、これに困った時の対処法から述べることとしよう。


 また下らないトリックを例に挙げるので恐縮だが、ご容赦願いたい。お寺の山門の屋根の上に死体が上げられている。死体をその位置に上げることは女性では不可能である。でも犯人は女性だったという方向に持っていきたい。こういう場合、どうするか。


 すると「山門の上にあるのは、実は死体ではなくて、人形かだったから可能だった」なんていう「トリックの着想」が、すでに浮かんでいるとしよう。

 ここからが第二工程だ。まずその人形は軽い素材で出来ていないと意味がないし、死体に見せかけられるものでないといけない。そして、難しいのは、本物の死体と取り替えるタイミングだ。


 このように①の「どうやってやったか」を固めるには、問題が沢山出てくるものだ。


 まず軽い素材というのは、発泡スチロールでいいだろう。あれは軽い。実に軽いと思う。

 死体に見せかける。すごいところまで考える作家は、死体の足首なんか切り落として、そこだけは本物の足を見せたりするのだろうが、そこまで凝ったら、作者も読者も訳が分からなくなる。


 まあ、肌は見えないようにして、洋服だけを見えて死体だと思わせた、という方向にしよう、ということになる。


 本物の死体とすり替えるタイミングは、第一発見者に屋根なんかに登られたら、一目でそれが人形だとばれてしまうから、死体はずるりと落ちてきたという方向に持っていこうと思う。そして、すり替わるタイミングは、絶対に「第一発見者たちの視界から外れている時」でないといけない。


 すると、みんなが山門の表側から死体を目撃して騒ぎ出したタイミングで、犯人が、山門の裏側から、紐で引っ張って、裏側に人形を落とす。そこにあらかじめ本物の死体を用意しておいて、人形だけを回収して犯人はずらかる。

 第一発見者たちが「風で落ちちゃったねぇ」と馬鹿なことを騒ぎながら、山門を回り込むと、そこには本物の死体が転がっている。こんな風なトリックが出来た。


 変なトリックを例に挙げてしまったが、ここまでトリックを作れば、まず第一発見者の動き、犯人の動き、犯人の性別、山門とその周囲の地形などのシチュエーションは、もはや確定的なものとなる。

 こんな風に、トリックに都合のよい、もの、人、環境を揃えてゆくという作業になる。こうやって、シチュエーションはできてくる。


 ②の「なぜやったか」は、さっきの例では、「女性には、死体を山門の屋根の上に持ち上げることは不可能だ。犯人は女性ではない」と思わせることがトリックだというのが、もう初めから決まっていた。

 これには犯人にメリットがある。自分が容疑を免れることができるからだ。

 だが、もしも、犯人の動機が上手くいかない時は、犯人側のハプニングがあったという方向でゆけば良いと思っている。あるいは、犯人側になんらかの勘違いがあってもよい。


「犯人はこのトリックをすれば、利益があると思った」という話である。


 動機に困ったら、ハプニング、誤算、誤解なんでも良いと思う。

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