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探偵小説の創作 〜ミステリーを書く時に心掛けていること〜  作者: Kan
第四部 ミステリーにおける諸問題
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5 ロジック制作、特に消去法をがんばることとミスリードの活用について

 ロジックの作り方は、以下のような順番を踏むとわりと作りやすいです。


 ①錯誤点を作る(例・犯人は人間と思っていたが、本当はペンギンだった)

 ②真相ペンギンだったということがバレそうになる「ミス=手がかり」を出す(例・犯人は現場の水槽の生きているアジをその場で食べて行った)

 ③他の選択肢(可能性)をできるだけ消去するためのシチュエーションを取り揃える(例・犯人は人間で、人間がその場でアジを食べた可能性。それを消去するためのシチュエーションは以下→人間の容疑者は皆、生のアジが嫌いだった。水槽が汚れていて、人間はとても食べたいと思えないレベルの不清潔さだった。朝ごはんがアジフライだったので、わざわざアジを連続で食べたいとは思わなかったはずだ。人間ならば、水槽のアジじゃなく、冷蔵庫を開けて、中の大トロ、鯛、鰻重を食べたはずだ。人間ならば、机の上の万札の束を奪って、商店街の寿司屋に入ったはずだ。人間ならば、アジの骨まで咀嚼しないはずだなど)

 消去法は、まず選択肢(可能性)を増やすことから始まります。この数は無限大である一方、残念ながら、想像には限界があります。そして、思いつける限りの選択肢(可能性)を、今度は反対にひとつひとつ消去してゆくのです。

 つまり「可能性を打ち消すためのシチュエーションを揃えること」が大切になります。


 この打ち消しの手法には、ふたつの種類があります。

 ①物理的に不可能であること。

 ②心理的に不自然であること。


 たとえば「ふたつの道のうち、なぜ犯人は現場からわざわざ遠まわりの道を選んで、逃げたのだろうか」という謎があったとしましょう。

 正解は「犯人は犬が苦手で、近道の途中に、犬を飼っている家があったから」なのだとしましょう。

 ここから「犯人=犬が苦手な人物」ということを導き出すのです。


 しかしここで「犯人はただ気分で、現場から遠まわりをして帰りたかっただけなのではないか」という反論が来ること、間違いなしでしょう。

 この可能性を、上手いこと、否定しなければなりません。


 ここで使用するのが②です。

 ②心理的に不自然であること。


 それはたとえば、被害者を射殺した瞬間、被害者が身につけている防犯アラームが鳴り響き、現場にはすぐにも人が集まってきそうな状況だった、とするのはどうでしょうか。犯人は、大急ぎでその場から逃げようとするのが心理的に自然ではないでしょうか? このようにして「犯人はただ気分で、遠まわりをして帰りたかっただけなのではないか」という可能性を打ち消すのです。


 つまり「正解以外の可能性を思いつく限り増やして」おいて「増やした正解以外の可能性を打ち消せる状況を自ら作ってゆく」というドMみたいなことをします。

 そうです。ミステリ作家ってわりとドMなんです。


 ちなみにこのミステリは「犬が好きな人物が犯人だと思っていたが、犬が苦手な人物が犯人だった」という錯誤なのですから、ミスリードの方向としては「犯人は犬が好き」と読者に擦り込む必要があります。


 たとえば、冒頭、被害者への脅迫状であらかじめ「お前は犬を虐待している!」と犯人の犬好きをアピールして、それをその後の犯行動機と思わせておくと、最終的に「近道にいる犬が苦手で、遠まわりして帰った」という真相になった時、「いや、お前、犬、苦手だったんかいっ!」というツッコミが入る程度には意外になります。


「Aだと思っていたものが、本当はAではなかったから意外」というミステリの公式の、読点までの前半分の部分こそが、そのままミスリードの方向性となるわけです。


「ピーナッツと思っていたものが、本当はカシューナッツだったから意外」という真相の場合、カシューナッツらしさを出すことが「ミス=手がかり」となり、ピーナッツらしさを出すことが「ミスリード」になります。



 真相の意外性を引き出すには、この「ミスリード」を積極的に行ってゆきましょう!!



 ちなみに「犯人のミス=手がかり」という部分は、わかりやすい捉え方だと思うのですが、また別の考え方によっては「作者からのヒント」とも言えるのです。クイズなんかの場合を想像するとわかりますが、ヒントを出してゆくことは、徐々に真相を開示してゆくことであり、これが犯人視点では「ミス」といえるのです。そしてヒントの数が多ければ多いほど、解答者の推理は、想像に頼るものから論理的なものへとその内容を変えてゆくことになるのです。

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