3 第二の工程に入る
前回のようなことをしなくても、パターン化されたトリックのストックを活用すれば作れると思うが、それでも、簡単には作れないのがミステリーである。
ここで、ミステリーの工程の全体を考えた時、これはこういう流れになっている。
①トリックの真相を思いつく(錯誤点Aを決める)
②トリックを実現するように、諸要素を配置。(シチュエーションづくり)
③ロジックを設定。(手がかりの配置)
④つじつまの合う出来事を追加。
①は、どうにか終わったところだと思う。
例えば「わたしは殺人現場の窓の閂は、本当はかかっていなかったって真相にしますよ」と、あなたは考えたとしよう。
ところが、かかっていなかった閂を、どうやってかかっているように見せかけたのか(錯覚させたのか)。これが②の段階である。
シチュエーションづくりに使えるものは「人、もの、空間、時間、情報・概念」の全てだ。
もっとも簡単な着想としては「犯人は第一発見者で、死体を発見した時のどさくさにまぎれて窓の閂をかけた」というものである。これは「人」を活用した場合だ。
この②の段階が、思ったよりも苦戦すると思われる。
「人」についてさらに詳しく書けば、犯人だけでなく、被害者、第一発見者などを利用する場合も多い。この時には「狂言、誤解、正当防衛」などが行動の動機となることが多い。これは、ホワイダニット(動機)の問題になってくる。それについてはいずれ記そう。
「もの」については「動くもの、変化するもの、特殊なもの」を活用すると良い。車輪は動くもの、氷などは変化するもの、テープレコーダーは特殊なものである。
「空間」は、距離などである。あるいは重力とかも入るのかもしれない。
「時間」は一番重要なのは犯行推定時刻というものである。科学的に死亡推定時刻を狂わせるトリックもあるだろう。
後は、トリックだけでなく、ハプニングも手数に入れれば、さらにミステリーは作りやすくなる。ミステリーでは、トリックと同じぐらいハプニングの要素も入ってくるものなのだ。犯人が失敗したり、偶然が重なって、結果こうなったというやつである。
ミステリーの要素は、トリック、ロジックだけと思われがちだが、ハプニングも実はかなりからんでくる。むしろ、偶然やハプニングがからんでこない物語。完全犯罪をそのまま描いていて、完全にトリックが成功してしまっているミステリーは平面的という気がする。
①トリック
②ロジック
③ハプニング